トップ / 雑誌カバー / これから、もっと旅をしたい。自分の中の「普通」から脱け出すために。

これから、もっと旅をしたい。
自分の中の「普通」から脱け出すために。

[ 20.03.09 ]

by GLOW

常に自分を刺激し、新しい風を招き入れてくれるもの――女優・板谷由夏さんにとって、それは「映画」。
俳優として出演すること、そこで人や物事と出会うことすべてが、大人時代を生きるヒントと、心を前に向かわせる原動力を授けてくれるといいます。

あの頃も、今も。映画はいつも
新しい発見を与えてくれる

 板谷由夏さんといえば、俳優としてはもちろん、BS放送で映画紹介番組のナビゲーターを務めるほど映画通としても知られる存在。自身が手がけるファッションブランド「SINME」のアイデアを練るときも、映画が刺激材料になるという。

「とくに70年代が舞台の洋画だったり、その時代を描いた作品だったりは、女性のファッションを見てよく参考にしていますね。素敵だなぁと思ったシーンをスマホで撮って、『こんなお洋服なら、こういうふうにアレンジしたら大人っぽいかな?』『ここにギャザーを入れてみたら』なんて考えたりして。洋服の流行は必ずまた巡ってくるものですから、すごく勉強にもなります」

 高校生の頃から筋金入りの古着好き。とくにヨーロッパの、エレガントなアイテムに魅了されてきた。

「当時は軍ものやTシャツが流行っていたんですが、私は襟を詰めたブラウスとか、たっぷりしたパフスリーブのシャツとか……。今も、けっこう取ってあるんですよ。昔のディオールのドレスや、サンローランのシューズ。もちろん、着られないし、履けないですけど(笑)。美しいから、誰にもあげたくない。大事な、宝物なんです」

ニュアンス違いの素材を重ねて「今」のピンクを着こなそう
「自分だと強いピンクを選びそうだけど、ふんわり甘いピンクも新鮮」と板谷さん。コート25万円、ボウタイブラウス7万6000円、スカート23万円(すべてマディソンブルー) トップス2万4000円(シンメ/チェルシーフィルムズ) ピアス18万円(スーリヤ/パラグラフ)

自分は何を選ぶのか?
作品と、人と出会って考えた

 宝石のような啓示をもたらすだけでなく、俳優として関わる映画は、ハッとさせられる発見や人との出会いのチャンスでもある。2月7日から公開中の映画『37seconds(サーティーセブンセカンズ)』は、出生時に37秒間、脳に酸素が行かなかったことで脳性麻痺となった若い女性の成長物語。板谷さんは、漫画家を目指す主人公に自立のきっかけを与える大人の女性のひとり、雑誌編集長役を演じている。

「障がいを乗り越える女性の物語ではあるんですが、障がいがあるなしにかかわらず、どういうふうに人生を歩んでいくか、自分は何を選んでいくのか?ということを、見る側に投げかける作品。自分が出演しているかどうかに関係なく、一観客として、すごくいい映画だと思いました」

 「それに、この映画を撮った監督のHIKARIさん! この方が、本当に最高なんです。新しく出会った人でこれほど意気投合した人は久しぶりだなぁと。この年齢になっても、こんなふうに気持ちをパカンと割って話し合える人に出会える、そのこと自体がうれしくて」

ロマンティックなチュールをベージュ&レモンイエローで
「乙女心を刺激される!」と板谷さんも絶賛した、ボリュームのあるベージュのチュールドレスからレモンイエローをのぞかせて。ドレス5万6000円(チャンス/H3O ファッションビュロー) タートルトップス1万8000円(キャバン/キャバン 代官山店) スカート3万7000円(リト/THE WALL SHOWROOM) シューズ2万6000円(ギャルリー・ヴィー/ギャルリー・ヴィー 丸の内店) ピアス18万円(片耳)、ブレスレット22万円、リング18万円(すべてシンメ/チェルシーフィルムズ)

「こうあるべき」って本当にそうなの?
常に自分に問いかけたい

 HIKARIさんは板谷さんと同い年。アメリカ西海岸をベースに意欲的に作品制作を行っており、『37seconds』をはじめ多くの作品が全世界で高く評価されている。何より、板谷さんが打たれたのは、素直さと鋭さを併せ持った人間性の豊かさ。

「16、17歳の頃から海外に出ている彼女には、固定観念のようなものがないんです。ずっと日本に暮らしている私は、何かがあったとき、これはこうあるべきだ、こういうものなんだろうと、『これが普通』という考え方を優先し、疑問を感じてもそれに蓋をしてしまいます。でも彼女は、そんなときに『それ、変やで』ということをビシッと言える勇気を持っているし、そう言ってもいいんだと思わせてくれる自由さがあって。ついステレオタイプに傾きがちな私の頭を、グシャッ!と揺さぶってくれるんです」

 「自分でも凝り固まることが嫌で、なるべくそうなりたくないと思っていて、ときどき子どもたちがそれを打ち破ってくれるんですが、年齢を重ねていくと、大人ってどうしても……。でも、外の世界を見てきた彼女のような人に出会うと、何か、開かれる部分がありますよね」

 バイタリティに裏打ちされた、勇気と強さ。彼女から受けたインパクトは、板谷さんの目を、さらに外の世界に向かわせている。

「 50代、60代は旅をしたいんですよね。カルチャーショックを受ける事柄に触れて、そしてそれを、洋服作りとはまた別の何かの形にしたい。それが写真なのか、文章なのか、まだわからないんですが……でも、なんとなくここ(胸)のあたりで温めています。他の国の文化や歴史にも、もちろんまだ知らない日本のことにも、もっともっと目を向けたい。それが、これからさらに大人に向かっていくうえでの、私の憧れであり夢であり、目標なのかな」

優しい、でも甘くない。大人色のチェックに注目
ピンクとグリーンの細かなチェックのセットアップは、板谷さんが生地にひと目惚れして作ったという「SINME」の新作。コート19万5000円(プラン C/パラグラフ) ジャケット4万8000円、パンツ3万8000円、ニット2万2000円、3ピースピアス20万円(片耳)、ドロップピアス10万円(片耳)(すべてシンメ/チェルシーフィルムズ) シューズ7万3000円(クレジュリー/ヒラオインク)

 

出典:「GLOW」2020年3月号
撮影=中川真人〈CUBISM〉 スタイリング=酒井美方子 メイク=MICHIRU〈3rd〉 ヘア=TOMO TAMURA〈Perle〉 文=大谷道子

板谷 由夏 Yuka Itaya
1975年福岡県生まれ。99年、映画『avec mon mari』で女優デビュー。ドラマ『やすらぎの刻〜道』はテレビ朝日系列で月〜金曜12時30分より好評放送中。映画『37seconds』は全国で公開中、Netflixドラマ『FOLLOWERS』は2/27より全世界190カ国に配信。
  • SHARE
  • facebookでシェアする
  • Line It

pagetop