ヴィーナス期の気になる病気
気になる不調は放っておかないのが鉄則!
GLOW presents ヘルスケア 更年期 学び
[ 21.11.22 ]
ヴィーナス期には様ざまな変化が起きるのは自然なこと。ですが、なんでもかんでもヴィーナス期のせいだと受け流してしまうのは禁物!早期発見したい乳がんや子宮、卵巣の病気は注意が必要です。
※GLOW世代特有の体の変化期である更年期を「ヴィーナス期」と表現しています
(回答者数321人/複数回答あり)
“乳がん検診、子宮・卵巣のチェックはたしなみです”
- 宮益坂メリーレディースクリニック
院長 長岡美樹先生
全世代の女性が体の悩みや不安を気軽に相談できる頼れるおせっかいおばちゃんを目指して、渋谷にクリニックを構える産婦人科専門医。いつもわかりやすい解説をしてくださるGLOWのかかりつけ医的存在。
自分を守るのは自分なので、自分で気づくことが必要
読者に気になる婦人科系の病気を聞いたところ、半数以上が「乳がん」と回答しました。
「乳がんは10人にひとりがかかるといわれていますから納得の結果ですね。でも気になっていても実際に乳がん検診を受けている人は少ないのではないでしょうか。検査の機械もみるみる進化しているので、検診を受けさえすれば今よりももっと小さながんを見つけられるのにと残念に思います。私がGLOW世代で受けていただきたい検診に優先順位をつけるなら乳がんは最上位。次は経膣エコーでの子宮と卵巣の検査ですね。子宮体部と卵巣は直接見ることはできないので膣から器具を挿入して超音波で診ます。自覚症状がないこともあるのでぜひチェックしてほしいですね」(長岡先生)
アンケートの3位と4位は子宮の2つのがんです。これも検診で解決できますか?
「子宮頸がんは細いブラシで細胞をこすり取るだけなのでとても簡単な検査で済みますし、リラックスして受ければ早く終わります。子宮体がんは子宮口から細いブラシを入れて細胞を採取するので、出産経験がない人は特に痛みを感じることもありますが、50才を超えたら受けていただきたい検査です。子宮頸がんについてはワクチン接種をするのが理想的ですが、GLOW世代では既にHPVウイルスに感染していることもあるので少しややこしいですね。女のお子さんがいるならぜひワクチン接種をおすすめしたいです。ワクチンを打っておけば子宮頸がんの脅威からお子さんを守れます」
5位の子宮筋腫はすでに持っている人も多いようです。
「実際、子宮筋腫がある人は多いです。筋腫があっても小さいとか数が少なければ大した症状もなく更年期に突入して、閉経すると小さくなるということもありますが、経血量が多いとかお腹が痛む、貧血で困っているという症状があるなら閉経を待たずに治療すると楽になります。貧血になるとうつになりやすいし、体力もなくなるからだるくて仕事が進まない、頑張ろうと思っても頑張れなくて仕事で損をしてしまうこともあると思います」
貧血を自覚して初めて経血量が増えてきたことに気づくこともありそうですね。更年期障害が気になるという回答は2位でした。やはりGLOW世代では気になります。
「更年期は誰もが通る道だし、ホルモン量が変化することで症状が出るのも自然なこと。でも病気じゃないからと決めつけてガマンだけはしないでいただきたいです」
ヴィーナス期の「コロナうつ」が急増
すでに1年半もコロナとたたかっているせいで“コロナうつ”の人が増えています。厚生労働省でも「新型コロナウイルス下でのメンタルヘルスに関する調査結果」を発表していて、5~6割の人が何らかの不安を感じていたとあります。常にコロナ感染の不安がある状態は、見えないストレスが満載で自律神経が乱れる要因に。
ベースに更年期があればなおさらです。溜まったストレスを発散させる場がない、子どもや夫は在宅、収入も不安定となればイライラは募るばかり……。辛くて誰かに話を聞いて欲しいなら婦人科で相談するという選択肢もありますよ。
ヴィーナス期の最大課題「更年期障害」対策
閉経を挟んだ前後5年を合わせた10年が更年期で、女性ホルモンの減少に伴って心や体に表れる様ざまな不調が更年期障害です。けれど、更年期障害は誰にも必ず起きるものではありません。不調を感じない人もいれば、症状、不調の度合いや辛い期間も人それぞれです。様ざまな不調が出るというと、不調だらけになってしまうのではと心配になるかもしれませんが、主な症状が2、3個出ることが多いですね。
自分が大したことないと思えば受診する必要はありませんが、辛すぎる、少し楽になりたいと感じたら遠慮しないで医師に頼ってください。話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になることもあるし、症状を改善するホルモン剤や漢方薬も処方します。悩みを解決するサプリメントなども紹介できます。また、更年期障害と似た病気も見分けられます。不調をすべて更年期のせいにしていると大きな病気を見逃してしまうこともありますからガマンを重ねないでください。
ホルモン量が低下すると無排卵になって生理周期や経血量が減る、脳から卵胞刺激ホルモンが大量に出ることで自律神経の乱れ、それによって起きる症状が出やすくなる。
閉経前の方が症状が出やすい
ホットフラッシュや関節痛、気持ちが落ち込むなどの症状はホルモンが減ることに体が対応できずにいる閉経前に起きることが多い。閉経後は体が慣れて症状は軽くなる。
ヴィーナス期に知っておきたいTOPICS
TOPIC1|女性ホルモン様作用を持つ「エクオール」をとろう
大豆や大豆製品を食べると、大豆に含まれる「大豆イソフラボン」が腸内細菌によって「エクオール」に変換されます。
「エクオールの化学式は、女性ホルモンのエストロゲン(エストラジオール)に似ているので、エクオールをとると体は“エストロゲンが来た!”と思い込んでエストロゲンが分泌された時のような作用をします。年齢性別を問わず誰でもとれて副作用の心配もありません」(長岡先生)。
更年期の変化をやや感じる程度の人ならエクオールをとると悩みが軽くなることも。エクオールの効果を得るには、摂取量も大事。
「エクオールのサプリメントを購入する際は、エクオール含有量や原材料も確認してみてください」(長岡先生)。
1日に10mgを3ヶ月間とり続けるとホットフラッシュの回数が減るという報告もあります。エクオールは大豆を発酵させて作りますが、食用の乳酸菌で発酵したエクオールならより安心です。
\女性に嬉しいことがたくさん!/
エクオールに期待できる効果
●目尻のシワ面積をおさえる
●首・肩のこりが軽くなる
●骨密度が低下しにくくなる など
大豆を食べてエクオールを作れる人は2人にひとり
食べた大豆をエクオールに変換するにはある種の腸内細菌が必要で、それが働かなければ大豆を食べてもエクオールになりません(=女性ホルモン様の作用は期待薄)
。腸内のエクオール産生菌の有無は尿検査で判定可能。自分で採尿して郵送するとwebで結果を知らせてくれるキットで調べられます。
4180円(ヘルスケアシステムズ)
TOPIC 2|今こそ、骨密度・骨質をしっかりキープするべき!
骨は成長期に大いに作られて20才頃に最大の骨量になります。その後は 40才頃まで骨量が保たれて性ホルモンの減少に伴って少しずつ減少します。そして女性の骨にとって最大の山場となるのが閉経。閉経して女性ホルモンがほとんどなくなると骨量も減ってしまいます。なので、ヴィーナス期前半は骨量キープに努めるのが肝心。
「運動して骨に刺激を与える、カルシウムとビタミンD、ビタミンKが豊富な食事をする、あるいは日光浴でビタミンDを増やすといいですよ」(長岡先生)。
骨密度を正確に把握するには、骨粗しょう症の診断基準に使われるデキサ法で定期的に骨密度を測るといいでしょう。デキサ法はレントゲンによる検査で、整形外科などで調べられます。
「骨密度」と「骨質」で骨の強さが決まります
骨質とは骨の土台となる繊維状のコラーゲンのことで、骨の強度の30%は骨質が関係しているといわれています。骨密度が正常範囲なのに骨折しやすい人は、骨質に違いがあります。骨質は尿検査が可能。自分で採尿し簡単に検査できる郵送検査キットを試しては?
6600円(大正製薬)※通信販売限定
出典:「GLOW」2021年11月号
イラスト=二階堂ちはる 取材・文=黒川ともこ 取材協力=長岡美樹先生(宮益坂メリーレディースクリニック)