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本当に大切なのは、衣食住、そして遊び
コロナ禍の中であらためて考え、発見したこと

[ 21.07.05 ]

by GLOW

俳優として、歌手として、そしてエコロジカルなファッションやライフスタイルを提案する実業家として世の中に発信を続ける柴咲コウさん。
2020年春からのコロナ禍を受け、そして、40代という大人年代を迎える今、あらためて感じるのは「生活することの大切さ」。
心落ち着かない時代の中であらたに始めた暮らし方、その日々から発見したことついて伺いました。

「引越したがり」「片付けたがり」から
東京と北海道の2拠点生活へ

 新型コロナウイルスにより、誰もがライフスタイルの見直しを迫られた2020年から21年の現在。この間、柴咲コウさんは、感染拡大に揺れる東京で俳優の仕事を行いつつ、暮らしの変革に取り組んでいた。

「以前からオフの時は引きこもり気味だったので、コロナ禍の間はいつも通りという感じ(笑)。でも、家での時間を充実させたいという気持ちには、エンジンがかかりましたね。
 もともと片付けが好きなんですが、乱れた状態も好きなんです。とにかく、ずっと同じというのが嫌なので、模様替えも頻繁にするし。何かこう、『見直す』ということが好きなんでしょうね。
 住まいも、これまではコロコロ変えていて、1、2年に1回くらい引越しをしたり、短いときは半年くらいで変えていました。それに伴って断捨離にも励んでいたんですが、今は場所自体を変えるより、その中でいかに楽しむかということに重きを置けるようになれたかな」

 実はこの間、東京に加え、北海道にもうひとつ生活の拠点となる家を持った柴咲さん。自然豊かな森の中の家での落ち着いた暮らしぶりは、自身が主催するYouTubeの公式チャンネル「レトロワグラースch.」でも公開されている。
「木製のエコロジーハウスで、100年はきちんと生きる家を、3年くらいかけてのプロジェクトで作りました。今も、撮影の入っていない時間は、なるべく北海道で過ごすようにしています」

ワンピース4万2900円、ニットトップス1万2100円(ともにミ ヴァコンス) ピアス3万1000円(モダン ウィーヴィング/ショールーム セッション)

時短で切り詰めた先に、何がある?
手間暇かけて楽しむ豊かさを、あらためて

 北海道の家での暮らしは、曰く「心の充電」の時間。薪ストーブを焚いて、本を読んだり、地場の食材を料理したり。とくに、付近の森を散策し、じかに自然に触れることが大きなインスピレーションの元になっているという。

「自分の頭の中に思い描いている理想的な自然と体で感じる自然というのは、やはり明らかに違うんですよね。空気もそうだし、土を踏みしめる足の裏の感触も。冬は雪に埋もれていた地面が、春になって露わになるとものすごい生命力を発揮するんですが、そのサイクルをじかに感じ取れるというのは、やっぱりすごく豊かなことで……ひとりでいてもひとりじゃない、そんなふうに思えます」

 自然の中に身を置き、これまでの暮らし方に思いを馳せる時間は、柴咲さんにさまざまな示唆を与えた。そうして考えたことのひとつが、「結局、自分は何がしたいんだろう?」ということ。

「こんなに合理的で色々なものが簡単に手に入る世の中で、毎日、忙しく日々を過ごしていると、仕事も家事も時短時短時短……となるけれど、それをして自分はいったい何を目指しているんだろう?と。とくに、生きていく上でいちばん大切な衣食住、プラス、遊び。そうしたものを切り詰めて、結果、何が残るのかということについては、考えさせられましたね。
 私としては、その時間を十分、手間暇かけて楽しんだ方が、ずっと生きた心地がするし、充実しているなぁ、豊かだなぁと思えるんじゃないか、と。思えばコロナの自粛期間も、そうした思いをあらためて確認した時間になったと思います」

人とつながり、気持ちを共有する。
その循環から、新しい価値が生まれる

 自然の中で充電の時間を過ごした後、猛然と湧いてくるのは「アウトプットしたい!」という欲。演じること、歌うことはもちろん、そのエナジーは、自身のブランド「ミヴァコンス」での服作りや、「レトロワグラース」を拠点に行う、さまざま文化活動に向けられる。
 そのひとつが、公式YouTubeチャンネルで制作、発信されている、日本各地の国立公園を紹介する動画シリーズ「Sharing Trip」。

「日本にこれだけの自然や美しい国立公園があることを、日本国中、そして世界の人に知ってもらいたいと思って始めました。
 コロナ禍の現在は、自治体の方、その地域にお住まいの方に協力していただいて、撮ってもらった動画を編集してお届けしています。地域の方にとっても、適切な決まりの中で観光してもらうのは大歓迎だと思うので、そういった面でも手助けができればと」

 旺盛な柴咲さんのもとに、才能や意欲を持つ人が集まってくる。これもまた、よき循環だ。
「私自身は友だちも少ないし、人をつなげたりするのはぜんぜん得意じゃないんです。ただ、友だちの多い人と友だちになって、その人たちが人と人を結びつけてくれている……というだけで。
 個人的に親しくなるのは、職人系の方が多いですね。よく一緒に遊んでいるのは陶芸をやっている人なんですが、職人さんって多くは語らなくても、色々なものを発見して胸に秘めていて、それがあるとき、ポンと作品の形になって出てくるのがすごく面白い。『あ、あのとき、こんなことを考えてたんだ!』って」

 充電、そして暮らしの充実から生まれた発見と共感が循環し、日々を、人生を、ひいては世の中をも幸福にしていく。「静かな冬もいいんですが、北海道は、夏がすごく気持ちいいんです」と柴咲さん。今年の夏も、きっと多くの発見をし、新しいエナジーを育むことだろう。

出典:「GLOW」2021年7月号
撮影=長友善行 スタイリング=大沼こずえ〈eleven.〉 ヘア&メイク=川添カユミ〈ilumini〉 取材・文=大谷道子

柴咲 コウ Ko Shibasaki
1998年より俳優、歌手として活動。近年はエシカルなファッションブランド「ミヴァコンス」のプロデュースをはじめ、環境にフィットしたライフスタイルを提案する会社「レトロワグラース」を経営するなど、実業家としても手腕を発揮している。最近の出演作に、テレビドラマ『35歳の少女』、NHK連続テレビ小説『エール』など。吹き替えを務めたディズニー実写映画『クルエラ』が5/27より全国の映画館で、5/28より動画配信サービス「ディズニープラス プレミアアクセス」で公開中。YouTubeチャンネル「レトロワグラースch.」での発信もぜひチェックを。
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