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生きざまは、自分で決める。
先輩たちに教わったことを、私なりに

[ 20.11.24 ]

by GLOW

20代、30代、40代。まばゆい活躍のあとには、
その輝きをさらに増幅させる50代の進展が待っていました。
現在、舞台や映画のプロデューサーとしても腕をふるう小泉今日子さん。
行動力と勇気の源には、多くの先輩たちから受けた言葉とメッセージが。

50になったら、行動する。
背中を押してくれたのは、先輩たちの言葉

歌手として、俳優として、気力体力ともに充実した30代、40代を過ごした小泉今日子さん。50代に入り、自らの環境を変えてプロデューサー業に専念すると宣言したときは、多くの人々が驚いた。
「ずっとやろう、やろうと思って、周囲にも言っていたことはあったんですよね。でも、40歳を過ぎて、ああ、人生折り返しなんだなと思ったとき、急に残り時間のことが気になりはじめたんです。このままやらないで終わっちゃうのは、いかにもカッコ悪いぞと」

50になったらーそれは長年、小泉さんが温めていた〝転機〟の号令。それに向けての助走のひとつが、月刊誌『GLOW』誌上で行った対談連載「小泉放談」(2015年10月号〜17年2月号、同年4月号〜18年1月号掲載)だったのかもしれない。俳優、歌手、作家、漫画家、モデル、学者、政治家など、職業人として輝く先輩たちに50代からの生き方を尋ねた対話は、同世代の女性たちを中心に大きな反響を得た。

「いいお話を聞かせていただきました。こんな機会でもなければ、なかなか会えない方にもたくさん会えて……。50になったら絶対やろう! と思ってはいたものの、やっぱり不安もあったし、それなりに心配もしていたんですが、先輩方とお話をしたことで、自分の心の中の枝が広がり、太く、強くなっていった感じ。だから、実際に行動する瞬間はそんなに怖くなかったんです」

コート20万2000円(エムエム6 メゾン マルジェラ/エムエム6 メゾン マルジェラ オモテサンドウ) ピアス17万8000円(TASAKI)

ひときわ強く印象に残るのは、対談後の2018年9月に世を去った故・樹木希林さんとの対話。仕事のこと、生き方のこと、そして大人の恋愛のあり方と、樹木さんは小泉さんに、実に率直な言葉を投げかけた。

「対談場所はご自宅に近い場所だったんですが、希林さん、家で作ったお芋の煮っころがしを持ってきて『食べない?』っておっしゃったんですよね。ページに載せるお互いの写真を撮るときも、自分はどうでもいいんだと言いながら、私のことをかわいく撮ってくださろうとして……。希林さんは本当に多くの方にバトンを手渡して旅立たれた方で、私が受け取ったのはその中の、ほんの小さなひとつ。でも、実は対談の後に一度、お電話をいただいたことがあったんです」

トップス7万1000円、パンツ5万円、ブーツ7万9000円(すべてエムエム6 メゾン マルジェラ/エムエム6メゾン マルジェラ オモテサンドウ) ピアス17万8000円、リング22万5000円(ともにTASAKI)

思いやりとメッセージを手渡して。
樹木希林さんの「きれいな」旅立ち方

それは、対談からしばらく経ったある日の夜。自身の会社のデスクで仕事をしていた小泉さんがふと鳴った電話に応答すると、懐かしい声がした。
「ちょうど夕食どきの時間だったんですが、希林さんが『今、ご飯中じゃなかった?』と。大丈夫ですよ、どうしたんですかと尋ねたら、『何の話でもないんだけどさ、世間話でもしようと思って』って」

実際、何気ない話題であり、やりとりだった。電話の直前に亡くなった西城秀樹さんのこと、お互いの近況、仕事の様子。しかしその中に、小泉さんは、さりげなく織り込まれたメッセージを感じ取ったという。

「義理とか恩とか、そういうものはいつか返したほうがいいんじゃない? というような。もちろん、直接的な言葉ではなかったし、ちょうど事務所を辞めたあとだったから、私が勝手にそう感じただけだったのかもしれないんですけれど……。そして、あとで聞いて知ったんですが、希林さんは亡くなるまでの数ヶ月の間に、電話や会食を通じて、たくさんの人に言葉を伝えていたんだそうです。お通夜やお葬式のことも全部自分で決めていかれたと家族の方に伺ったし、ああ、周囲との関係もすっかりきれいにして旅立たれたんだな、と思いました」

ニット3万6000円、プリーツスカート(レイヤードのスカート付き)18万円(ともにアンダーカバー) ピアス24万6000円(TASAKI)

最後の瞬間まで、俳優として
人間として、自分らしくいられるように

すごいですよね、と小泉さん。樹木さんの潔さと、込められた深い思いやりはまたひとつ、これからに向けての示唆になった。
「これまで私は、女として、俳優として、人間としての〝生きざま〟というものは、あとからついてくるものだと思っていたんです。すべてを終えたあとに、他の人が見て判断するものだと。でも、希林さんのご様子を見ていて、最後の瞬間までひとつひとつ、自分で整えていくべきことでもあるのかな? という気がしましたね」

たとえば、いくつになってもおしゃれをして、ハイヒールでビシッと決めてカメラの前に立つのも、俳優として生きる女性のひとつのあり方。そして、手料理を挟んで後輩と向き合おうとするのもまた、人間としての姿勢なのだ。

「以前から、沢村貞子さんや高峰秀子さんの随筆を読んだりして、自分なりにそこから何かをキャッチしようとしてきましたが、いよいよこの先、どうしようか……と、あらためて考えるきっかけになりました。後の評価に委ねるだけでなく、自分が今、何をやっていくか。そんな主体的なあり方を、希林さんが示してくださっていたんじゃないかと思っています」

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出典:「GLOW」2020年12月号
撮影=TAKAKO NOEL スタイリング=青木千加子 ヘア&メイク=中野明海〈air notes〉 取材・文=大谷道子

小泉 今日子 Kyoko Koizumi
1966年神奈川県生まれ。82年、「私の16才」で歌手デビュー。その後、俳優としてテレビドラマ、映画、舞台に出演。プロデュース作に舞台『日の本一の大悪党』(演出、出演も)『名人長二』『またここか』『後家安とその妹』、イベント『asatte FORCE』、映画『ソワレ』、著書に『黄色いマンション 黒い猫』など。『小泉放談』は宝島社文庫より発売中。
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