Aging Gracefullyプロジェクト、企業向け勉強会第3弾
「W20 Japan2019」で日本が目指すものとは?<前編>
Project report キャリア ジェンダー グローバル
[ 19.03.12 ]
朝日新聞と宝島社の女性誌「GLOW」が取り組む「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、職場や家庭、地域で大きな役割を担う40代、50代の女性たちのエンパワーメントを目的としています。昨年末に発表された日本のジェンダーギャップ指数は、世界で110位。主要7カ国(G7=カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカ、日本)の中では依然最下位です。
性別役割分業の意識やアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)など、女性が自分らしく生きていくことを阻む「壁」もたくさんあります。こうした「壁」について問題意識をもつ人々と話し合い、解決策を発信していく場をつくろうと、朝日新聞社AGプロジェクトチームは、企業向けの勉強会を定期開催しています。3回目は、1月21日午後に開催されました。議題は、女性を取り巻く社会課題を議論する国際会議「W20 Japan 2019」(3月23、24日に東京で開催)。化粧品メーカーやIT関連企業など11社から、人事やダイバーシティ、広報などの担当者18人が参加しました。
W20は、金融や世界経済に関する20カ国・地域の首脳会合「G20」の公式な政策提言グループの1つで、構成メンバーはG20と同じく、下記の通りです。
- G7各国とアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、
韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、EU・EU中央銀行
W20ではこれらの国々の代表が、女性をめぐる様々な課題を話し合い、6月に開かれるG20がまとめる首脳宣言に、女性やジェンダー平等の視点を採り入れてもらうよう、ロビーイング活動などをしていきます。ちなみにW20のほかにも、若者の課題を話し合うY20、ビジネスの課題を議論するB20など、7つのグループがあり、政府だけでは解決できない様々なイシューを議論しています。
毎年、G20の議長国が、各政策提言グループの議長も務めることになっています。2019年は6月にG20が大阪で開催されるのに先立ち、3月にW20が東京で開催されます。
今回のAG勉強会には、W20日本運営委員会の共同代表を務める、上智大学名誉教授の目黒依子さん、BTジャパン会長で、前・経団連女性の活躍推進委員長の吉田晴乃さんほか、運営事務局長でダイバーシティーコンサルタントの塚原月子さん、運営メンバーでSAPジャパンバイスプレジデントのアキレス美知子さん、クオリア社長の荒金雅子さんが出席しました。
開会のあいさつで吉田さんは最近、インドで女性の人権活動家の方々と対談した際、「男女の賃金格差は先進国特有の課題。ここでは賃金格差があるからこそ、仕事に就けている女性も少なくない」と指摘されてショックを受けたと語り、「国によって、女性が置かれている社会的地位や直面している課題は様々。でも、どの国も経済成長を求めている点では一致している。世界の人口の半分を占める女性たちがもっと経済に参画し、地域の中でお金が回る仕組みを作ることで、教育や技術革新、起業支援など、新しい成長の形をつくっていきたい」とあいさつしました。
続いて、事務局長の塚原さんがW20の成り立ちや課題についてレクチャーしました。
W20が始まったきっかけは、2014年にオーストラリアで開かれたG20で、「25by25」という目標値が採択されたことでした。内容は「2025年までに、G20の各国において、就労率における男女格差を2014年時点より25%縮める」というものです。この目標を達成するため、翌2015年に初めてトルコでW20が開催され、以降、中国、ドイツ、アルゼンチンと続き、5回目が今年、日本で開催される運びとなりました。
昨年の議長国だったアルゼンチンがまとめた共同宣言には、「労働」「金融」「デジタル」分野での女性の包摂と、「農村女性の開発」という4つのテーマが盛り込まれ、それらはG20のブエノスアイレス首脳宣言にも色濃く反映されました。
まず、首脳宣言の冒頭部分には、「G20のアジェンダ全体としてジェンダーを主流化する」とうたわれています。これは、特定の政策分野に女性の視点を採り入れるということではなく、教育、開発、経済など、全ての政策分野に女性の視点を採り入れていくことを意味しています。
このほかにも、首脳宣言には、下記のようなフレーズが盛り込まれました。例えば「労働」分野では、「女性と女児に対するあらゆる形態の差別及びジェンダーに基づく暴力を終わらせることを目的としたイニシアティブを推進」「質が高く安価なケア・インフラや育児休暇へのアクセスを通じ、全ての人々にとっての労働環境を改善するため、民間部門と共に取り組み、賃金格差を削減することなどにより、女性の経済的なエンパワーメントを促進することにコミットする」といった点です。
また、「金融」分野では、「女性起業家にいかにより良く関与していくかについて検討」といったフレーズが盛り込まれました。「デジタル」分野では、「ジェンダーに基づくデジタル・デバイドを埋めて、デジタル包摂性を更に増進する」「女性及び女児のデジタル技術の向上、並びに彼らのSTEM(科学、技術、工学および数学)及びハイテク分野への参画の拡大にコミットする」「女児教育の重要性を強調する」などのことがうたわれています。
W20日本事務局も、今年のG20の首脳宣言にこうした視点や指摘が採り入れられるよう取り組んでいます。今年のテーマは「Closing the Gender Gap for New Prosperity」で、「ジェンダーギャップの解消を通じて、誰1人取り残さない経済成長を目指すこと」をG20に提言していく予定です。
重点テーマは、アルゼンチンから引き継いだ「労働」「金融」「デジタル」に、企業と政府機関における「ガバナンス」を加えた4つです。ガバナンスは、ジェンダー平等の達成に必要な、個別の施策の実現度合いを測る仕組みを導入する目的で今回、新たに加わりました。この4分野でどのような宣言をW20として打ち出していくか、事務局が中心となり、日本国内で女性支援に関わる団体からヒアリングをしたり、他のW20加盟国・地域の代表者らと協議したりしています。
この日の勉強会の後半では、W20 Japan2019で掲げられた4つのテーマについて、どんな論点があるかをグループに分かれてディスカッションしました。その様子は、後編をご覧ください。