AGサポーターコラム
「ついに来た」と思ったら
更年期の旅を歩んで〈 2 〉
Special ライフスタイル ジェンダー 更年期
[ 22.11.30 ]
40代と50代、Aging Gracefully(=AG)世代の女性に、コラムを書いたり、プロジェクトの活動を手伝ったりしてもらう「AGサポーター」。朝日新聞社員のAGサポーターたちからは、日々感じていることや取材を通して思うこと、AG世代にオススメしたい話題などをお届けします。
更年期という旅が始まるずっと前から、私にとって女の試練はありました。女の試練……。何だか昭和の演歌のタイトルみたいですが、本当にそう感じていました。
昔から、私の健康上の大きな課題は「生理に伴う不調」でした。30代で夜勤中心の職場に異動して忙しくなるにつれ、PMS(月経前症候群)の症状がだんだん強く出るように。生理前になると体が鉛のように重くなり、倦怠(けんたい)感、ゆううつ、イライラがMAX。睡眠を十分取っているはずなのに日中眠くなり、集中力が落ち、仕事でミスが増える。下腹部痛、微熱、頭痛に悩まされ、薬に頻繁に手が伸びる。ささいなことでカッとなって夫や娘と口げんかしたり、悲観的になって涙が止まらなくなったり……。
PMSは、飼いならせない獣が体の中で暴れ回っているかのよう。ところが、いったん生理が始まると、何ごともなかったかのようにスッキリ。私は、何ごとにもわりと鈍感なタイプだと思っていましたが、体内のホルモン変動には敏感だったようです。
PMSになると、お風呂やマッサージに通う回数が増えました。そのほか、ヨガ、アロマセラピー、アーユルヴェーダ、漢方、鍼灸、青汁、スムージー、呼吸法……。本やネットで調べては、健康法を手当たり次第に試しました。
果ては、家族を置いて、北インドのガンジス川沿いの町、リシケシまで行って、ヨガ修業をしたこともあります。かつて、かのビートルズが滞在したことで有名なヨガの聖地です。
その頃の自分は、お金を稼ぐために働き、働いて疲れをため、疲れを取り除くためにセルフケアにお金を使い、お金がなくなったからまた働く、というおかしな循環に陥っていました。
あるとき、漢方薬局のカウンセラーからこう言われました。
「毎日午後出勤、寝るのが夜中12時過ぎ、お酒もほぼ毎日ですか。う~ん、まずはその生活を変えないと体質改善は難しいですね。大事なのは食生活、運動、睡眠。毎晩10時~2時の間には寝るようにしてくださいね」
それができていたら、わざわざインドの山奥にまで行かずに済んだでしょう。
40代、まさかの…
40歳を過ぎて、夜勤から日勤の職場に異動。しかし、自己流の健康法ではPMSによる不調にどうにも耐えられなくなり、ようやく近所の婦人科クリニックの扉をたたきました。
もっと早く行けばよかったのに、なぜ躊躇(ちゅうちょ)していたのか。それは「病院に行くのは、我慢できないぐらい重くなってから」という間違ったイメージがあったからです。若い女性たちに声を大にして伝えたい。お気に入りの美容室やレストランを見つける感覚で、「かかりつけの婦人科」を見つけることは、ものすごく大切です!
初めて通ったクリニックには、有名な産院出身のベテラン女性医師がいました。一見、無愛想でぶっきらぼうな先生でしたが、通ううちに親しくなりました。
「先生、私、PMSを通り越して更年期になりかけているのかも。念のため調べてください」と申し出て、女性ホルモンの一つ、エストロゲンの濃度を診てもらうための血液検査を受けました。
しかし、「数値的にはそれほど下がっていません。更年期はまだ先でしょう」とのこと。婦人科系の不定愁訴(しゅうそ)に効くといわれる定番の漢方薬を、複数処方してもらいました。先生には「きっとお仕事が忙しすぎるのよ。もう少しゆっくりできるといいのにね」と、ねぎらわれました。
クリニックに1年ほど通ったでしょうか。41歳のあるとき、毎月規則正しく来ていた生理がふっと、ひと月飛びました。「ややっ、ついに更年期が来たか……?」。念のため妊娠検査薬を使ってみると、これがまさかの陽性。自分でも腰を抜かすほど驚きました。
あわててクリニックに駆け込むと、先生は私の顔を見て、また更年期の相談に来たな、と思ったようでした。
「すみません、今月生理が来なくて……。どうも妊娠したみたいです……」
「えっ?」
その瞬間、先生が驚いて椅子からずり落ちそうになったのを、私は見逃しませんでした。
診察の結果、妊娠を確認。「7週目、妊娠2カ月です。おめでとう。あら、おめでとう、って言っていいのよね?」と先生。
「……はい、迷いましたが産むことにします。この年で大丈夫でしょうか?」
「高齢だから、体に気をつけて頑張って。これで人生変わっちゃうかもね」
いやいや、子どもを一人産んだぐらいで人生変わるもんか……。口には出しませんでしたが、当時の私の率直な感想です。一人目の出産から12年ぶり、更年期デビューを覚悟していた私は、42歳で出産することになりました。
文=朝日新聞社 山口真矢子
(写真はイメージです)
- 山口 真矢子
- 朝日新聞社で雑誌編集、新聞編集、学校向け教育事業などを担当。現在は新聞の広告編成を担当。2児の母。
「更年期のストレス発散に、ラテン打楽器のコンガを始めました」
山口真矢子さんの「AGサポーターコラム」バックナンバーです。
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