Aging Gracefullyプロジェクト
企業向け勉強会第6弾〈前編〉
「50代の女性正社員がもっと活躍するためには」
Project report キャリア ジェンダー
[ 20.01.29 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」が取り組む「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代の女性たちのエンパワーメントを目的としています。プロジェクトでは、この世代の女性をとりまく様々な社会課題について、企業や行政の方たちとともに考え、解決のヒントを探る勉強会を定期開催しています。
2019年11月21日に朝日新聞東京本社で開催した 第6回勉強会のテーマは「50代女性正社員がもっと活躍するためには」です。公益財団法人「21世紀職業財団」(東京都文京区)はこのほど、「女性正社員50代、60代におけるキャリアと働き方に関する調査ー男女比較の観点からー」という報告書をまとめました。男女雇用機会均等法の施行から30年余り、いまやどの企業にも50代の女性社員が増えてきましたが、同年代の働き手を対象にした既存の調査は、男性社員を中心とした現状把握や課題分析、対策を提言するものがほとんどです。この報告書は、増え続けるAG世代の働く女性の実態を把握し、企業がとるべき対策について提言しています。
勉強会では、この報告書を取りまとめた同財団の山谷真名主任研究員を講師にお迎えし、50代の女性正社員がもっと活躍できるようになるための対策を、参加企業の皆様とともに考えました。百貨店や総合人材派遣業、出版など15社から21人が参加しました。
21世紀職業財団は、男女雇用機会均等法が施行された1986年に「財団法人女性職業財団」として発足。その後93年に「財団法人21世紀職業財団」へ改称し、2013年に公益財団法人になりました。発足から33年にわたり、ダイバーシティーの推進や働きやすい職場づくりに向けてセミナーや調査、コンサルティング事業などを手がけてきました。
山谷さんは今回の調査を実施した背景として「人生100年時代と言われる中、50歳から20年近くをいかに充実させるか、そのためにどのような働き方をするかが課題になっています」と述べ、「キャリアや企業に対する意識」「会社の制度・仕組み」「会社以外の活動」「定年後の働き方・仕事内容」という四つの観点からヒアリングを進めたことを明らかにしました。
調査は2018~19年にかけて、①従業員規模300人以上の企業に勤める、50代の正社員女性と、60代の、定年後再雇用で働く女性計38人へのインタビュー②50歳時に300人以上の企業に正社員として勤務し、現在も正社員として勤務している50~64歳の男女と、定年後、現在も働いている60~64歳の男女計2820人へのウェブアンケートの2本立てで実施しました。
その結果、50代の正社員女性は男性と比べて多くの点で異なることが明らかになりました。まずは職位の差です。管理職の割合は男性の3分の1の13.9%。管理職経験や役職定年経験のない総合職で比べても、係長や主任の割合は、男性の約半分の27.4%にとどまっています。
こうした職位の差は平均年収の差としても表れています。全体では男性の約822万円に対し、女性は528万円。管理職で比べても、男性の約944万円に対して女性は837万円。総合職でも男性の約703万円に対して女性は497万円でした。
職位や賃金の差は歴然としてありますが、キャリアへの意識まで低いわけではありません。例えば、能力開発への意欲です。50代の総合職の男女に「今後もスキルを深めたり発展させたりしたいと思うか」と質問したところ、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と答えた人の割合は、男性の58.1%に対し、女性は70.6%に達したそうです。
また、仕事へのモチベーションでも差が見られました。「モチベーションが最も高かった時と比べ、現在の方が低い」と答えた50代の女性総合職は21.6%と、男性の半数以下にとどまっていました。山谷さんは、「子どもの手が離れた女性の多くが、50代になって思う存分働いていると答えていたのが印象的でした。30代では家庭との両立を重視していた人が、40代になると仕事を通じての自己成長に挑戦し、昇進や昇格を意識してギアチェンジする。そのような価値観の変化に企業が対応していくことが欠かせません」と述べました。
調査では、これまでの仕事経験でも、男女差が見られました。社内で部門異動を経験した人の割合は男性総合職で6割、管理職では7割に達しましたが、女性は4割、6割にとどまっていました。個別インタビューでは「40代の頃、別の部署に行きたくて毎年上司にかけあったが、チャンスがこなかった」という意見も聞かれたそうです。また、キャリアや定年に関する研修機会も、男性に比べて女性が10ポイントほど少ないことが明らかになりました。
また、ロールモデルとなる同性の先輩が少ないこともあってか、定年後の生き方について悩んでいる姿も浮き彫りになりました。総合職の男女それぞれに「定年後のキャリアの希望」を尋ねたところ、男性は「現在の会社での再雇用」「退職」が多かったものの、女性は「再雇用」に次ぐ2位が「分からない」でした。
これらの調査結果をふまえて山谷さんは、50代の女性社員が活躍できるようになるために企業が今後取り組むべき四つの提言をしました。①キャリアの多様性に合わせた選択的幹部人材育成策の構築②キャリアの後押し力向上プログラムの構築③女性の異動促進プログラムの構築④子育て負担がなくなった女性が思う存分働けるようになるための「ワーク・シフトチェンジ支援研修」の構築です。勉強会の後半では、これらをどう実現していくかについて、参加者でディスカッションをしました。その模様は、後編をご覧ください。