稲垣吾郎のGracefullyトーク
× クリス-ウェブ佳子さん <PARTⅡ>
Special マインド キャリア ファッション インテリア
[ 20.12.25 ]
着たい服も、住みたい場所も
大人なら、自分で堂々と
肩書きは、常に「更新中」。
挑戦を重ねて、新しい自分を発見し続けるクリス-ウェブ佳子さんを迎えてのGracefullyトーク。
後半は、Aging Gracefully世代の女性たちからの質問と、稲垣吾郎さんからも、折り入っての相談が……?
大人の日々を実り豊かに、そして愉快に過ごすためのアイデアを、どうぞ受け取ってください。
他人のジャッジに怯えず、「好き」を選ぶ
- 稲垣
- クリス-ウェブさんへの質問は、やっぱりファッションにまつわるものが多いですね。〈最近何を着ていいかわからないです。服選びのコツがあれば教えて欲しいです!〉。あるでしょうね、こういうこと。
- 佳子
- こういうときの解決法は「色」ですね。デザインよりも、自分と波長の合う色に出合うこと。今日はオレンジを着ていますが、私に合うのは本当はグリーンなんです 。
- 稲垣
- 波長?
- 佳子
- はい。ニュートンが発見したんですが、光から7つの色の帯が出ていて、それぞれの色は波長を持っている。その中には、必ず自分の波長と合うものがあるんです。
- 稲垣
- へえー。グリーン、おしゃれですね。僕は原色をぜんぜん着なくて、だいたい黒かグレー、あと白。やっぱりそれが落ち着きます。
- 佳子
- モノトーンの波長が、稲垣さんには合ってるんですよ。私も、グリーンが着ていていちばん落ち着きます。ヴィヴィッドなグリーンも好きですけど、いちばん好きなのはレーシンググリーンと呼ばれる、外国の車に使われる緑の色です。ジャガーとか、アストン・マーチンとか。
- 稲垣
- ミニクーパーにもありますよね。僕も好き。
- 佳子
- これは、肌の色から判断するパーソナルカラーともまた違っているんです。肌の色からすると、実は私にはグリーンは合わないそうなんですが、でも、それは人が見ている私とグリーンの相性だから……。
- 稲垣
- 身につけたい色は、自分で決めると。
- 佳子
- ええ。女性で子育てをされていた方は、どうしても自分の好みより周囲やTPOに合わせて服を選ばなくてはならない時期が必ずあるんですよね。だから、その時期を過ぎていざ好きな服を着ていいよと言われたときに、「好きなもの……って、何だったっけ?」となってしまいがちで。
- 稲垣
- 男性の、サラリーマンの方とかもそうだろうなぁ。いつもはスーツだから、普段着に何を着ようかと迷ってしまうとか。でも、色で選ぶというのは、すごくシンプルなアドバイスでわかりやすい。
- 佳子
- 好きな色をひとつ見つければ、その色との組み合わせで……たとえばグリーンとオレンジ、というふうに相性のいい色を選んでいくといいですよ。
- 稲垣
- 自分では身につけないですけど、女性のファッションアイテムを見るのは好きですよ。贈りものを選ぶのも。そういえば以前、この人はモノトーンを着ていることが多いからヴィヴィッドな小物があるといいんじゃないかなと思ってバッグをプレゼントしたら、「こんな色、持ったことない」って言われたことがあったような……(笑)。難しいですね、なかなか。
- 佳子
- フフフ。あとは、選んだら堂々と着ること! 服って、やっぱり自信と共に身に纏うものですから、似合ってないんじゃないかと心配しながら着ると、どうしても俯きがちになってしまう。それだと、何を着ても格好よくは見えないので。自分が好き! と思えることって、本当に大事です。他人の視線や指針に合ってるかどうかじゃなく。
- 稲垣
- そこで「似合うよ」って褒めてもらったりすると、自信につながるのかな。ちょっとした成功体験があると。
- 佳子
- そのとおりです。とくにいまはSNSなどもあって、「あなたはこうだよね」と他人から勝手にジャッジされがちな時代なんですが、人にどう見られているか、そこまで気にしなくていいんじゃないかな。私は、そんなふうに思います。
空間のイメージチェンジは、ファブリックが鍵
- 稲垣
- あの……せっかくプロの方がいらっしゃっているから、僕も質問、いいですか? インテリアのことなんですけど。
- 佳子
- はい。ぜひ。フフフ。
- 稲垣
- 僕、もう10年ちょっと同じ家に住んでいて。家具のレイアウトも、この空間にはこれが正解なんだろうなというものを一回作っちゃったんですね。そうすると、なかなか配置が変えられないんです。だからもう、ずっと同じままで。
- 佳子
- 変えたい、とも思わないですか?
- 稲垣
- 思わないけど……実はちょっと思ってるのかも(笑)。要は、正解はひとつなのか? っていうことなんです。たとえば、カーテンを背にしてソファを置くのは変なのか、とか、逆に部屋に入ってすぐソファの背が見えるのはおかしいんだろうか? とか。
- 佳子
- どちらも「あり」だと思いますけど……。じゃあ、ファブリックを変えるというのはどうですか。カーテンとか、壁紙とか。
- 稲垣
- ああ、なるほど。
- 佳子
- 面積の大きい部分が変わると、かなりリフレッシュされますよね。全面じゃなくて、コーナーの角の一部だけでも変化をつけるとか。
- 稲垣
- うーん、幅木(はばき・床面に接触する壁の下部に取りつける木材)とのバランスも、実は気になっていたんですよね。そうか、そうか……。あと、ソファの生地を張り替えるとか。そういえば、何年かぶりに絨毯を替えたんですが、それでもちょっと気分が変わりましたね。
- 佳子
- 照明の置き方なんかでも変化がつけられます。おうちに人はよく招きますか?
- 稲垣
- いや、そうでもないです。
- 佳子
- お客さんを招くようになると、見せる空間として、部屋のアイデアがいろいろ広がりますよ。
- 稲垣
- なるほど。でも僕、ひとり暮らしなのに、けっこう見せる空間作りに走っちゃってて。人も呼ばないし、インスタでも見せないのに、何でだろう? って思いながら(笑)。
- 佳子
- アハハ。自分で見て心地いいって、大事です。
- 稲垣
- 自己満足なんですけどね……。好きな音楽を流して、好きなものを置いて、それを聴いたり眺めたりしながらワインなんか飲んじゃって。でも、まだまだ工夫の余地はありそうですね。凝り固まってしまわないように、やってみます。ありがとうございます。
- 佳子
- フフフ。いつかぜひ公開してください。
終(つい)の住処は、小さな村?
- 稲垣
- この先、何か作ってみたいと思っているものはあるんですか。
- 佳子
- うーん、ファッションでもインテリアでも、自分のブランドを作ってみたいか? と言われると、答えはNOなんですよね。やっぱり専門の方たちがいらっしゃるわけだし、自分ではコラボレーターの方が楽しいかな、と。それぞれの方の才能を引き出しながら。
- 稲垣
- プロデューサー気質なんですね、きっと。
- 佳子
- はい、たぶん……ああ、でも、ひとつありますね。作ってみたいものが。平屋を建ててみたいんです。父と一緒に設計して。
- 稲垣
- へえー。どんな?
- 佳子
- そうですね、キッチンが土間になっていて、ホースで全部、水洗いができて……。祖母の家が、そうだったんですよ。やっぱり土間があって、そこに竈門(かまど)がふたつあって。
- 稲垣
- すごい。そういうの、ドラマや映画のセットでしか見たことないや。
- 佳子
- 平屋って、空間的にもすごく贅沢だし。ゆくゆくはそこで、友だちと一緒に住んで、一緒に老いていきたいなと思ってるんです。プチ・プライベート老人ホーム、みたいな。
- 稲垣
- 老人ホーム!
- 佳子
- 私、去年の春に離婚したんです。結婚したときは「この人と一緒に生きていきたい」という気持ちがあったんですが、今度は一緒に年を重ねて、一緒に死んでいきたいと思える人を探したいなと思っていて。それが何人になるかは、まだわからないんですが、そう思える相手と出会いたいですね。
- 稲垣
- 老後かぁ……女性はそういうことを、よく考えるんですか? 僕は、なるべく避けて通りたい(笑)。大事な宿題なのはわかっているけど、「あとでやろう」って。
- 佳子
- 夏休みの子どもみたいに。
- 稲垣
- そう、本当にだめなタイプ。でも、平屋はいいですね。男は自己顕示欲なのか、どうしても家イコール自分の城、みたいな考えをしがちだけど、平屋の一軒家だとすごく開けた感じ。でも、そこにひとり……っていうのは、どうですか? やっぱり人が必要?
- 佳子
- うーん、私は無理ですね。すごく寂しがりやなので、ひとりだとカフェでご飯も食べられないんです。いまは子どもたちと一緒に暮らしていますけど、「あと何年一緒に住んでくれるだろう?」って思っていて。
- 稲垣
- そうなんだ。いろいろですね、人ごとに。
- 佳子
- それに、やっぱりいまは、女性にとっては結婚が最終地点じゃないと思うんです。一生キャリアを求める人もいるだろうし、あと、セクシュアリティも昔と違って豊かなので。私の友人たちもそんなふうだから、多様性のある人たちと小さな村を作って、そこの村長になるのが夢ですね。作物とか、自家栽培して。
- 稲垣
- すごいなぁ。叶えてください。遠くからそっと拝見します(笑)。
\吾郎のアフタートーク/
- とても旺盛な方で、お話ししていて楽しかったですね。若い頃から養ってきたチャレンジ精神が、今も心と身体に息づいていて、それがご自分の生き方に表れ、お子さんたちにもちゃんと受け継がれているんだろうなと……。インテリアのアイデアもたくさんいただき、ありがとうございました。参考にして、ひとりの空間をより充実させたいと思います!
撮影=三浦安間 取材&文=大谷道子
クリス-ウェブ佳子/ヘア&メイク=森野友香子 スタイリング=安西こずえ
稲垣吾郎/ヘア&メイク=金田順子 スタイリング=細見佳代
- クリス-ウェブ・よしこ
- 1979年島根県生まれ。大阪で育つ。2011年より雑誌『VERY』のモデルを務め、多くの女性読者の支持を獲得。その後、コラムやエッセイの執筆、ラジオ番組のパーソナリティー、インテリアやファッション分野での空間・商品プロデュースなど、さまざまなジャンルに活動の場を広げる。著書に『考える女』『TRIP with KIDS-こありっぷ-』。公式インスタグラム(@tokyodame)のコーディネートやインテリアも注目の的。
- いながき・ごろう
- 1973年東京生まれ。最近の出演作にNHK連続テレビ小説『スカーレット』、映画『ばるぼら』『半世界』、舞台『朗読劇 もうラブソングは歌えない』、バラエティー『不可避研究中』、ラジオ『THE TRAD』『編集長 稲垣吾郎』、配信番組『7.2 新しい別の窓』『誰かが、見ている』など。フォトエッセイ『Blume』が好評発売中。2020年12月13日〜21年1月7日、東京・TBS赤坂ACTシアターで舞台『No.9—不滅の旋律—』に出演。