GLOW Premium Salon2018 セミナー
教えて柴山さん!
「人生100年時代」に必要な資産運用の基礎知識とは
Project report マネー
[ 19.01.11 ]
11月11日、「GLOW Premium Salon2018」が、渋谷ヒカリエホールで開催されました。Bホール最終回のセミナーは、「教えて柴山さん! AG世代のお金のギモン」。朝日新聞社のマネー&ライフサイト「START!」でコラムを執筆している、資産運用サービス会社「ウェルスナビ」(東京都渋谷区)の柴山和久代表取締役CEOが登壇し、人生100年時代に必要なマネーの基礎知識について話しました。
1977年生まれで、自身もAG世代の柴山さん。大学卒業後は財務省で通算10年、予算編成や税制、金融に関わる業務を担当し、その後は大手コンサルティング会社に転じて日本やニューヨークで機関投資家のサポートに従事されていたそうです。ウェルスナビを創業したのは2015年。2016年からは資産運用を全自動で行う「ロボアドバイザーサービス」を始め、現在は15万人の顧客の資産、総額1100億円超を運用しています。
来場者からの最初の質問はズバリ、「人生100年時代、お金はどれくらい必要ですか?」。柴山さんは「持ち家か賃貸か、どんな生活を送りたいかによっても異なるため、明確な答えはないのですが」と前置きした上で、一般的に言われる、「老後に必要な生活資金3000万円」というのは、AG世代の親世代で大手企業に勤めていた人の退職金の平均額に相当すると答えました。「かつては現役時代から積極的に資産形成をしなくても、退職金で老後資金が賄えました。しかし今後は定年まで働いても退職金が毎年2.5%ずつ減り、1千万円に満たないケースが増えるという試算もあります」と柴山さん。定年が延び、働く期間が長くなる中、「働きながら資産運用をしていくことが必要になっていくと思います」と語りました。
次の質問は「資産運用ってやらなきゃダメですか。何から始めればいいのですか」。柴山さんは、「必ずしもする必要はないのですが、統計的にみると、資産運用をしている人の方が豊かだという結果があります」と話し、自身の両親と、アメリカ人である妻の両親の、資産運用に対する姿勢の違いを例に解説しました。柴山さんの両親は、資産運用はしてこなかったものの、企業年金や退職金で、比較的ゆとりのある老後を送っているそうです。一方、妻の両親は共働きで、30代の頃から余裕資金をプライベートバンクで運用委託してきた結果、退職時の資産は日本の両親の10倍近くあったとのこと。「同じような仕事をしてきたのに、なぜこんなに違うのか。私の両親は預金と保険が中心でしたが、妻の両親の場合、預金は生活費の数カ月分のみ。教育費と住宅にかかる費用以外は資産運用に回していました。アメリカではこうした考え方が一般的で、長期に渡って分散、積み立てで運用してきた結果、退職時点で大きな差が出るのです」。ちなみに日本では金融資産の52%が預金に回るのに対し、米国では14%ほどだそうです。
「資産運用は何から始めればよいのか」という質問には、「会社で確定拠出年金をされている方なら、投資先は世界分散の投資信託にするべき。世界経済は多少の波があるとはいえ、平均すれば年3.5%くらいずつ成長しているからです。NISAやiDeCoなども同様で、積み立てで世界経済全体に対して投資をすることが大事です」と柴山さん。やってはいけないのは、足元のリターンが高い投資信託や金融商品に手を出すことで、「リターンが高いものはその時点がピークのことが多く、すぐに下がります」。特定のテーマや国だけに特化した投資も避けた方がいいとアドバイスしました。
「初めての投資。金額の目安は?」という質問には、柴山さんが執筆した「START!」の記事(http://www.asahi.com/ad/start/articles/00162/)を参照しながら解説しました。
運用期間が長くなるほど利益が出ますが、AG世代の場合、老後までの期間があまり長くないケースもあるため、月々の積立額を多めにすると良いそうです。たとえば最初に100万円を預け入れて月々3万円積み立てると、30年後の元本は1180万円に。同社の試算では、世界経済に分散投資した場合、資産が3000万円以上になる確率は32%だといいます。一方、期間が10年短い20年のケースでは、3000万円以上になる確率は2%に下がってしまうそう。
ちなみに同じ20年のパターンで、月々5万円なら確率は15%に、月々10万円なら76%まで上がるそうです。では、最初に預け入れる金額が100万円ではなく、10万円だったらどうでしょうか。その上で月々10万円を20年間積み立てると、最終的に3000万円以上になる確率は71%と、最初に100万円を預けるケースとそう変わらないそうです。「ある程度まとまった金額を毎月積み立てられれば、スタート時点の金額の多寡はさほど関係ありません。10万円から始められるとなれば心理的なハードルが少し下がるかも知れませんね」と柴山さん。
「リーマンショックがまた来そうで怖いんですけど」という質問には、「リーマンショックは『100年に1度』レベルと言われています。ただ、20年間運用することを念頭に、過去25年間ほどを振り返ってみると、金融危機は5回起きています」と柴山さん。アジア通貨危機があった1997年、日本では山一証券が経営破綻しました。98年のロシア金融危機では、アメリカの大手ヘッジファンドが事実上破たん。2000年にはドットコム・バブルが崩壊し、2008年にはリーマンショック、それ以降もギリシャの危機などが続いています。
「金融危機とは、例えるならば地震のようなもの。必ず起きるけれど、いつ起きるかは分からない。10年、20年という長期で運用する場合、必ず直面するものだという覚悟を持って臨むのが現実的だと思います。よく『過去に元本割れをしたことがない金融商品です』などと宣伝されるものがありますが、それがこうした金融危機を乗り越えてきたものなのか、いい時だけを切り取っているものなのかを見極める必要があります」と柴山さん。金融危機に直面した時の対処法として最もいいのは「何もしないこと」だそうです。「長期的に見れば世界経済は成長し続けているからです。損を切ろうとしてやめてしまうと、一時的な損失が恒久化してしまいます」
「投資のコツは」という質問には、「長期、積み立て、分散」という三原則に加え、「運用成績をこまめにチェックしないこと」とアドバイス。「最初の半年から1年はタイミングによって元本割れすることもあるんですが、そこで強いストレスを感じてやめてしまう方が多いんです。人間の感情が陥りがちなわなにはまらないようにすることが大事で、預けたらしばらくは放置、が正解です」。来場者の8割以上が「資産運用の初心者」と答えた今回のセミナー。分かりやすい説明に、熱心にメモを取る人の姿が多く見られたのが印象的でした。