Dr. HisamichiのKeep On Walkin’
スペシャル対談 Vol.1
黒谷友香さんの美脚を保つ「マイルール」とは?
Special ヘルスケア 学び ライフスタイル
[ 21.08.19 ]
乗馬歴は20年以上。ガーデニングにも詳しく、最近は家一軒を丸ごとDIYでリフォームしたり、自身で育てたハーブを使ったキャンドルをつくったり、家族型ロボット「LOVOT<らぼっと>」のアンバサダーを務めたりと、アクティブなライフスタイルで知られる俳優の黒谷友香さん。素敵に年齢を重ねていくために心がけている体のケアなどについて、「下北沢病院」の足病医、久道勝也先生が尋ねました。
- 久道
- 8月に主演映画が公開されるそうですね。長崎・浦上天主堂のマリア像が戦後、保存されなかった歴史的背景に迫るストーリーだと伺いました。日本とアメリカでも解釈が異なる、重みのあるテーマです。
- 黒谷
- ありがとうございます。10月にロサンゼルスで開かれる日本映画祭の公式招待作品にもなっていて、出演させていただいて本当に良かったなと思います。ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。本来は昨年の夏に公開予定だったのですが、コロナの影響で延期になってしまって。
- 久道
- 昨年はどのように過ごされていたんですか。
- 黒谷
- 撮影が延びたり、中止になったりして時間ができたので、家の近所を散歩したり、ガーデニングをしたり、馬を世話したりして、むしろ普段よりは動いていました。ずっと家にいると、どうしても気分がこもってしまうので、外の風を感じる方がいいかなって。
- 久道
- 患者さんと話をしていても、黒谷さんのように、かえってよく散歩をするようになったという方と、運動不足で太ってしまったという方と、二極化していますね。そういえば、黒谷さんは乗馬の経験も長いそうですが、実は僕、コロナがなければ昨年の夏に出張先のモンゴルで、初めて乗馬に挑戦する予定だったんです。足病医としても大変興味があるのですが、馬に乗るのに必要な筋力とか柔軟性など、ポイントを教えていただけますか?
- 黒谷
- 筋肉というよりは、自分の骨の位置を意識して乗るようにしています。坐骨の上にきちんと座っているかどうかとか、骨盤の前傾、後傾などですね。乗る人の骨盤の位置一つで、馬の反応も変わってくるんです。
- 久道
- 以前、椎名誠さんのモンゴル旅行記を読んだのですけれど、いきなり長距離で馬に乗ったら、お尻が内出血して大変だったと。じゃあ、腰を浮かせて中腰姿勢でずっと乗り続けられるかというと、それはそれで大変なんじゃないかと思ったんです。
- 黒谷
- 初めてなのに長時間乗ったらずるむけになりそう(笑)。とはいえ、中腰で乗るのは厳しいと思います。慣れれば体幹がしっかりしてきて、座っていても体の力が抜けて、馬の動きに自然に合わせられるようになりますよ。
- 久道
- 前にラクダに乗ったことがあるんですけど、思った以上に座面が高くて、かなり怖かったんです。乗馬って、理想のフォームはあるんですか?
- 黒谷
- 馬はラクダより背が低いから、怖くないと思いますよ。理想のフォームというのは、うーん……。なかなか一言では言えないですよね。やっぱり一人一人、骨格も筋肉のつき方も違いますし。
- 久道
- なるほど。実はそれって、歩行についても全く同じことが言えるんです。僕も、患者さんや取材される方に「正しい歩き方を教えてください」と聞かれるんですけど、人によって、骨と骨のつながり方や、筋肉のつき方、歩き方のくせも違うから、唯一の正解っていうのはないんです。と言うと、ガッカリされちゃうんですけど。教科書的なものに近づけようとすると、必ず体のどこかに無理がくる。いやあ、黒谷さんに先に正解を言われちゃったな。
- 黒谷
- あはは、なんだかすみません。
- 久道
- それでも、アメリカの足病医学では「理想の歩行フォーム」というのを定義しているんです。条件は二つあるんですけど、何だと思いますか?
- 黒谷
- えー、何だろう。腕を振る、とかですか?
- 久道
- まず一つは、けがをしない、足を痛めないフォームであるということ。そしてもう一つは、最も省エネルギーであること。この二つを満たす歩行が、その人にとっての理想の歩行ということなんですね。
- 黒谷
- 美しいかどうかというのとはまた別の話ですね。
- 久道
- はい。そもそも、歩行は文化的背景によっても左右されます。たとえば洋服と和服では、歩幅も変わってきますよね。履きものも、ぞうりや革靴、スニーカーかハイヒールかによってフォームは違ってきます。
- 黒谷
- 確かに。イタリアに行ったとき、石畳をハイヒールでさっそうと歩く女性たちを見て、どうしたらあんな風にかっこよく歩けるんだろうと思いました。
- 久道
- そうですよね。道路の舗装状況なども、国によってまちまちです。靴文化が長い欧米では、昔から足病医学が発達してきました。一方、アジア圏ではどうかと言えば、G7諸国で足病専門医がいないのは日本だけといわれています。黒谷さんは時代劇などにも出演されていると思いますが、そういう場合の歩き方はどんなことに注意されていますか?
- 黒谷
- 所作としての見た目は気をつけていますけど、あとは自分の体の感覚ですね。
- 久道
- 役者の方たちを見ていて思うのは、自然にポーズをとっているようで、実は美しく撮られるようにすごく計算されているなと。スポーツに近い感覚なんじゃないでしょうか。黒谷さんも若い頃から「見せる」お仕事をされている中で、どうしたら美しく見えるかというのは、どのように学んでこられたんですか。
- 黒谷
- 撮られているときと、できあがった写真や映像を見ていくうちに、自然と分かってくるようになったんだと思います。こういうときはもう少し、あごを引いた方がいいなとか、首をかしげた方がとか、足を少し斜めにした方が、とか。
- 久道
- そういう体のしなやかさを保つために、何か運動などはされているんですか?
- 黒谷
- 骨の位置を意識しながらやるストレッチを最近、友人に勧められて始めました。インストラクターの動画を見ながら、まずはボールを使って筋肉の張りやコリをゆるめ、その後は肩甲骨を寄せたり、骨盤の位置を意識しながら座ったりして、骨を本来あるべき場所に整えていくイメージです。始めて1カ月くらいなのですが、私ってトレーニングの成果が表れやすいのか、姿勢が良くなり、座るのが楽になったり、巻き肩が改善されてきたりしているように思います。あと、これも1カ月ほど前からですけれど、足は組まないようにしています。
- 久道
- そうやって、ご自身の体を客観的に見て、修正し続けるのは大事なことです。骨って、一定の負荷がかかると、皆さんが思うよりもずっと簡単に変形してしまうんです。だから、足を組まないというのは正しい選択ですね。ちなみにDIYやガーデニングでは、しゃがむ姿勢も多いと思いますが、ひざや腰にきたりしませんか?
- 黒谷
- ガーデニングでは、座ったまま作業できるような椅子つきのカートみたいなものもあるんですが、私は使っていないんです。むしろ、しゃがむこともいいトレーニングになるんじゃないかなと。年齢を重ねていく上で足腰は大事だと思うので、機会を見つけてケアしていきたいですね。
- 久道
- では、ちょっと足を見せていただきましょうか。ふむふむ。なるほど。血流はいいですし、神経障害もなさそうですね。じゃあ足首をみましょう。あれ、ちょっと……硬いですね。よくいらっしゃるんですけど、アキレス腱(けん)が硬めです。それじゃ、後ろを向いて立っていただいていいですか? ああ、ハイアーチですね。
- 黒谷
- 足首が硬いのって良くないんですね。あと、ハイアーチって何ですか?
- 久道
- 簡単に言うと、扁平足(へんぺいそく)の逆です。土踏まずのアーチが高く、歩行で足が地面に着地したときに、指の付け根やかかとに衝撃を受けやすい形なんです。
- 黒谷
- そういえば、伊勢神宮に行ったとき、歩きすぎて足の裏を痛めてしまったことがありました。スニーカーを履いていたのに。
- 久道
- ハイアーチで、負荷がかかりやすいからかもしれません。それと、問題はアキレス腱です。アキレス腱が硬いと、すねの骨が前に倒れにくく、足のアーチにさらに負担がかかってしまうんです。今ざっと見た感じでは大丈夫ですけど、年齢を重ねていくにつれて故障が出やすくなるかもしれません。本当はX線写真でちゃんと診てみたいところです。ある意味、絶好の事例かもしれません。
- 黒谷
- 先生、やめてください(笑)! でも、故障は心配です。どうしたらいいですか?
- 久道
- 二つあると思います。一つはストレッチでアキレス腱を柔らかくすること。もう一つは、衝撃を吸収する靴の中敷き、インソールをオーダーメイドで作ることですね。足裏の衝撃をカバーしてくれます。普段よく履いている靴も見せていただけますか。ああ、これはちょっと、つま先の捨て寸が足りないな。足は、歩くときに必ず前にずれるので、ここはもう少しスペースがほしいところ。あと、左右で靴底の減り方に結構な差がありますね。歩くときにちょっとバランスが崩れているのかもしれません。
- 黒谷
- アキレス腱のストレッチはどんな風にすればいいですか?
- 久道
- 簡単です。壁の前に立って、両手を壁に当ててください。次に、伸ばしたい方の足を1歩後ろに下げて。かかとは両足とも床につけたままです。そうしたら、壁に体重をかけて、前の方の足のひざを曲げ、後ろ足はひざを伸ばしたまま、アキレス腱がじんわり痛気持ちいい感じになるまでゆっくり伸ばしてください。昔の体育の授業のように、かかとを上下に動かして、バウンドしながら伸ばすのは逆効果なのでNGです。あと、ストレッチのときは裸足か、ヒールのない靴で行ってくださいね。1カ月続けるだけで、だいぶ変わってくると思いますよ。
- 黒谷
- やってみます! ちなみにインソールってどこで買えるんですか?
- 久道
- 病院で処方してもらえます。整形外科などで取り扱っています。装具士さんが一人一人の足を採寸して作るので、本当にぴったりフィットしますよ。費用は保険適用で1万数千円くらいからですね。一度作ると、スニーカーやローファーなど、あまりかかとの高くない靴に使い回せるので便利だと思います。ただ、装具士さんによって特徴もありますので、事前に調べていただいてからオーダーすることをお勧めします。
- 黒谷
- そうなんですね。行ってみよう。今日はありがとうございました。
- 久道
- 今度ぜひ、乗馬を教えてください!
- 黒谷 友香(くろたに ともか)
1975年生まれ、大阪府出身。17歳のときに雑誌の専属モデルとしてデビュー後、映画や舞台、ドラマなどで幅広く活躍。地元・堺市の親善大使も務め、関西ローカルのTV番組「TOKIO城島 ほのぼの茂」(ABC放送)にレギュラー出演中。8月20日から、高島礼子さんとのW主演映画「祈り―幻に長崎を想う刻(とき)―」が全国順次公開される。