Aging Gracefully 勉強会〈前編〉
大沢真知子さん「自分軸を持って生きよう」
女性管理職が悩みを分かち合い、輝くために
Special Project report ヘルスケア ハウツー 更年期 ライフスタイル キャリア 学び
[ 23.03.08 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」による「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代のAG世代の女性たちを応援するために、企業向けの勉強会や一般の方向けのセミナーなど、さまざまな活動を展開しています。
2月3日に「女性管理職、どうすれば? ~悩みを分かち合い、もっと輝くために~」と題した企業向け勉強会を開きました。リアルとオンラインのハイブリッド方式で、約140人が参加。第1部は、大沢真知子・日本女子大学名誉教授(労働経済学)が基調講演を行いました。
基調講演のテーマは「自分軸を持って生きる」。自分軸を持つとは、自分の中に判断や行動の基準を置くこと、また他人の価値観も認めて尊重すること。冒頭、大沢さんはそのように、管理職としての心構えを挙げました。
「自分の価値観を大切にする。相手の意見も尊重し、違いや齟齬(そご)があるならばしっかり相手と向き合ってとことん話し合う。管理職というキャリアであれば、そうした考え方が大切だろうと思います」
仕事で成果を出しながら豊かに生きるためにどうしたらいいのでしょうか。
「それは、仕事、健康、人間関係、社会に貢献するという四つの領域を意識しながら、生きることだと思います。とはいってもその領域ごとの時間の配分は、個人の違いもありますし、ライフステージによっても異なります」
大沢さんはここで「ワーク・ライフ・シナジー」という考え方を紹介しました。
「重要なのは、ライフを充実させることがワークにも良い影響を与えるということ。このシナジー効果に気づいていない人が多いように感じます」
ここから話題は、労働市場と社会の変化へ。第3次産業が発達し、サービス経済化が進んだ国では、女性の就業率が上がる一方、高学歴化が進み、キャリアを優先して出産を遅らせるケースが増加。やがて、出生率は下がります。
就業する女性、管理職の女性が増えると、結婚の必要性も薄れてくると、大沢さんは指摘します。
「日本の女性はかつて、いわゆる結婚適齢期になれば仕事を辞めて専業主婦となるケースが多かった。昔は女性にとって結婚はマストであったことが、少しずつ人生のチョイス(選択)の一つになっているのです」
しかし、働く女性の環境は、決して良いわけではありません。
管理職に就く女性は増えてきていますが、2022年の日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中116位。先進国の中では最低のレベルです。また日本では、自発的に離職する女性の割合がアメリカやドイツより高いことを示す調査結果もあります。
「日本の女性は結婚や育児で退職するので管理職が少ないと言われますが、大卒女性が離職する主な理由は、アメリカは育児や介護、日本は仕事への不満や行き詰まり感が多い」と大沢さんは分析します。
日本では、制度上の問題もあります。例えば、パートで働く女性たちの「130万円の壁」。世帯主に扶養されている人の年収が130万円を超えると、医療や年金の保険料を納めなければいけないという制度です。負担を避けるためにわざと勤務時間を短く抑えるケースがあり、女性の働き方を制限する要因と言われています。
「(既婚)女性が働くことを社会が抑制するような仕組みを導入しながら、同時に女性の活躍を推進してきたという矛盾がある」と大沢さん。会期中の今国会では、岸田文雄首相が130万円の壁について対応を検討すると述べていて、その動向が注目されています。
現在、終身雇用の時代ではなくなり、女性の転職者も増えてきました。
これからの管理職の働き方について、大沢さんは語りました。
「さまざまな環境に身を置いて、いろんな経験をしながら自分らしいキャリアを作り上げていく。それが今の40代50代、Aging Gracefullyを目指す女性管理職のあり方ではないのかな、と考えます」
後編は、第2部のディスカッションの模様を紹介します。
3月15日(水)に公開予定です。
◆勉強会の動画をアーカイブ配信しています。
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクト 坂井浩和
写真=朝日新聞社 瀧澤文那
画像制作=朝日新聞社 金子裕也
- Aging Gracefully 勉強会「女性管理職、どうすれば? ~悩みを分かち合い、もっと輝くために~」
2月3日(金)18:30~20:00 朝日新聞東京本社&Zoomウェビナー - ◇第1部 基調講演「自分軸を持って生きる」
大沢真知子さん(日本女子大学名誉教授〈労働経済学〉) - ◇第2部 パネルディスカッション
大沢真知子さん
西山和枝さん(大塚製薬株式会社 女性の健康推進プロジェクトリーダー)
司会:坂本真子(朝日新聞社Aging Gracefullyプロジェクトリーダー)
- 大沢 真知子(おおさわ まちこ)さん
日本女子大学名誉教授(労働経済学)。
南イリノイ大学経済学研究科博士課程修了、経済学博士。コロンビア大学社会科学研究センター助手、シカゴ大学ヒューレットフェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、日本労働協会(現日本労働研究・研修機構)研究員、亜細亜大学経済学部助教授・教授を経て1996年より日本女子大学教授。日本女子大学の「現代女性キャリア研究所」所長、内閣府男女共同参画会議の専門調査会委員、厚生労働省のパートタイム労働研究会委員、内閣府の仕事と生活の調和連携推進・評価部会委員なども務めた。
近著に『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社)、『なぜ女性管理職は少ないのか』(青弓社)などがある。
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