Aging Gracefullyプロジェクト勉強会
@福岡〈後編〉
管理職世代の健康課題とは
Project report キャリア ヘルスケア ジェンダー 更年期
[ 20.06.29 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」が取り組む「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代のAG世代の女性たちのエンパワーメントを目的に、様々な活動を展開しています。
2020年2月21日には朝日新聞社福岡本部で、「健康経営®と女性の健康管理」をテーマに企業向け勉強会を開催。食品、自動車、機械メーカーやテレビ局など19社・団体から、人事やダイバーシティー、CSR、広報の担当者ら25人が参加しました。
一般財団法人「日本予防医学協会」東日本事業部担当理事・津山敦さんの基調講演に続き、大塚製薬ニュートラシューティカルズ事業部で女性の健康推進プロジェクトリーダーを務める西山和枝さんが、「管理職世代の健康課題とは」と題して講義を行いました。
西山さんは自己紹介で、「エクオール」という、女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをする大豆由来の成分を含む栄養補助食品を担当し、女性の健康に関する企業向けセミナーを実施していることなどを説明しました。
また、活動を通じて、女性自身も年齢とともに体調がどう変わっていくのか知らない人が多いと感じていると語りました。
その理由として、
① 学校教育で、ライフステージに応じた健康課題を学ぶ機会が少ないこと
② 国民皆保険制度により、医療機関受診時の自己負担額が少ないため、病気の予防や健康管理への意識があまり高いとは言えないこと
などをあげました。
「女性登用の動きが広がる中、女性の健康課題へのリテラシーを社会全体で高めていくことがますます重要です」と西山さんは指摘し、更年期について解説しました。更年期は、閉経(おおむね50歳)の前後5年の10年間を指します。この時期に、女性ホルモンがゆらぎながら急速に減ることで、様々な不調が生じます。不調を自覚する人は4割程度とされ、主な症状としては、のぼせや冷えといった血管・神経系の不調、肩こりや関節痛といった身体面の不調、イライラやうつなどの精神面の不調があげられます。
これらの不調があっても、何もせずにやり過ごしている女性が多くいる可能性を西山さんは指摘しました。日本医療政策機構が2018年、全国の18~49歳の働く女性2千人を対象に更年期症状への対処方法を尋ねたところ、「市販薬を飲む」(15.1%)、「処方薬を飲む」(8.6%)を抑え、「何もしていない」という人が64.4%で1位でした(下記グラフ参照)。
さらに西山さんは、一般社団法人「日本女性医学学会」制作の「更年期・セルフケア編」という5分ほどの動画を紹介。
不調を感じたら、食生活や生活習慣を見直すなどのセルフケアに取り組み、改善しない場合はかかりつけの婦人科医や薬剤師に相談したり、婦人科でHRT(ホルモン補充療法)を受けたり、漢方を処方してもらったりすることが大事だとした上で「何も対処せず、労働生産性が落ちた状態で仕事をしていては、女性が活躍することは難しいかも知れません」と語りました。
その後はグループディスカッションへ。女性社員の健康増進・維持に向けた自社の取り組みや、促進するためのアイデアについて意見を交わし、最後に全体で共有しました。
一つの班では、あるメーカーの女性社員から、会社の人間ドックのメニューに婦人科系疾患の検査オプションがなく、困っているという話題が提起されました。「乳がんや子宮がん検診は自分の住む自治体で受けるしかないが、対象の病院やクリニックが土日は休みという場合も多く、困っている。会社の人間ドックのメニューに入れてほしいと頼んだら、男性社員の配偶者対象の検診日に受ければいいと教えられたが、こういう情報が周知されていないのはおかしい」という意見に、多くの人がうなずいていました。
別の班からは、「『女性の健康課題』ではなく、性別を問わない『ミドルエイジの健康課題』ということで、男女ともにヘルスリテラシーを高める方法が有効ではないか」という意見が出ました。
ほかにも、社員の健康を「資産」と見なす健康経営の考え方について「『社員の幸せを応援します』というメッセージの打ち出し方が大事。『会社の業績のために健康でいてほしい』と言われても、ピンと来ない社員は多いのでは」という指摘もありました。
さらに、AG世代の女性は子どもの有無や家族の年齢、雇用形態などが様々で、男性との間だけでなく、女性どうしでも理解し合えない部分があるという意見も。「多様性を尊重すべきだとは思うけれど、実践できていない職場はまだ多い。どんな人にも悩みや不安があるはずなので、相手の意見に耳を傾けようとする職場風土が大事だと思います」
最後は参加者全員で記念撮影と名刺交換。話し込む参加者の姿も見られました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。