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物質ではなく、心が満たされること。
「豊かさ」の意味を、今こそ再確認。

[ 20.10.05 ]

by GLOW

この先のためにも、なくてはならないもの。多ければ多いほどありがたいけれど、でも、それだけでいいかと言われると、ちょっと疑問……。
大人年代に入り、誰もが再認識を迫られる「お金」との付き合い方。俳優・天海祐希さんも、出演作を通して、そして現在のコロナ禍の中で、あらためて考えさせられたと言います。

お金は何のためにある?
大人だから考えさせられる、真の価値

大人世代を、そしてその先に迎える人生円熟の時期を明るくポジティブに生きていくために、できるだけあったほうがいいもの……。
そのひとつが〝お金〟。昨年、突如ニュースの見出しに躍り出てAging Gracefully世代の心を波立たせた、いわゆる「老後2000万円問題」の衝撃は、まだ生々しく記憶に残る。

天海祐希さんが主演する新作映画『老後の資金がありません!』(2021年公開予定)のテーマも、ずばり大人とお金。もちろん天海さんにとっても、大きな関心事ではある。

「体力、気力、生きがい、そして生活の基盤としてのお金……。これからのために蓄えておかなければならないものはいろいろあって、それぞれ気にかけていましたけれど、他のものは明確に数値化できないじゃないですか。それが、お金については実際の数字としてバーン!と表れたものだから、『うわっ』と思いましたよね。しかも、結構な額! さらにそれでは足りないとまで言われると、そりゃあ恐怖を感じます」

物語の中で天海さんが演じるのは、平凡な家庭の主婦・篤子。義父の急逝、突然の娘の結婚宣言と、家族に降りかかるさまざまなアクシデントで目減りする預金額に不安を募らせる中、夫婦揃って失業の憂き目にも遭う。シビアな役どころに向き合いながら、お金というものがまとっている特殊な意味について、あらためて考えさせられたという。

「ちっとも悪いことではないはずなのに、お金の話をすることって、なぜかはばかられるんですよね。『そういうことを言うのは、さもしい』というように。それってなぜなんだろうなぁ、と……。お金は、もちろん足りないより足りているほうがいい。自分の生活が豊かになるという意味だけでなく、それがあることによって勇気づけられたりもするし、誰かを助けることだってできる。そういう、大切な力を持っているものだと思っています」

精神的に満たされた環境が
今の自分の根っこを作った

ご自身としては準備万端? と問うと、「できている……というよりは、わりとアバウトな感じ?」と苦笑。しかし、幼少時から堅実な性質ではあるようだ。

「子どもの頃から、なぜか無駄遣いのできない性格だったんですよ。両親と買い物に行って、どれでも好きなものを選んでいいよと言われても『これがいい』と言えなかったり、自分で使っていいお小遣いがあったとしても、あったならあっただけ使おうということができなくて……。両親が働く姿を見ていたから、『お金は大切なもの』という気持ちが強く根っこにあったのかもしれませんね。それに、明治生まれの祖母がなんでも自分で手作りしていたり、穴の開いた靴下ひとつにしても大事に繕っていたりした様子も、身近で見て知っていましたから」

金銭的、物質的に満たされていることだけが幸せではない質実な家庭で、天海さんはそんな信念を育んだ。折しものコロナ禍で外出がままならない中、天海さんは家族や身近な人を気遣いながら、そこから与えられてきたものについて振り返り、思いを馳せていたという。

「飛び抜けて豊かというわけではない、ごく一般的な家庭でしたが、家族は仲がよかったですし、ご近所の方々の顔もよく見えていた。正しい愛情をもらって、つくづく自分は心が満たされる環境で過ごさせてもらっていたんだなぁと、あらためてありがたく思いましたね」

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当たり前のことを、安全に、
皆でシェアできる日まで

身近な人と気軽に会うことが叶わないなど、普通にできていたことひとつひとつに熟慮と判断を求められる日々。この状態がいつまで続くかは、残念ながら現時点では誰にもわからない。が、それでも天海さんは「希望はありますよ」と語る。

「思いをシェアする方法はあるし、人間には知恵があるから工夫もできる。ウイルスなんかに負けていられないですから。本当に」

さらにその思いを強くしたのは、緊急事態宣言が解かれたのち、久しぶりに足を運んだ劇場でのこと。
「ある舞台を拝見して、カーテンコールに登場した俳優たちを見て、『ああ、皆、ここで戦ってるんだ!』と思ったら、同じ仕事をする人間としてすごく誇らしい気持ちになったし、感動して、なんだかすごく泣けてしまって……。ともに劇場に足を運んだ友人と作品の感想を語り合う時間を持てたことも、こんなに豊かで幸せなことだったんだなと感じました。
世の中にはまだまだご苦労をなさっている方がたくさんいらっしゃると思いますが、その方たちのお仕事に、そして今まで当たり前だと思ってきた多くのことに感謝しつつ、安心してまた皆さんにお会いできる日が一日も早く来るよう、願っています」

出典:「GLOW」2020年10月号
撮影=YUJI TAKEUCHI〈BALLPARK〉 スタイリング=大沼こずえ〈eleven.〉 ヘア&メイク=林 智子 取材・文=大谷道子

天海 祐希 Yuki Amami
1967年東京生まれ。最近の出演作にドラマ『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』、映画『最高の人生の見つけ方』、舞台『贋作・桜の森の満開の下』など。映画『老後の資金がありません!』は2021年公開。
©2020映画『老後の資金がありません!』製作委員会
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