更年期による不調をきっかけに
自分を見つめ直し、人生を再スタート
[ 22.08.15 ]
30代になってから演技の道を志し、今では大人の女性を魅力的に演じる俳優として確かな地位を築いています。
プライベートでは二児の母でもあり、子育てと仕事を両立する多忙な日々を持ち前の明るさでパワフルに乗り切ってきました。
そんな吉瀬さんも、そろそろ更年期世代に。
今まで経験したことのない不調や気分の落ち込みに見舞われて、初めて「年齢」を意識したといいます。
変化していく自分の心と体と向き合い
焦らずに更年期と付き合っていく
吉瀬さんに初めて更年期と思われる症状が表れたのは、今年の春のこと。ホットフラッシュのようなのぼせがあったり、夜に寝つけなくなったりして、頭がすっきりしない日が続いていたとか。そんなある日の撮影で、「もう仕事ができないかも」と不安を感じるほどの状態に。
「短いシーンの撮影だったんですが、台詞のイントネーションが違っていてNGを出したんです。そしたら、心臓がバクバクして動悸が止まらなくなり、汗もあふれてきて、緊張と焦りで芝居どころじゃなくなってしまったんです。今までとは明らかに違う自分の状態に驚いてしまって、パニックになってしまいました。その時は、どうにか気持ちを立て直して無事に終えることができたんですが、今まで普通にできていたことが難しくなったり、自分の体や心を制御できなくなったりする更年期の怖さを初めて味わいました」
トップス2万3100円(ロエフ/ユナイテッドアローズ 原宿本店) エプロン7040円(シンプリー) ピアス3万7400円、パールキャッチ1万4300円、イヤカフ7万2600円(すべてプライマル)
振り返ってみれば、出演作が重なったり、個人事務所を設立したり、家を引っ越ししたりと、公私ともにフル稼働。役作りのためのダイエットや生活リズムの乱れ、ストレス過多など、原因となる心当たりがたくさんあったそう。そこからがむしゃらに頑張ってこなしていた日々を見つめ直し、自分と向き合うように。
「更年期以外にも原因があるかもしれないので、アレルギー検査も含めて体を総チェックしました。コーヒーが好きだから、不眠はカフェインの影響があるかもしれないですし。ヨガの先生から『うつむくからうつ病』と教わったので姿勢をよくしたり、食事の質を見直したり、しんどい時にはまわりに話を聞いてもらってストレスを抱えないように気をつけています。また、『部屋の乱れは心の乱れ』といわれるように、部屋のクローゼットを整理して風通しをよくしたら気持ちも少し軽くなりました。もっと早くリセットできていたらとも思いますけど、健康な時には自分がブレていても気づけないんですよね……。更年期の症状が出たことをきっかけに、生活や体を見直せたのはよかったと思います。まだ始まったばかりですし、症状を完全になくすこともできないので、病院や漢方、サプリメント、まわりの人たちなど、頼れるものには頼って、甘えられるものには甘えて、焦らずにうまく付き合っていきたいです」
自分の経験をSNSでシェアして
更年期世代の女性たちの役に立ちたい
更年期を自覚してからは、まわりの先輩たちからのアドバイスが大きな助けになったとも。そうした情報があれば自分だけの問題ではないとわかって安心できたり、対処法がわかったりして、気持ちが軽くなるもの。吉瀬さんが救われたように、同じ悩みを抱える女性たちの役に立ちたいと話す。
トップス2万6400円(イロット/ユナイテッドアローズ 横浜店) タンクトップ1万2100円、ショートパンツ2万3100円(ともにユナイテッドアローズ/ユナイテッドアローズ 渋谷スクランブルスクエア店) ピアス8万円(ロロ ヴィンテージ/ロロ) チェーンネックレス2万7500円(リューク) ネックレス15万円(モナカ ジュエリー/monaka) リング6万1600円(プライマル)
「私も仕事柄や母親という立場から『いつも元気でいなきゃいけない』とか『弱いところは見せられない』と思いがちでした。だからといって、誰にも言わずに一人で抱え込んでしまうのはもっとよくないと思ったんです。知らないうちに無理を重ねて悪化してしまったり、更年期の症状だと気づかずに『なぜ、できないのだろう』と自分を追い込んでしまいますから。そんな時、思い切って先輩方に相談してみたら、体験談を話してくださったり、対処法を教えてくださって、『私一人じゃないんだ』とホッとできたんです。これはどんな悩みも同じなのかもしれませんが、心を開いて話せる友人やみんなと共感できる場所があるだけで楽になれるし、前に進んでいけるんですよね。インターネットで検索すればいろんな対処法にアクセスできますが、どのくらい効果があるのか、どこから手をつければいいのか、副作用はないのかなど、本当のところが分からず、迷子になってしまう人もいるはず。私が実際に試して効果があったものや症状の経過などをSNSで発信して、リアルな声のひとつとして参考になればと思っています」
不確かな未来に思いを馳せるより、今を大切に
毎日のちょっとした楽しみを見つけたい
吉瀬さんにとっての息抜きは、料理を作ることと食べること。調理作業に没頭したり、子供たちが外出している午後のひと時には大好きなシャンパンを味わったり、仕事を忘れて何も考えない時間を持つことで気持ちをリフレッシュしているそう。
「食べることが大好きなんです。食事は毎日作るので、手軽な気分転換になっていますね。それに、みんなで食卓を囲んで食べることで、お互いの気持ちや状況が分かって絆が深まるように思います。ただ普段は子供が食べたい料理が中心なので、一人で昼食をとる時には、大好きなシャンパンとおつまみで大人の味を堪能。ちょっとお昼寝もできたら最高です(笑)。時々出かける大人だけの外食は、ご褒美ですね。おいしいものを味わいながらゆっくり過ごす時間を持つことで、自分を取り戻すような感覚があります」
ドレス9万9000円(ブラミンク) エプロン7040円(シンプリー) ピアス33万円、イヤカフ7万7000円(ともにヒロタカ/ヒロタカ 表参道ヒルズ)
そんな日常を紡いでいく先にある未来への展望も、更年期に入って大きく変わった。年齢とともにいろいろな変化が起きるに違いないけれど、今の自分を受け入れて毎日を楽しむことが大切と気づいた。
「若い頃からずっと将来のビジョンを見ることが楽しみで、5年先、10年先はこうなっていたらいいなと思い描きながら走り続けてきました。目標に手が届いたり、夢が形になっていくことに満足もしていました。ですが、突然更年期が訪れたように、これから先は何が起きるのかわからないし、見通せない将来を考えると不安になるばかり。だったら、今の自分を受け入れて毎日を楽しむことが大切かなと思うようになりました。料理や子供たちとの時間などちょっとした楽しみや喜びを毎日見つけていけば、未来の自分もきっと幸せなんじゃないかと。ライフスタイルや価値観、考え方もがらっと変わりましたし、コロナ禍を経て必要なものと不要なものが振るいにかけられたように感じていますので、ここからが人生の再スタートと思って、無理せず自分らしく一歩ずつ進んでいこうと思っています」
写真出典:「GLOW」2022年8月号
撮影=YUJI TAKEUCHI〈BALLPARK〉 スタイリング=道端亜未 ヘア&メイク=山下景子〈KOHL〉 フードスタイリング=今田 愛 取材・文=安田晴美
- 吉瀬 美智子 Michiko Kichise
- 1975年2月17日生まれ。福岡県出身。女優。モデルとして活躍し、2007年に女優デビュー。2011年エランドール賞 新人賞受賞。テレビドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(2014)、『オトナ女子』(2015)、『セシルのもくろみ』(2017/すべてフジテレビ)などで、幅広い世代の女性たちから支持を集める。近作にドラマ『黒鳥の湖』(2021/WOWOW)、映画『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』(2021)など。プライベートでは9歳と5歳の二児の母。