Aging Gracefullyプロジェクト勉強会@大阪〈前編〉
会社が女性社員の健康維持に力を入れる理由とは?
Project report キャリア ヘルスケア ジェンダー
[ 20.01.28 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」が取り組む「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代の女性たちのエンパワーメントを目的に、様々な活動を展開しています。その一つが企業向けの勉強会です。女性を取り巻く社会的な「壁」について問題意識をもつ人々と話し合い、解決策を発信していく場をつくることを目的に、年間5回ほど開催しています。
これまでは東京で開催してきましたが、2019年11月15日に初めて朝日新聞大阪本社で開催しました。 テーマは「健康経営における、女性の健康について」。住宅メーカーやエネルギー関連企業、行政機関など33社・団体から、人事やダイバーシティー、CSR、広報の担当者ら41人が参加しました。
そもそも「健康経営」とは何でしょうか。社員の健康保持や増進をサポートすることが、社の収益性やブランドイメージを高め、採用への好影響、労災リスクや離職率を下げることなどにつながるという考えのもと、企業が取り組む経営戦略です。勉強会では、この取り組みを推進している経済産業省近畿経済産業局地域経済部バイオ・医療機器技術振興課の日村健二課長が基調講演しました。
日村さんは、「働く人の4割を占める女性に、『日本丸』を支えてもらわなくてはならない。そこで、これまで弱かった職域での健康啓発や健康保持に力を入れることにしました。社長さん、従業員はお宝です。辞められたり、病気になられたら困る。だから、社員の健康度が上がる取り組みをして、健全な会社にしましょうというのが健康経営です」と説明しました。そして、健康経営を通じて新たなヘルスケア産業の創出に寄与することも視野に、経済産業省が音頭を取って、健康経営に取り組む企業を顕彰していることなどを紹介しました。
ちなみに健康経営の取り組みは、近年、国際社会で広がる「ESG投資」の方向性とも合致しています。これは、投資家が企業の環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に向けた取り組みを投資の判断材料にするもので、健康経営はSやGに該当します。優良企業であることを投資家にPRするため、企業の健康経営への関心も年々高まっていると、日村さんは説明しました。そして、健康経営を推進する企業に今後の注力分野を尋ねたところ、最も多かったのが「女性特有の健康問題への対策」だったそうです。
実際に、働く女性がどんなことに困っているのか調べようと、経済産業省は2018年に全国調査を実施しました。男女計約5400人の回答からは、働く女性の半数が、女性特有の健康課題を理由に職場で困った経験をしており、多くは月経痛や月経前症候群(PMS)によるものだったことが明らかになりました。一方、職場の管理者も4割が女性従業員の健康課題で対処に困った経験をしており、最も多い理由はメンタルヘルスでした。日村さんは、働く女性自身と管理職で課題について認識の差があることに触れ、「働く女性自身もその周りの人々も、女性の健康課題についてのリテラシーを高め、コミュニケーションしやすい職場にしていくことが欠かせません」と指摘しました。
日村さんはまとめとして、女性の健康推進について企業が手がけるべき施策として①リテラシーの向上②相談窓口の設置③働きやすい環境を挙げました。「ちょっとした不調を相談できる場も必要。そして、テレワークやシフト改善など、男性も含めた働き方改革を通じて、誰もが自分の体調に合わせた柔軟な働き方ができるような職場づくりを目指していくことが求められています」
日村さんの講演に続き、大塚製薬の西山和枝さんが「AG世代特有の健康課題とは」と題して、更年期の様々な症状について講義を行いました。その模様は後編をご覧ください。