トップ / 雑誌カバー / 自分の歩みに、責任を持つ。大人は真に〝わがまま〟でいよう

自分の歩みに、責任を持つ。
大人は真に〝わがまま〟でいよう

[ 21.12.06 ]

by GLOW

いつでも伸び伸びと、自由でありたい――それは人生の喜びであり、永遠の願い。そうはいってもなかなかね……というときは、物語の中にいる人の姿を参考にしてもいいのでは?
公開中の新作映画『老後の資金がありません!』で主演を務めた天海祐希さんが触れたのは、オンでもオフでも自由な大人たちの姿。わがままに生きる醍醐味を味わえるのは、きっとこれから……です。

この人たち、奔放すぎる!
チャーミングな大人たちに囲まれて

夫婦2人で老後を豊かに過ごすには、最低2000万円の貯蓄が必要――誰もが戦慄した〝老後資金2000万円問題〟に振り回される大人たちの悲喜劇を描いた、天海祐希さんの主演映画『老後の資金がありません!』は、現実的な危機をモチーフにしていながら、とにかく楽しい。

その理由は何といっても、登場人物たちが活き活きしているから。天海さん演じる主婦・篤子の周りにいるのは、一癖も二癖もある魅力的な大人たちばかり。おおらかでちょっと頼りない夫(松重豊さん)、義父の急逝後、篤子夫妻と同居することになる浪費家の義母(草笛光子さん)をはじめとしたキャラクターたちの奔放な振る舞いに噴き出したり、あきれたり……。天海さんも、現場での様子を笑いながら振り返る。

「もうね、大変ですよ。キャラクターもそうですけど、演じる皆さんも自由だから。松重さんはいい感じでフワーッといてくださるし、草笛さんはまるで中世ヨーロッパの貴婦人! 日本人でそんな方、なかなかいないでしょ? ついつい義母に目がいきますが、70代で突然サーファーになって気ままな海辺暮らしをする私(篤子)の両親だって、相当ですよ。竜雷太さんも藤田弓子さんも、本当にお茶目で可愛らしくて……。頑固な老人を演じている毒蝮三太夫さんは、さすが〝素人転がし〟の名人だし、区役所の職員役の三谷幸喜さんにいたっては、もう『ずるい』の一言です(笑)。
自分の出演した作品を観るときは、ついつい自分の演技のアラを探して『あーやだなぁ』と感じることが多いんですが、今回は最初から笑いっぱなし。氷川きよしさんが歌うサンバの主題歌が流れるエンドロールまでずっと楽しくて、心から『やってよかったなぁ』と思えました」

人のために、自分を磨くために
時を重ねてきた人こそが、自由になれる

いつも家族のことが最優先で自分の気持ちを押し殺しがちな篤子は、大人世代の女性の代表。そんな篤子に、物語の終盤、義母からあるメッセージが手渡される。人生、わがままに生きた方が勝ちよ――義母が告げるこの言葉は、篤子と苦楽をともにした天海さんの胸に響いた。

「わがままになりなさい、自由でいなさいって、あの素敵な草笛さんに言っていただいて、うれしいだけでなく、確かな重みが感じられたんですよね。草笛さん演じる義母も、そして草笛さん自身も、いろんな時代をお過ごしになって、その中で絶えず努力して自分を磨いてこられたから今の輝きがある。80代の私の母も楽しそうにしていますが、私が子どもの頃はそれなりに苦労もしていたでしょうし……。大人は、みんなそうなんですよね。年齢を重ねて自由で朗らかでいられるのは、そういう時代をきちんと経てきたからなんだと」

そして、自由であることは大きな責任を担うことでもあるから、と天海さん。
「逆に言うと、責任を負える人だけが真に自由になれるべき……だと思うんですよね。でも、責任を背負う覚悟のある人って、そうそう自由にはなり得ないのも、また事実で。だから、義母の言葉には『あなたは今すぐにはなれないと思うけど、でも、いつかはわがままになりなさいね』という含みもあると思うんです。そこがまた素敵だな、と。
篤子と同じ大人世代の女性が、この作品から勇気や頑張る力を受け取ってくださるといいなと思っています。女性がわがままに、自由にいられる時代や国は、絶対にいい状態なんですから」

タートルニット6万1600円(ハウス オブ ロータス/ハウス オブ ロータス 青山店) スカート4万9500円(キャバン/キャバン 代官山店) リング〈右薬指〉13万2000円、〈右小指〉9万6800円(ともにシハラ/シハラ ラボ)

日常の小さな楽しみを重ねながら、
大きな幸せに向かっていけたら

20代から常に責任ある立場に身を置いてきた天海さん。年齢を重ねる中で感じているのは、「年々、ラクになれている」という感覚だと言う。

「40代の頃までは、人生の選択肢が本当にたくさんあって、そのすべてを『いつかは必要になるかもしれないから、手元に残しておかなくちゃ』という意識があったと思うんです。でも、50代半ばまでくると、『本当に大事なのはこれとこれだから、これはもうないよね』と、必要のないものを手放していける。自分にとって大切なものを、箇条書きできるくらいまで絞り込めるようになって、ようやく肩の荷をおろせたような気がするんです。
だから今は、とても楽しい。それに、自分の行きたい道、ここを逸脱しなければ大丈夫だと思えるラインができていると、他の人に対しても寛容になれるというか……。自分とは違う道を歩いている方の姿を見て、『私は飛び越えられないけど、ああいう生き方もいいな』と素直に思えるようになりました」

家庭でも職場でも、まだまだしがらみも苦労も多いAging Gracefully世代。自由は遠い高嶺の花……そう感じるときは、「まずは小さな楽しみを大事にするといいと思いますよ」と天海さん。

「いきなりわがままに、というのが難しかったら、毎日の楽しみや幸せだと感じる瞬間を少しずつでも重ねていって、いつかはその方向に全力で向かっていけるようにできれば……。その幸せを届けるひとつに私たちの作品がなれているのであれば、こんなにうれしいことはないですね」


写真出典:「GLOW」2021年12月号
撮影=中村和孝 スタイリング=大沼こずえ〈eleven.〉 ヘア&メイク=林 智子 取材・文=大谷道子 

天海 祐希 Yuki Amami
1967年東京生まれ。最近の出演作に、テレビドラマ『緊急取調室 Season4』『トップナイフ−天才脳外科医の条件—』、映画『最高の人生の見つけ方』などがある。映画『老後の資金がありません!』は全国の映画館で絶賛公開中。また、11月27日に公開のドキュメンタリー映画『私は白鳥』では、映画では初のナレーション出演も。
  • SHARE
  • facebookでシェアする
  • Line It

pagetop