今、この瞬間をひたむきに生きることで
自分を信じられるようになる
[ 22.06.20 ]
10代の頃から唯一無二の存在感を放ち、ケミストリーある芝居で注目を集めてきた内田有紀さん。華々しい活躍の陰には、真摯に芝居に向き合い続ける修業のような日々があった。
周囲の人をホッとさせる温かい笑顔、飾らずまっすぐな人柄は、これまで歩んできた足あとそのもの。たおやかに生きる内田さんが、日々大切にしていることとは。
自身の治癒力を信じて
おおらかに身体と向き合う
40代女子が集まると、話題の中心にのぼるのはどうしても「健康」のこと。自然体でヘルシーな雰囲気をまとう内田有紀さんですら、例外ではないという。
「数年前に親しい人が体調を崩したことがあって、その時改めて健康であることの重要性をひしひしと感じました。体調がすぐれないと笑顔も出ないし、なかなか前に進みにくくなります。だから、健康な今という瞬間に感謝し、それを絶対に無駄にしたくないと思いました。そのためにも、できる限り丁寧な暮らしをしようと自分を律しています」
体調も肌も、「寝れば治る」が通用しなくなってきた今日このごろ。長年トライアル アンド エラーを繰り返しながら、自分自身にとっていちばん合う方法を模索してきた。
「私の場合は、体調管理は過保護にしすぎないことが大事なようです。まずは必要最低限から始めて、調子に合わせて足したり引いたり。それと最も大事なのは、不調にフォーカスしすぎないことです。思い込みの力ってプラスにもマイナスにも働くから、少しおおらかでいた方がいい気がします。『大丈夫』と自分の体の治癒力を信じることで、いつの間にか不調から抜け出せることもある。そういった意識の力は、坐禅(ざぜん)をやるようになってからより強く感じています」
心と体の健康は表裏一体。体の不調に心がとらわれてしまう時というのは、怒りや不安に引っ張られていることが一因かもしれない。
「嫌なことはなるべく早く忘れ、根に持たないことが大事です。それには山や海など自然との触れ合いが助けになると思います。砂浜に座って海を眺めながらぼーっと過ごしていると、いつの間にか心身ともに癒されて元気になっている。年齢を重ねるよさのひとつは、そんなふうに自分自身の扱い方を覚え、ラクに付き合っていけることだと思います」
トップス1万7600円(イウエン マトフ)、ショートパンツ2万3100円(ユナイテッドアローズ/ともにユナイテッドアローズ 渋谷スクランブルスクエア店) パールネックレス3万9600円、パールリング9900円、コインリング1万5400円(ソワリー)
感性を磨くことは
年齢を重ねる豊かさでもある
若い頃から今に至るまで、おしゃれを楽しむ姿勢は変わらない。ただし40代半ばの今、理想とするのは「人間性が表れるような装い」だという。
「ある時、先輩の女優さんが『年齢を重ねるほど、清潔感が大事なのよ』とおっしゃいました。その言葉がずっと私の心に響いています。清潔感とは、思考やふるまいなど日頃の積み重ねがいつしかその人を包む雰囲気となって出てくるもの。言い換えれば、生き方そのものなのかもしれません。美しいものに触れた時に自分の心が何を感じるか、魂がどう揺さぶられるかで、その人の品格が育まれる。だとすれば、自分の感性を磨き続けていくこと=年齢を重ねる豊かさなのだと思います。いつか、そんなふうに清潔感をまとえる人になりたいです」
ワンショルダートップス3万1900円(アンスクリア/アマン) ストライプパンツ4万7300円(ビューティフルピープル/ビューティフルピープル 青山店) ローファー5万9400円(トリー バーチ/トリー バーチ ジャパン) ネックレス3万250円、バングル7万4800円、リング3万5200円(すべてポダ/アトリエ ジムル)
「ありがとう」の気持ちが
今の私を支えています
今春放送されたドラマ『未来への10カウント』では、デビュー作『その時、ハートは盗まれた』で共演した木村拓哉さんと実に30年ぶりに芝居を交わしている。
「とても感慨深いです。こんなにも長い期間を経てまた一緒にお芝居ができるなんて、ありがたい気持ちでいっぱい。木村さんに限らず、すべての人とのご縁に感謝しかありません。若い頃の私は、仕事に追われる中で自分の置かれている環境をちょっと疎ましく感じることがありました。振り返った時にかつての幼い自分がいるからこそ、瞬間瞬間に丁寧に向き合い、自分が命をまっとうするまでにどれだけ周囲に『ありがとう』と伝えられるかが大事だと気づけました。自分を裏切ることなく、ひたむきに生きていれば、いつしかそれが揺るがない自信になると思います」
50代、60代、この先の人生に希望を持つことは、今を生きる活力でもある。街を歩いていても、雑誌を見ていても、目に飛び込んでくるのは、おしゃれを楽しみ、新しい何かに挑戦し、時には真剣に悩み考えるミドルエイジたち。
「毎日を一生懸命生きている同世代の皆さんの姿に、私自身が励まされています。デビューが早かったので『若い頃から観ていました』とお声がけいただくことも多くて、私も同級生のような親しみを覚えます。この歳になると、同世代のがんばっている姿が素直にうれしい。そんな時、『お互いに相乗効果でいこうね。私も一緒にがんばるから』と、心の中で手をつながせてもらっています」
ニットトップス21万7800円、ショートパンツ5万8300円、スリッポン10万7800円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/イザ) デニムブラトップ5万6100円(アキラナカ/ハルミ ショールーム) ネックレス4万6200円、ブレスレット4万1800円(ともにポダ/アトリエ ジムル)
写真出典:「GLOW」2022年6月号
撮影=彦坂栄治〈まきうらオフィス〉 スタイリング=宮澤敬子 ヘア&メイク=板倉タクマ〈nude.〉 取材・文=土谷沙織
- 内田 有紀 Yuki Uchida
- 1975年11月16日生まれ、東京都出身。女優。1992年にドラマ『その時、ハートは盗まれた』で芸能界デビュー。1994年『時をかける少女』でドラマ初主演。近年の出演作に「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズやNHK連続テレビ小説『まんぷく』、連続ドラマW『華麗なる一族』などがある。今春放送されたテレビ朝日系ドラマ『未来への10カウント』では、主演の木村拓哉さんと対峙する校長先生役を演じた。