Aging Gracefullyプロジェクト、企業向け勉強会第2弾<中編>
顔のたるみや手指の痛み、それ、更年期症状かも?
Project report ヘルスケア キャリア ライフスタイル 更年期
[ 18.11.05 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」が取り組む「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、人生100年時代において、40代、50代の女性たちが自分らしく生きることを応援することを目的にスタートしました。9月27日には朝日新聞社AGプロジェクトチームが主催する企業向けの勉強会があり、経済産業省で健康経営に取り組む企業を支援する、ヘルスケア産業課係長の紺野春菜さんが講演しました(前半記事はこちら)。
紺野さんの講演に続き、大塚製薬で女性の健康推進プロジェクトのリーダーを務める薬剤師の西山和枝さんが「AG世代特有の健康課題とは」をテーマに講演しました。
西山さんが所属するニュートラシューティカルズ事業部は、「ポカリスエット」や「SOYJOY」など、健康維持や増進のための栄養製品などを展開しています。中でも西山さんは、「エクオール」という、女性ホルモン(エストロゲン)に似た成分を含有する栄養補助食品を担当していると自己紹介しました。
西山さんは「月経や妊娠の過程で重要な働きをするエストロゲンは、女性の体の守り神でもあります」と話しました。エストロゲンは年齢と共に減ることから、大豆食品を積極的に摂取する人も少なくありません。しかし、様々な研究により、大豆イソフラボンよりも、より女性ホルモン様作用を示す成分が「エクオール」という事がわかってきました。エクオールは人が持つ腸内細菌によって産生されますが、このエクオールを作るもととなる腸内細菌の保有率には、年齢差や地域差があることも分かってきました。欧米の女性の保有率が3割程度なのに対し、日本の女性は5割。ただし、20代前半では2割にとどまるという調査結果もあるそうです。細菌がないと、いくら大豆食品をとってもエクオールが作れないため、「気になる方は尿検査で調べてみることをお勧めします」と語りました。
また西山さんは、閉経の前後5年とされる更年期には、様々な不快症状が表現れる人もいることを紹介しました(上の表参照)。顔のたるみや目の落ちくぼみも、女性ホルモンの減少で顔の骨の骨密度が減り、目の周りの骨が広がったり、ほお骨やあごの骨が縮んできたりすることによって生じるそうです。また、手指の痛みやしびれなどが生じることもあるとい言います。
さらに西山さんは、更年期症状を自覚していても、何もせずやり過ごしている女性が多くいる可能性を、日本政策医療政策機構の調査結果を示しながら語りました。この調査は同機構が2018年2月、全国の18歳から49歳の働く女性2千人を対象に調査したものです。現在、または過去に更年期症状があった人に、症状への対処方法を複数回答で尋ねたところ、2位の「市販薬を飲む」(15.1%)、3位の「処方薬を飲む」(8.6%)を押さえ、「何もしていない」という人が64.4%とダントツで1位でした。(n=337)
また、元気な時の自分の仕事のパフォーマンスを「10点」とした場合 に、更年期症状によってそれがどのくらい変化するかを尋ねたところ、「5点以下」と回答した人が46%にのぼりました(n=318)。さらに、回答者を「ヘルスリテラシーの高い群」と「そうではない群」に分けたところ、高い層では、更年期症状があっても仕事のパフォーマンスが5.830点という自己評価だったのに対し、もう一方の層では5.439点と有意な差がみられたといいます。
「不調を我慢せず、セルフケアをしたり、薬局で薬剤師に相談したり、婦人科で低用量ピルやHRT(ホルモン補充療法)等を処方してもらったりしてコントロールし、生産性を下げない努力がAG世代には求められていると思います」と、西山さんは語りました。そして、「私自身、考えがまとまらず、仕事を仕上げるのに以前より時間がかかることがあります。そんな時は『更年期のせいか、なかなか進まないんだけど、手伝ってもらえない?』と、周りに助けを求めるように気持ちを切り替えてからは、かなり楽になりました。不調を認め、受け入れて、迷惑をか掛けない程度に周りに委ねることも大事ではないでしょうか」と続けました。
大塚製薬では、女性の健康を考える出張セミナーを手がけています。西山さんは活動を通じて分かったこととして、「女性の健康について、女性社員は男性にも知って欲しいと思っているのに、セミナー先の企業の健康管理の窓口が男性だと、『どうしても女性だけ集めて開催しましょう』、という話になりがち。女性活躍を推進していく上でも、ぜひ、男性管理職にも関心を持っていただきたいです」と語りました。
最後に西山さんは、現代の女性と月経の関係について紹介しました。かつては7、8人の子どもを産む女性が多く、妊娠中や授乳中は月経がないことから、一生涯における月経の回数は50回ほどだったとい言います。また、平均寿命も今ほどは長くなかったため、閉経の前後に亡くなる女性も少なくありませんでした。しかし、現代は晩婚・晩産化で出産回数が減り、子どもを持たない選択をした女性も増える中、生涯の月経回数は約450~500回と激増しています。「昔の女性はいわば、女性ホルモンという守り神がいる間に亡くなっていたわけですが、人生100年時代を生きる私たちは、閉経後、守り神がいない中で、あと50年生きなくてはならない。どう生きるのか。それは今から考えておく必要があると思います」
講演後は、「更年期や月経などの女性特有の不調を職場でどうコミュニケーションするか」ということをテーマにしたグループディスカッションが開かれました。その模様は後編でお伝えします。