Aging Gracefullyアンバサダー
自分で何かを生み出し、自力で夢を奪い取っていく
LiLiCoさん「ハッピーは飛んでこない 自分の中にある」
Special ライフスタイル キャリア
[ 22.05.27 ]
Aging Gracefullyプロジェクトでは、5年目の2022年度アンバサダーとして、ともにAG世代でタレントのLiLiCoさん(51)と、フリーアナウンサーの住吉美紀さん(49)をお迎えしました。
LiLiCoさんは、映画コメンテーターやタレントとして活躍するだけでなく、今年3月にはプロレスの引退試合を行って話題を集めました。一方、昨年春に初めてミュージカルの舞台に立つなど、活動の幅をさらに広げています。
「人生で2回ぐらい、神様からのチャンスが」
――18歳のときに一人で来日されてから「王様のブランチ」(TBS系)のレギュラー出演が決まるまでに、車でホームレス生活をしながら営業活動を続けた時期もあったとうかがっています。
夢はひとつひとつ自分でかなえるものです。全部、自力で奪い取っていくしかないんです。誰も他人の夢をかなえてはくれないですよ。ただ、人生で2回ぐらい、神様からのチャンスが来ると思います。私の場合、最初のチャンスは「王様のブランチ」でした。
「何とかなる」と言う人がいますけど、それは隣の人が、その人のためにめちゃくちゃ頑張ってくれているから何とかなるんです。世の中は、何とかならないんですよ。タレントは才能という意味だから、いいものを作ろうというパワーをタレント本人が生み出さないと。そこにいるだけじゃ、タレントではないと思います。私は何かを生み出すのが大好きなので、少しでもいいものを生み出そうといつも考えています。
自分で何かを生み出す、自分で何かを作る、という姿勢は、20代からずっと変わりません。例えば、私は着せられたくない人だから、ファッションは全部自分で考えます。自分で髪の毛をまくのは面倒だけど、私の髪質を扱える人がほとんどいないので、文句を言いたくないから自分でやります。タクシーも、遠回りされて文句を言いたくないから電車で行きます。何でも自分の力で成長していかないといけないと思っています。
「世の中は全部、人とコミュニケーション」
――ご自宅にいらしても、いつでもすぐに出かけられる服装を心がけているそうですね。
いまから飲みに行こうよ、と言われたら、すぐ行けるように。フットワークの軽さ、行動力が大事です。そこには仕事があるかもしれないし、楽しいことがあり、出会いがあり、その出会いが枝分かれして、また何かを得るかもしれない。毎日がチャンスであふれていますよ。
いまはメールやLINEで簡単につながりますけど、それで本当につながっているのか、大きな疑問です。世の中は全部、人とコミュニケーション。それしかないです。周りの先輩や、先輩の友達は大事です。会話の節々にヒントになるような言葉があります。政治も会社も、テレビ業界、映画の現場も、結婚も離婚も、何か問題があったときは必ずコミュニケーション不足が原因です。
――ボーカルグループ「純烈」のメンバーで俳優の小田井涼平さんと2017年に結婚されました。家庭円満の秘訣はありますか。
夫婦も全部、コミュニケーションが大事です。例えば、具合が悪いときは相手に言うこと。生理痛やPMS(月経前症候群)は言わないとわからないし、まだ検査してもらっていないですけど、私は多分、更年期に入っているから、大したことじゃないと思ってもイライラすることがあります。生理がどんどん来なくなって、ホルモンのバランスも多分変わっているので、怒らないようにとわかっていても、もしかしたら仕方のない何かがあるのかな、と思っています。だから正直に話しています。
「何でも自分のライフスタイルに合わせればいい」
――自分らしさとは何でしょうか?
例えば、妊娠中の女性がピンヒールを履くと、日本ではみんながバッシングするんだけれども、世の中には、ピンヒールで歩く方が楽だという人もいるわけですよ、だから、ほっといてあげてほしい。ハリウッドスターはみんなピンヒールなのに、そこは誰もバッシングする勇気がないよね。アメリカ人もバッシングしないから、日本人は何も言わない。腰が痛くてスニーカーで歩けない人もいますし、何でも自分のライフスタイルに合わせればいいんですよ。私は昔、ピンヒールの方がよかったですね。姿勢も良くなるし、全身の筋肉を使うからやせるんです。でも(2020年に)膝を骨折してからは、普段はスニーカー。テレビに出るときだけハイヒールを履いています。
私は女性が弱いと思ったこともないし、頭脳的に劣っていると思ったことも一度もない。女性として生まれて、化粧するのも楽しいし、素敵な洋服を着るのも楽しいし、女性は楽しいと思いますよ。いまは我慢が美学の時代ではありません。ただ、LiLiCoは我慢してないのかって言ったら大間違いで、やりたいことをやるために2~3倍ぐらいは犠牲にしていますよ。良い我慢と悪い我慢があるんです。自分がやりたいこと自体を我慢するのは、良い我慢とは思いません。
結婚したら子どもを産む。それが日本のマニュアルなんですよね。私も結婚したら、「次、お子さんはいつですか」と聞かれました。私はずっと仕事をするので、命をかけて産んでも、赤ちゃんから2歳ぐらいまでの一番大変なときに仕事ができないとか、産まなきゃよかったと一瞬でも思ったら、最低の母親だと思いました。だから、妊活をしましたけど、途中で主人と話し合ってやめました。
主人も同じ考え方で、「俺が仕事でずっと家にいなくて、妊娠中もずっと一人で大変な思いをさせて、出産のときも絶対一緒に立ち会えないと考えたら、俺はもしかしたら無理かもしれない」と。ただ単に「自分の子どもが欲しい」と言って突っ走るんじゃなく、すごく素敵な人だと思いました。そういう仕事だとお互いにわかっていて結婚したわけだし、ずっと仕事をしたいので、二人で考えて決めました。
日本のマニュアルとは違う生き方だけれど、何でもマニュアルを守り過ぎたら、いつか何かが大きく崩れてダメになりますよ。日本では、他人と比べていて、自分の人生を生きていない人が多いんじゃないですか。ちゃんと 本物を感じて生きることも、とても大切です。
――ストレスを感じたり、落ち込んだりしたときの解消法はありますか?
ストレスはたまっていないと、自分をだまそうとしています。でも多分、これだけ仕事をしているから、何かしらたまっています。それでも私は、ソファに座って1杯のシャンパンを飲んだら疲れが吹っ飛びます。
大きなため息は運が消えるとみんなが言うけれど、違うんですよ。悪いことを出して、いいものだけが残るので、私はエレベーターで一人になるとやっています。
子どもの頃、スウェーデンではグラム単位で買ったお菓子を入れる紙袋があって、その袋の中に怒りの言葉をしゃべって、空気で膨らませて、バンッとつぶすと、すごくスッキリしたんです。だから、あの小さな紙袋が日本にないことが、来日してまもない頃はすごいストレスでした(笑)。
20代は、私も恋愛で落ち込んだことがあります。捨てられて、相手の太ももにしがみついて「行かないで、私はあなたがいないとダメです」って言ったこともあるけど、いま、そいつの名前すら覚えてないから。しかも、ちゃんと幸せに生きている。だから、もし振られても、5分ぐらいで乗り越えましょう。ドライに、この人とは縁がないんだな、と思って。時間がもったいないです。
「スウェーデンで鉄板焼き屋さんを」
――いま、夢はありますか?
夢はいっぱいあります。まず、一番近いものだと、昨年のミュージカルがあまりにも素晴らしかったので、またミュージカルをやりたくて、オーディションを受けています。
スウェーデンの映画に日本語の字幕をつけたいという夢もあって、それを誰かに話したら、「日本の映画にもスウェーデン語の字幕をつけられるんじゃないか」と言われました。確かにそうですよね。
あと、私は写真を撮るのが大好きなので、カメラマンになりたいんです。ブログもすごくこだわって、料理がおいしく見えるように撮っています。いつかもっと自分の時間ができたら、本格的にやりたいと思っています。
60代の最終的な夢は、スウェーデンで鉄板焼き屋さんを出すこと。30歳の頃からずっとやりたいと思っているんです。甥っ子、姪っ子たちが10年後には大人になるので、店員としてホールをやってもらうために、いまから何でも好きなものを買ってあげて、LiLiCoおばさんに逆らえないように種をまいて(笑)。みんなで浴衣を着て、「いらっしゃいませ」とやってほしいですね。
私を信用してスウェーデンに引っ越して、鉄板焼きをできる人を探さないといけないので、多分10年はかかると思います。鉄板焼きのショーは、スウェーデンにないんですよ。しかもスウェーデンには飲食店のビルが存在しなくて、路面店じゃないとダメ。店の中が見えないと信用されないので、全部ガラスにしないといけないんです。時間はかかりそうだけど、鉄板焼き屋さんは、本当に大きな夢ですね。
スウェーデンにいるお父さんに会いたい。これもひとつの夢だよね。コロナで親に会えなくなったのが寂しくて。お父さんも最近、「もしかしたらこれが最後かもしれない」って言うようになったんですよ。スウェーデンでコロナが奇跡的に全部なくなって、自主隔離もなくなったら、私はすぐ帰ります。お父さんとは会わない時期が長かったので、それを取り戻したくて、コロナ前は年に2回会いに行っていたから、あと何回会えるんだろうと考えるだけで悲しいです。
――LiLiCoさんが考える、幸せとは何ですか?
いま、結婚して幸せでしょうと言われます。もちろん幸せですよ。ただ、その前もすごく幸せだったんです。今日会いたいと思う人がいたら会いに行くし、声を聞きたい人がいれば電話する。私は自分で一生懸命やるから、幸せなんです。
色紙に何か書くように頼まれて、「自分の人生を自分で演出しよう」と書いたことがあります。人生は結局、隣の芝生の方が青く見える。いいものに見えちゃうんです。でも、その人が努力をしたからそこにいるわけで、何もせずにできたわけじゃない。表面だけを見るんじゃなくて、その人の奥を見てください。人もそうですし、会社もそうです。
「何かいいことないかな」と言っても、何も変わりません。ハッピーは飛んでこないんです。ハッピーは自分の中にあるんですよ。
- LiLiCo(りりこ)さん
- 1970年、スウェーデンのストックホルム生まれ。18歳で来日し、1989年から芸能活動スタート。 2001年からTBS系「王様のブランチ」に映画コメンテーターとして出演。J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」など出演番組も多数。声優やナレーション、俳優などマルチに活躍し、ジュエリーのデザイン、プロデュースも手掛ける。
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクトリーダー 坂本真子
写真=品田裕美
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