“手放すこと”は、頭を柔らかくするための
準備であり、トレーニング
[ 22.07.19 ]
そんな板谷さんが今「ハマっている」と話す、“手放すことの楽しさ”とは。
“次世代のさらに次世代が
活躍する時代”と向き合う
本記事が公開される頃にちょうど47歳を迎え、“人生100年時代”の折り返しに向かう板谷さん。
「70代の女性がすごくカッコよく見えたりして、上の世代を慕いつつも、下の世代から慕ってもらうのも嬉しい、中間世代ですよね。最近、お仕事の現場で感じるのは、“次の次”の世代の子達と一緒になることが増えてきて、すごく面白いんです。30代までは、同世代のみんなで頑張って上がってきた感じがあって、40代になって年齢的に先輩になって、いまの私の年齢(47歳)は若い世代からきちんと押し上げられてきた感覚もあるので、自分の立ち位置を見直すきっかけにもなっています」
ニット6万2700円、ワンピース7万9200円(ともにエアロン/ザ・ウォール ショールーム) ピアス30万6900円、バングル53万5700円(ともにマリーエレーヌ ドゥ タイヤック/エムアッシュテ)
役者や監督、マネージャーも含め、若い世代のスタッフと仕事をする機会が増えて、「次世代のさらに次世代が活躍する時代」と向き合う板谷さん。
「もちろん、ときには“アングリ(ポカーン!)”もあるんですが(笑)、いい意味の「え!?」も多々あるんです。20代前半でも、自分のことを俯瞰して見れている若い子が多いなー! ってビックリしたり、『私の20代はこんなにしっかりしてなかった!』とハッとします。今の子達は貯金や『NISA(ニーサ)』など、計画的にお金を使える子が多いし、きちんと人生設計ができている子が多いんですよね。私の若い頃なんて、お給料をもらったら、すぐパーッと使っちゃって、全然貯金なんてできていませんでした(笑)。かといって、『私の時代はこうだったのに』という言い方は、極力しないように意識しています。お酒を飲むと出ちゃうこともありますが(笑)」
若手を相手に「昔はね……」と、誰しも思いあたる節があるのでは? そんな時は、板谷さんのように、あとあと“やっておいてよかったこと”だけを伝えることで、相手の選択肢を増やしてあげることができそう。
「私の得てきたものは古いから」と
手放すことが楽しい
歳を重ねていくことを楽しむだけでなく、自分とは異なる考え方や世代のギャップまでも前向きに吸収し続ける板谷さん。「年齢的にはじゅうぶん大人なんですが、大人ぶりたくはないの。“これまでの経験の積み重ね”で出来上がるような50代にはなりたくないんです」と、キッパリ。
トップス1万3200円、サスペンダー付きパンツ3万5200円(ともにアール ジュビリー/ショールーム セッション) ピアス3万6300円、左手ブレスレット7万8100円(ともにソフィーブハイ)、右手2連バングル5万2800円、バングル2万9700円(ともにアダワット トゥアレグ/すべてエスケーパーズオンライン)
「マイナスなこともプラスなことも含め、これまでの経験から、妙に理解力がついてしまったことで、わかってもいないのに『わかる』ふりをしてしまうのが嫌なんです。経験値があるぶん想定してしまうけれど、それを取っ払ってなるべくニュートラルでありたい。このまま無意識にいくと、60代、70代になった時に、頭の固いおばあちゃんになってしまいそうなので、50代に向けて、これまで得てきた感覚や経験をシンプルに削ぎ落としていきたいんです。頭を柔らかくしておくトレーニングのような感覚ですね。せっかく周りにこういう(マネージャーさんのような)若い方々から吸収できる機会があるのに、今まで持っていたものを必死で守ろうとしてしまうと、自分のキャパオーバーによって入れ替えや新陳代謝が起こらない。いくつになっても『私の持っているものは古いから、いーらない!』と言える勇気を持っていたいですし、今は“手放すことの楽しさ”にハマっています」
なんでもトライできる
世代になってきている
“手放すこと”は、自分のキャリアをゼロにするようで不安ではあるけれど、ゼロにすることで新たに吸収できる余白を作れるということ。板谷さんが立ち上げ、ディレクターを務めるファッションブランド「SINME」のトークショーでも、“手放すこと”で新しい発見があったそう。
ブラウス4万2900円、パンツ8万6900円(ともにフォルテ フォルテ/コロネット) ピアス96万9100円、ブレスレット12万8700円(ともにマリーエレーヌ ドゥ タイヤック/エムアッシュテ)
「先日、京都のトークショーに来てくださった60代くらいの女性の方が『デニムは穿きたいけど、自分には似合わないから……』とおっしゃっていたので、『その“似合わない”を一回とり外して、穿いてみません?』と、試着されたらすっごく明るい顔をされて、その方だけでなく、私もハッとしたんです。年齢とともに、似合う服がわかってくるということもありますが、一方で『自分はこの色は似合わない』などシャッターを閉めて諦めてしまうと、新たな出会いや知らなかった楽しみを逃してしまうこともありますよね。実は私たち、なんでもトライできる世代になってきているんです。自分で自分を決めつけないようにしたら、新たな楽しみが出てくるものなんだと、私自身も勉強になりました」
写真出典:「GLOW」2022年7月号
撮影=中川真人〈CUBISM〉 スタイリング=酒井美方子 ヘア=MATSU KAZ〈3rd〉 メイク=水野未和子〈3rd〉 取材・文=藤井存希
- 板谷 由夏 Yuka Itaya
- 1975年6月22日生まれ、福岡県出身。女優、モデル、ファッションディレクター。1999年に映画『avec mon mari』に出演しデビュー。女優として活躍するほか、映画の魅力を伝えるWOWOW「映画工房」ではMCを務めるなど、マルチに活躍。2児の母であり、自身が立ち上げたブランド「SINME」のディレクター。7月20日からは日本テレビ系ドラマ『家庭教師のトラコ』(毎週水曜22:00~)に出演する。