ヴィーナス期の気になる病気
<乳がん編>
GLOW presents ヘルスケア 学び
[ 21.11.08 ]
ヴィーナス期には様ざまな変化が起きるのは自然なこと。ですが、なんでもかんでもヴィーナス期のせいだと受け流してしまうのは禁物!日頃から乳がんに意識を向けていますか?乳がんは自分で早期発見できる数少ないがんです。40代からかかる人が増える傾向なので心して過ごしましょう。
※GLOW世代特有の体の変化期である更年期を「ヴィーナス期」と表現しています
がんサバイバーに聞く、乳がんの気づきと治療の体験談
今や10人にひとりが乳がんになる時代です。もはや他人事ではありません。40才で乳がんを見つけ、2度の手術を経て元気に過ごしている岡崎裕子さんにお話をうかがいました。
“治療がうまくいって元気でいられることが幸せ”
陶芸家・一般社団法人CancerX広報
岡崎裕子さん
イッセイミヤケ広報部勤務ののち、茨城県笠間市の陶芸家に弟子入りし、茨城県窯業指導所にて釉薬を学ぶ。2009年に初個展を開催して以降、展覧会を中心に活動している。作品は小山登美夫ギャラリーやプレインピープルなどで販売。
入浴中になんとなくさわった左胸にしこりが!
胸にしこりを感じてから4年半が過ぎました。幸い治療が奏功し、現在は陶芸のほかにがんの社会課題に取り組む仕事もしています。
とはいえ今でも転移の心配があるので、どこかが痛んだり腫れたりすると主治医のところに駆けつけ、股関節が痛めば骨への転移を疑って整形外科に行ったりと不安はつきません。神経質すぎるかもしれませんが、「なんかおかしい」と感じたらお医者様に相談することが大事だと思うんです。私の最初の気づきもそれでしたから。
左胸にしこりを見つけた時は授乳が終わる頃だったので、乳管にお乳が溜まって乳瘤ができたと思いました。なのでいつものようにさすって流そうとしたのですが、小さくならないし痛みもない。なんだろう?とよくさわってみると3cmくらいのゴムのように感じました。おかしいなと思いつつ、痛くないし食欲もある、おかしいのは胸だけだからがんのはずはないと自分に言い聞かせたのですが、やっぱりおかしい。抱えきれなくなって夫に話したら「安心するために病院で診てもらったほうがいい」と言ってくれました。私もお医者様に「大丈夫」と言ってもらいたい思いで近所の産婦人科に行くと「明日も来られますか?」と。ただごとではないと感じて乳がんをとことん調べました。
翌日、乳腺科の先生がしこりの組織を取って生検に出すことになりました。この検査をしてもがんじゃないこともあると自分に言い聞かせましたが、画像を診た先生が9割方がんでしょうと。それから検査の結果がわかるまでが本当に辛くて。自分はどうなるんだろう?相当進んでいるのかなという思いが錯綜して……。かなりしんどい時間でした。
結局がんとわかって精密検査を受け、腋窩(えきか)リンパ節への転移ありのステージII bと診断されました。抗がん剤でがんを小さくしてから左胸とリンパ節の切除の手術を受けることに。抗がん剤治療は、倦怠感があり食欲に波がある。脱毛して顔がむくむ。「あと何回で終わる」と何度唱えたか。ただ、抗がん剤治療をする過程で画像中のがんが小さくなっていることが目で確認できてとても励みになりました。
抗がん剤治療をしている間に髪、眉毛、まつ毛が抜けたけれど、抗がん剤が終わると少しずつ毛が生えそろってきた。
“違和感や不安があるのに
「きっと大丈夫」と思い込むよりも、
医者に「大丈夫」と言ってもらう選択を“
私が罹患したトリプルネガティブの乳がんは、ふたつの女性ホルモンの受容体とがん細胞の増殖を 強く促すHER2たんぱくがすべて陰性で、抗がん剤しか効かない悪性度の高いものでした。さらに、遺伝性の乳がんだということもわかり、左胸とリンパ節を切除したのちに、右胸と両卵巣を予防的に切除する手術も受けました。
私はしこりができる乳がんでしたが、湿疹やただれのような皮膚に症状が出る乳がんもあります。少しでも違和感や不安を感じたらぜひ病院に行って欲しいと思います。早く気づけば日帰りの温存手術で終わったり、抗がん剤の治療をせずに済むこともあります。あれこれ考えるよりも直感に従うことが大事なこともあると思います。
左胸の手術から4年経って豊かなロングヘアに。再建手術で胸にシリコンを入れて少し大きくしたというバストも自然!
GLOW THE HEALTH
乳がんは数ミリの大きさで見つければ怖くありません
乳がんは進行すると乳房切除が必要になったり、もっと進行すれば命を失うこともあります。が、乳房は体表にあるので検査がしやすく、見つけやすいのが特徴です。数ミリ程度で見つければ大した手術にならないことも。なので1~2年に一度はマンモグラフィ検査を受けることが重要です。加えて胸を鏡で観察する、お風呂で毎日、胸をさわって確認するといいですね。指先は肌の凹凸を感じるくらい敏感で小さな変化を見逃しません。自分で気づいて病院に来る人も多いのです。いつもの自分を知って、「おかしい」と感じたらすぐに検査を受けてください。しこりがある!と慌てて病院に来たら、良性腫瘍だったという場合もありますよ。
● 乳がん発生部位の頻度(重複症例あり)
出典:全国乳がん患者登録調査報告 第32号 2000
外側の上部に乳がんができることが多いですが、がんはどこにでもできます。指先でまんべんなくさわっていつもの状態を知っておいて。乳輪も抜かりなく!乳頭から分泌液が出たりしたら要注意です。
● 女性の乳がんの年齢階級別罹患率(2018年)
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
40代からは危険水域に!自治体の乳がん検診は40才から始まりますがそれには意味があるのです。乳がん検診の案内が来たら無料、もしくはお手頃価格で検査が受けられる絶好のチャンスと思って必ず受診すべきです。
出典:「GLOW」2021年11月号
イラスト=二階堂ちはる 取材・文=黒川ともこ 取材協力=長岡美樹先生(宮益坂メリーレディースクリニック)