Aging Gracefullyプロジェクト勉強会
@福岡〈前編〉
地域性をふまえた健康経営施策を展開
Project report キャリア ヘルスケア ジェンダー
[ 20.06.29 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」による「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代のAG世代の女性たちのエンパワーメントを目的に、企業向けの勉強会や一般の方向けのセミナーなど、様々な活動を展開しています。
2020年2月21日には朝日新聞社福岡本部で企業向け勉強会を実施しました。
テーマは「健康経営®と女性の健康管理」。
食品、自動車、機械メーカーやテレビ局など19社・団体から、人事やダイバーシティー、CSR、広報の担当者ら25人が参加しました。
基調講演をしたのは、一般財団法人「日本予防医学協会」東日本事業部担当理事で、NPO法人「健康経営研究会」理事、一般社団法人さがらウィメンズヘルスケアグループ顧問、そして、「九州・福岡健康経営推進協議会」の事務局も務める津山敦さん。
日本予防医学協会は1960年に、当時社会課題となっていた胃がんの抑制に向け、巡回型集団検診の実施を目的に設立。以来60年、多くの企業を健康面からサポートする日本最大手の労働衛生機関です。健康経営研究会は「企業が社員の健康管理をサポートすることを通じて、企業価値を高めていく」という考え方を広めるために、2006年に設立されました。
津山さんはまず、厚生労働省や国立がん研究センターなど、様々な機関の調査結果を示しながら、AG世代の働く女性の健康課題について、次のような課題をあげました。
● 健康経営の取り組みが全国的に進んでいるものの、定期健康診断の有所見率は毎年、増加傾向にあり、2018年は55.5%(16年は53.8%、17年は54.1%。16~18年は数値を精査中)。
● 厚生労働省の調査(2018年)によると、40~50代でがんにより亡くなるのは、男性より女性が多い。乳がんや子宮がんなど、女性特有の健康課題があるため。
● 上記の状況にもかかわらず、40~69歳の女性のがん検診受診率(2016年)は、最も高い乳がんで45%、子宮がんと肺がんで42%、大腸がんで39%、胃がんで36%と低い。
● 厚生労働省の2016年の調査では、平均寿命と健康寿命の差は男性が「8.84年」、女性は「12.35年」と差が大きい。
● 総務省の調査(2016年度)によると、非正規雇用者の67%が女性。雇用格差、職場によるストレスを受けやすい。
● 中小企業の労働環境は厳しく、健診受診や通院ができない、残業続きで運動する時間がない、シフト勤務で食事の時間が遅くなる、欠食するといった課題があり、個人レベルで健康増進に取り組むことが難しい。
津山さんは「女性は職場、家庭、そして女性特有の健康課題という三つのストレスを抱えやすいと思います。女性の3人に2人が働く時代となり、働きやすい環境整備がますます必要になっていますが、その重要性はまだあまり理解されていないように感じられます」と語りました。そして、女性が長く働き続けられるようになるためには、下記のような点への対策が必要だと指摘しました。
① 育児休業復帰後の働き方や、人事異動を伴うキャリア形成で、働く本人と企業側、双方の納得解をどう見つけるか
② 女性特有の健康課題に伴う休暇、体調不良などによる療養について、男性上司や同僚の理解をどう得るか
③ 非正規雇用などの雇用状況をどう改善するか
④ 社員の男女比にかかわらず、企業の女性の健康課題への取り組みをどう意識づけるか
「女性社員比率が高い会社と低い会社では、女性社員の健康管理に対する経営層の認識もおのずと異なります」と津山さん。そして、健康経営に関する企業間の情報共有を進めていく必要性と、「支店経済都市」という福岡の地域特性をふまえた健康経営モデルの構築に向け、2018年に「九州・福岡健康経営推進協議会」を設立したことを紹介しました。
協議会には、九州電力やジャパネットホールディングス、新日本製薬、トヨタ自動車九州など20を超す企業や団体が加盟し、サポーターも含めた参加人数は約300人。大塚製薬佐賀工場や福岡県の健康食品・化粧品会社「愛しとーと」など、健康経営に取り組む企業を訪問し、勉強を重ねているそうです。
津山さんはまた、自身が勤める日本予防医学協会の健康経営の取り組みも紹介しました。
その一つが、「ヘルシーフェスタ」です。社員や家族の健診受診率を高めるため、美容や健康に関する情報提供、試供品の提供、講演会、イベントなどを盛り込んだ「楽しめる」健診を全国各地で展開しているそうです。
二つ目は、事業所の入っている建物の入り口に設置した自動販売機で、砂糖抜きの飲み物を割安で販売するという作戦でした。通常160円のペットボトルを徐々に値引きし、最終的に80円にしたところ、砂糖入りの飲料が全く売れなくなり、最終的にその販売機では砂糖抜きの飲み物しか扱わなくなったそうです。社員だけでなく、他のフロアのテナントや来客者からも人気を博したということでした。
津山さんの講演に続き、大塚製薬の西山和枝さんが「管理職世代の健康課題とは」と題して、更年期の様々な症状について講義を行いました。
その模様は後編をご覧ください。