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挑戦し続ける女性は美しい。
年齢を諦める言い訳にせず、進み続けたい

[ 21.04.12 ]

by GLOW

結婚を機に、オーストリアと日本、二つの国で暮らす中谷美紀さん。
ドイツ語と格闘しながらの新たな文化圏での生活は、まさに挑戦の連続です。
そんな未知なる冒険から生まれる驚きと発見が、自分の“伸びしろ”を広げていると言います。

私の身は“根無し草”のようなもの
自由でいたいから、二拠点生活を選んだ

2018年にドイツ人男性と結婚して、オーストリアと日本を行き来する中谷美紀さん。
20代の頃にはパリにアパートを借りて約8年間通った経験があり、ヨーロッパの暮らしには慣れているとはいえ、40才を超えて異文化の地に根を張って暮らすことは大変なことも多いはず。そんなふうに、外野は勝手に想像するが、ご本人にとっては願ったりかなったりだったよう。

「私の身は根無し草のようなもので、一定のコミュニティや場所に縛られることが苦手。いつも自由でいたいという思いがあり、二拠点生活を選びました。フランス語圏とドイツ語圏の暮らしは全く異なり、ままならないことばかりですが、好奇心を刺激されて未知の世界での冒険を楽しんでいます。言葉も半人前で、私のことなど知る人もいない地でぞんざいに扱われたり、何も期待されないことが気楽ですね(笑)」

2月に出版した書き下ろしの日記エッセイ『オーストリア滞在記』では、その暮らしぶりの一端を垣間見ることができる。2020年5月から7月にかけて、世界中が新型コロナウイルスでロックダウンされるなか、オーストリアのザルツブルクにある自宅での田舎暮らしを記している。
朝のルーティンや手料理、夫の家族やご近所との付き合いなど、日常の出来事を綴るなかでも、目を見張るのがドイツ語学習への意欲と努力。英語とフランス語を日常生活に困らない程度は話せる彼女が、毎日コツコツ学び続ける姿に感嘆するばかり。

「ドイツ語は40歳から学び始めて、文法の複雑さに何度も挫折しそうになりました。昨年はロックダウンでおいそれと外出もできないので、ドイツ語の学習に励もうと覚悟しました。自分が話せないと周りの人に迷惑をかけるから頑張ろうと思う一方で、完璧にできないと恥ずかしいと感じて話すのを躊躇してしまう“日本人らしい”自分もいて、なかなか思うようには捗(はかど)りません。ただ、ラジオのニュースの言葉が聞き取れたり、地元の方の会話の意味が分かって冗談が通じたり、手ごたえを感じると嬉しくて励みになります。なにより、一番の原動力は私の覗き見趣味といいますか、人の心を探りたい、人の気持ちを知りたいという悪癖につきますね。もちろん、サボりたいと思うこともありますよ。お昼寝が大好きなので、テキストを開いたまま寝てしまうことも(笑)」

オールインワン4万9000円(サヤカデイヴィス /ショールーム セッション) タンクトップ2万円(マディソンブルー/ミューズ ドゥ ドゥーズィエム クラスロッポンギ) ロングカーディガン2万円(アダワズ/ショールーム セッション) ミュール1万6000円(オデット エ オディール/オデット エ オディール新宿店) イヤーカフ1万8000円(ココシュニック) ロングチェーンネックレス6万6000円(マリハ/ショールームセッション) [左中指]パールリング9万2000円、[右薬指]スタッキングダイヤモンドリング4万8000円、ダイヤモンドスタッキングリング6万8000円、スタッキングリング3万9000円(すべてヒロタカ/ヒロタカ 表参道ヒルズ)

先々を見据えて辿り着いた
「葬式無用、戒名無用」の死生観

 さらに、話題はオーストリアの歴史や文化、体のメンテナンス、音楽や芸術、環境問題まで、様々な分野に広がっていく。彼女の探求心や美意識の高さが随所ににじみ、普段は語られることのない本音までもがこぼれる。最後は死生観にも及び、「葬式無用、戒名無用」と言い切るさっぱりとした態度と、40代にして先々まで見通していることに驚かされる。

「我ながら、なぜ、そんなことを書いてしまったんだろうと思います(苦笑)。意図したわけではなく、勝手に書き進んでしまって。振り返ってみれば、職業柄、役や作品を通して死について考えさせられることは多いですね。ある作品の準備で心臓外科の手術に立ち会った時に、自分が意識せずとも拍動を続ける心臓を見て、人間の生命の神秘に魅せられてしまいました。生きることの素晴らしさを感じたからこそ、逆に死を意識したのかもしれません。ただ、お葬式は面倒くさいというのは以前から感じていました。あちらを立てれば、こちらが立たず。しかも、自分が立ち合えればいいんですが、お任せした人たちが参列者の方々にどれだけ礼儀を尽くすことができるのかと思うと心配で死んでいられません(笑)」

“分かった気”で満足したら人生は退屈。
できない悔しさがあるから成長できる

冒険を楽しみ、思慮深く礼節を重んじる――そんな動と静の情熱を抱きながら、日々を心豊かに過ごす中谷さん。
著書を読み進めるほどに、年齢を重ねてもなお輝きを増しているのは、美しい心の有り様が映し出されているからだと気づかされる。そんな彼女が尊敬と憧れの想いを抱くのが、女優の草笛光子さんや夏木マリさん。

「現状に甘んじることなく、好奇心を失わず、常に新たなことに挑戦していらっしゃる。年齢を諦める理由になさらないところが本当に素敵で、自分なんてまだまだだなと感じます。私もお二人のように挑み続けていきたいです。そうした意味では、ドイツ語という目標を目の前に与えられ、子供のような気持ちで一から学ぶことは大きな挑戦です。苦しみもありますが、少しずつでも進んでいけることで、自分はまだ成長できる、伸びしろがあると感じられます。なにより、難しいので“分かった気”にならずに済みます。“分かった気”になって満足してしまうと、もうね、人生退屈してしまいますから。しかし、自分は知らないことだらけで、やるべきことがまだたくさんありますし、ドイツ語がうまく話せなくて子供に馬鹿にされたりすることも、いい刺激になっています(笑)」

出典:「GLOW」2021年4月号
撮影=伊藤彰紀<aosora> スタイリング=岡部美穂 ヘア&メイク=下田英里 取材・文=安田晴美

中谷 美紀 Miki Nakatani
1976年、東京都生まれ。女優として活躍する傍ら、『インド旅行記1~4』(2006)、『女心と秋の空』(2012/ともに幻冬舎)などエッセイ集、旅行記を執筆。2月に日記エッセイ『オーストリア滞在記』(幻冬舎)を刊行。
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