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自分のこれから、そして、大切な人との関わり方。
映画は、いつでも人生を教えてくれる

[ 21.08.02 ]

by GLOW

これまでの自分の生き方を省み、そして未来を考える――ステイホーム期間中、誰もが少なからずそんな時間を過ごしたのではないでしょうか。
俳優・吉田羊さんにとって、そのきっかけを与えたもののひとつが「映画」。とくに親と子、大人と大人の関係性、人生の行き先、その終(しま)い方について、深い示唆を受けたといいます。

「生きるとは?」
大人だからより深く〝問いかけ〟が刺さる

 年明けから断続的に続く、緊急事態宣言発出下での日々。ともすると鬱々としがちだったその時間を、俳優・吉田羊さんは充電期間と捉え、前向きに過ごすよう心がけていた。

「ちょうど撮影を終えた時期でもあったので、緊急事態宣言前には映画館に通って映画を観ていました。多いときには、1日3本とか。昨年のステイホーム生活が始まってから、この機会に映画をなるべくたくさん観ておきたいなと在宅時には配信ものを」

 折しもこの春は、米・アカデミー賞の新受賞作の公開ラッシュ。作品賞を受賞した『ノマドランド』も、さっそく映画館のスクリーンで鑑賞した。

「泣きましたね。号泣! 終始静かで、淡々とノマドたちの人生が描かれるのですが、作意的演出がないからこそ、『生きる』というテーマがまっすぐに響いてきました。『自分はこの先、どう生きていったらいいんだろう?』『自分がいま手にしているものは、本当にこの先も大事にすべきか、はたまた手放すべきか』と、いちいち胸にこみ上げるものがありました。

 先日まで放送していたドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』もそうでしたが、大人はそれぞれに選択した人生があって、それがその人にとっての正解なんだけれど、『あれ? この選択でよかったのかな』と迷う瞬間って、きっと誰にもあるもので……。たとえ物語でも、自分の人生を重ねて『ああ、正解も不正解も未来にあるのだな。ならば清濁併せのみながら生きるしかない』と、気づきを与えてもらうことができる、大人のための作品だと思いました」

ブラウス6万4900円、パンツ7万5900円(ともにヌメロ ヴェントゥーノ/イザ) タンクトップ、サンダル(ともにスタイリスト私物) ユーズドのネックレス3万8500円、ユーズドのリング2万4200円(ともにジャンティーク) 

家族のあり方、その関係について
コロナ禍の今こそ考えたい

 そして、名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役でアカデミー主演男優賞を獲得した『ファーザー』(公開中)もまた、吉田さんの心を強く揺さぶった一作。

「予告編を観た段階で、『これは絶対観よう!』と決めていました。ちょうど父と娘の関係を描いたドラマに取り組んでいましたから、自然と目に飛び込んできたんでしょうね。アンソニー・ホプキンスの演技は素晴らしく、絶対に受賞するだろうなと思っていました。

 そういえばここのところ、気になって選ぶ映画には、家族やその老いをテーマにした作品が多かったように感じます。思えば、コロナ禍の今、家族とのお別れもままならない状態にいらっしゃる方も多い。だから自然と、介護や看取りといった家族との付き合い方に目がいくのかもしれないなぁ、と……。私自身も、まさに遠く離れた実家に親を持つひとりですから」

人と向き合うことは、その人の時間を尊重すること。
急がず、焦らず、あるがままに

 4年前に母を見送り、いまは実家で暮らす父のもとをきょうだいと交代で訪ねている吉田さん。離れていてもできるだけのことを、という気持ちは募るが、ときにそれが空回りするもどかしさも感じているという。

「実家に帰るたび、父が便利に暮らせるようにと、ついいろいろなものを買って持って行ったりするんですよね。でも、父にとってそれは馴染みのないものだから、結局使ってもらえなかったりする。こちらとしては『どうして?』と思うけれど、使えないものがあるのも父にとってはストレスなんでしょうね。

 亡くなった母の荷物もたくさん残っていて、それを私たちが『そろそろ整理しようか?』と、あれやこれやと取り出すんですが、そのたびに『これはいついつ、どこどこで買ったもので……』と思い出話が始まる。父の話を聞いていると、私たちの前にももう一度、母の姿が蘇ってくるので、それを聞くと結局『じゃあ、まだ置いておこうか』と。その繰り返しなんです」

 ふふ、と思い出して笑う吉田さん。人と向き合うことは、その人が過ごしてきた時間と向き合うこと。簡単に整理のつくものではないからこそ、愛おしいのだ。

「そうですね。だから年老いた親との関係って、子どもが親の面倒をみるというよりも、親には親の人生があって、その日常のペースや、親が大事にしているものを同じように大事にしていくことなのかもしれないな……って。

 これまで自立して過ごしてきた父としては、なるべく子どもの世話になりたくないようで、それが私たち子どもからすると少し寂しかったりもするんですが、この先、親子の関係ももしかしたら変わっていくかもしれないし。その時々の父を尊重して寄り添っていくことしかないんだろうと、今は思っています」

 急がず、焦らず、あるがままに――まずは物理的な距離を気兼ねなく縮められる日が1日でも早く来るように、と願わずにはいられない。


写真出典:「GLOW」2021年8月号
撮影=YUJI TAKEUCHI〈BALLPARK〉 スタイリング=宮澤敬子 ヘア&メイク=中野明海〈airnotes〉
取材・文=大谷道子 

吉田 羊 Yoh Yoshida
福岡県生まれ。最近の出演作にドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』、NHKよるドラ『きれいのくに』、連続ドラマW『コールドケース3〜真実の扉〜』など。また、大塚製薬「ポカリスエット」の夏CM「ポカリ母娘の『常夏娘2021』ダンスバージョン」にも注目。一緒に踊って、この夏を健やかに!
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