Aging Gracefullyアンバサダー
無限の可能性求め、新しいことに恐れず挑戦
観月ありささん「未来のため、今を大切に」
Special ライフスタイル キャリア
[ 23.04.27 ]
Aging Gracefullyプロジェクトは、2023年度アンバサダーとして、AG世代で俳優の観月ありささん(46)をお迎えしました。
観月さんは俳優や歌手として幅広く活躍する中で、連続テレビドラマで30年連続主演という記録を持ち、近年は舞台にも力を入れています。40代に入って変わったこと、日々感じていることなどを聞きました。
「自分のペースでできるように」
――Aging Gracefullyは40代、50代女性の生き方を応援するプロジェクトです。観月さんは40代に入って生き方などに変化はありましたか?
10代から30代まではとにかくガーッと働いてきて、現場でプレッシャーを感じたり、これは失敗できないと思ったりするようなことがいろいろあった時期を経て、40代は自分のペースでお仕事ができるようになりました。自然なスタンスでとても楽しく、ハッピーにお仕事ができるようになってきたな、と思います。
30代で舞台や時代劇をやり始めたことが、一つの転換期だったのかもしれません。新しいことに挑戦するのはとても楽しかったですし、自分の良い部分も悪い部分もよく見えるようになって、それがお仕事でも発揮できるようになり、バランスが取れるようになってきたと感じています。戸惑うことが少なくなって、新しいことにチャレンジしたいな、という感覚がより強くなったかもしれないですね。
――30代後半から座長公演を始めました。
いろいろな方を呼んで一緒にお芝居をしたり歌ったり、新しいことに恐れずチャレンジするようになりました。まだまだ学ぶことはたくさんあるし、不完全な部分もたくさんあります。年齢を重ねて気づけることは本当に多いと思うんです。うまくいかないことがあったとしても、経験値を積むという意味で学ぶことが多いですし、一生かかっても満足することはないかもしれないと思いつつ、毎回お仕事に挑んでいます。
――仕事との向き合い方に変化はありましたか?
あまり変わらないかも。とにかく目の前にあることをがむしゃらにクリアしていこうと思っています。最近は「人生100年時代」と言われるし、将来のことを考えがちですけど、極端に言ったら明日何があるかわからないじゃないですか。だから、今を良くしたいといつも考えています。
――今を大切にする、ということですね。
今が良くなければ、楽しい未来はないと思うんですよ。良い未来を送るためにも今が肝心。今を大切にしなければ、と思うんです。だから、そのときの自分の気持ちや今の気分を大切にして過ごしたいと思います。
とはいえ、40代にはホルモンバランスの変化などもあって、なんとなく気持ちがふさぐとか、天気一つで左右されることもありますよね。年齢はみんな平等に重ねていくものなので、それをネガティブにとらえると、ネガティブなことばかりになってしまうのが嫌なんです。だから、体調が悪いときは「今日は体調が悪い」と普通に言います。そういうことを隠さずに言うのも大事だと思うし、ネタのようにとらえて過ごす方が楽しいかな、と。10代、20代、30代よりも繊細に、自分の心や体とうまく向き合っていきたいと思っています。
「適度に向き合うぐらいがちょうどいい」
――健康について、以前より意識するようになりましたか?
健康は重視するようになりましたね。昔はボクサーみたいに結構過酷なダイエットをしていた時期もありました。私たちのようなお仕事は「太った」「やせた」と言われがちなので、10代後半ぐらいから30代前半までは、スピードを出して40分走って追い込んで、それでも足りなくてジムでエクササイズをやって、一日に何時間動いているんだろうというほど運動をしていました。ここで食べたらカロリーを余計摂取してしまうからと、夜ごはんを抜くこともよくありました。
でも、ダイエットをずっと続けていると疲れるんです。年齢的にも自分の気持ちの上でも、ちょっと甘やかしてもいいかな、と思うようになって、体との向き合い方もちょっとゆるくなったかもしれないですね。昔みたいなきつい運動もできなくなってきているので、効率よく適度にソフトな運動をしながら、食べたいものを食べる。私はお酒も好きなので、自分の気持ちのおもむくままに飲みたいものを飲んで食べたいものを食べて、それなりに健康的に運動をする生活です。
――最近はどんな運動をしていますか?
ピラティスとか体幹トレーニングをすることが多いですけど、撮影に入ると車移動で歩かないので、有酸素運動が足りなくなるじゃないですか。だから、ゆるやかに歩くようにしています。家でテレビを見ながら、ルームランナーに傾斜角度をつけて長く歩きます。ただし、あまり無理はしません。前に一度、やりすぎて疲労骨折したことがあって。アスリートみたいですよね。適度に向き合ってやるぐらいがちょうどいいのかな、と最近は思っています。昔は体力がありすぎたんでしょうけど、ようやく普通になってきたのかな、と感じています。
「ルーティンを決めない強さ」
――気分転換には、どんなことをしていますか?
例えば、仕事でストレスを感じたら友達と会って、ギャーッとしゃべります。大人になると友達を作りづらいと言いますよね。自分の中に殻ができるとか、大人になって利害関係を考えすぎるとか、そういうことで作りづらくなるかもしれないけど、何歳になっても寄り添える人はいると思うんです。何かひとつ趣味を持ったら、同じ趣味で語り合える友達がきっといるだろうし、ちょっと環境が変われば、そこで仲良くなれる人がいると思うので、柔軟に考えて新しい友達を作っていくといいんじゃないかなと思います。
私も、若くないからだめとか、若い人とは接しづらいとか、年齢にとらわれてしまうことがありました。でもそれは自分の中の固定観念であって、若い世代の人たちとも仲良くなれますし、自分の殻を取っ払ってあげることが大事なんですよね。人はどうしても年齢とともに、自分はこうでなければいけないと思ったり、生活の中でルーティンを決めたりするじゃないですか。それが柔軟性をなくしている気がするんです。
――観月さんはルーティンを決めないんですね。
私ね、あんまり作らないんですよ。ルーティンを作ると縛られるじゃないですか。毎日同じことをしなくちゃいけない、という気持ちになるのがだめなんです。例えば健康のために朝起きたら白湯を飲むとか、朝ごはんは絶対これを食べるとか、決めてしまうと私はつらいので。この仕事だと、毎日同じ時間に家に帰ることはできないし、毎回違う現場にいるし、これが変わると絶対に無理、というものを作っちゃうと対応しきれなくなるんです。だから、あえて私は決めないのかもしれません。
決めない強さってあると思うんです。こういう場所じゃないといけないとか、きれいじゃなきゃいけないとか、そう思って慣れてしまうと弱くなる気がするし、そのときどきで対応して、健康を損なわない程度に自由に過ごすのがいいのかな、と思っています。何時に寝なきゃいけないとか、そういうことも決めません。お休みの日は寝たいだけ寝ます。
――睡眠時間はどれぐらいですか?
ドラマの撮影は朝が早いので、4時や5時に起きます。もちろんたくさん寝たいですけど、何時間寝たいと言って眠れるような職業でもないので、あまり決めないですね。お休みになると、常に時差ボケみたいな生活をしています。早く起きてみたり、遅く起きてみたり、夜中まで起きてみたり。
――そこを決めないのが観月さんらしさなんですね。
ルーティンや習慣があって、しっかりした生活を送る方が健康にいいし、正しい生活の仕方かもしれないですけど、あえてそういう生活をしないのも、自由気ままに生きている感じで、私には合っているかなと思っています。
「自分という人間を再確認して」
――40代、50代は一般的に、家族の中では子育てや介護で考えることが増えたり、仕事で重責を担ったり、体調にも変化があったりと、岐路に立って悩む人が多い年代です。
悩みの多い年頃ですよね。私は、自分が楽しいと思える時間をなるべく作ることや、自分という人間を改めて再確認することが大事なのかなと思っています。
私は2021年に歌手デビュー30周年を迎えて、自分の若い頃の映像や若いときに話したインタビューの内容を振り返る機会が結構あったんですね。20代の私はこんなことを考えていたのかと振り返って、まだまだ頑張らなきゃ、と昔の自分に背中を押されるように感じました。若いときに何を悩んでいたかを思い出すことで、今の自分のスキルの高さに改めて気づくこともあります。子育てや介護に追われて忘れている自分の一面を、記憶をたどることで少しでも取り戻すことができたらいいですよね。
先のことばかりを考えて心配するよりは、今の自分を大切にして、自分の今の気持ちや体力と向き合って、自分が今幸せだと思える時間をいかに持てるかが大事だと思っています。それが家族との時間かもしれないし、一人でテレビを見ている時間かもしれないし、友達と会ってお酒を飲みながらしゃべる時間かもしれない。いろんな悩みがあっても吹き飛ぶような楽しい時間を持てることが、生活を充実させる、豊かにすることなのかなと感じています。
――これから力を入れたいことはありますか?
歌とお芝居は両方とも不可欠なもので、この先も両方バランスよくやっていきたいな、と思います。舞台の演出をしたり、映画を撮ったりという、演出、作る側にも興味があります。何かをデザインすることや、空間をプロデュースすることも含めて物作りは楽しいので。
誰かを演出してみたいという思いもあります。自分がやることはなんとなく想像がつくんですけど、自分じゃない人が表現するとどうなるんだろうということにすごく興味があるんです。以前は自分のことだけで手いっぱいでしたけど、経験値も上がってきているので、自分じゃない第三者のために何かをしてみたいと思いますね。
――50代になった自分について考えることはありますか?
あまり先のことは考えない方ですけど、50代で輝いていらっしゃる方は周りにいっぱいいるし、50歳になったらなったで、きっとまた何か違うもの見つけている気がします。今よりも体力は落ちているだろうから、新しい趣味を見つけるかもしれない。突如違うものに目覚めて、何か全然違うことをやっているかもしれないし、そんな無限の可能性があるんじゃないかと思っています。
トップス1万7930円(リネイヴ/オンワード樫山) ピアス1万9800円(ジュエッテ)
- 観月ありさ(みづき・ありさ)さん
- 俳優・歌手。1976年12月5日生まれ、東京都出身。
4歳から子役モデルとして活躍。1991年「伝説の少女」で歌手デビュー、日本レコード大賞新人賞を受賞。
1992年「放課後」で連続テレビドラマ初主演以降、30年連続主演記録を樹立。
代表作に「ナースのお仕事」シリーズ、「鬼嫁日記」シリーズなど。
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクトリーダー 坂本真子
写真=品田裕美撮影
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