「明日、何を着よう?」「ちょっと、着替えよう!」から
巡るスパイラルが人生を変える
[ 22.09.05 ]
セクシー。ミステリアス。でも……! その奥の奥にある、まったく新しい「高岡早紀」の魅力に、私たちは今、夢中になっている。秘密はいったい、どこにあるのか? 不安を抱えつつも、少しずつ前に進み始めた今シーズン、語ってくれたお洒落へのこだわりから、本当の高岡さんが見えてきた。
「着る気持ち」が変わると、人生が変わる
誰より、黒が「映える」人。それでいて、誰より、黒が「なじむ」人。仕事上、求められる服も、自身で選ぶ服も、「黒」が多いと高岡さんは言う。
「若いころから、クローゼットを開けると、一面『黒』(笑)。そのまま大人になりました。色とか柄とか、黒以外に挑戦したいという気持ちは常にあって、それなりに手に入れてきたんですけど、実際纏うとなると、手に取るのは結局、黒なんですよね。黒と黒ならどれを合わせても決まるし、ファッションに気を使っているようにも見えるような気がして。私にとっては、もっとも『お洒落を楽しめる色』なのかもしれません」
「格好いい」にも「艶っぽい」にも偏り過ぎない黒の着こなしが、特に好き。
「フェミニンな服を着ているイメージを持たれがちなんですが、じつはそんなことはなくて。レースは好きだけれど、実際に纏うなら、マニッシュなアイテムを合わせるなどして、全部がフェミニンな方向に行かないようにバランスを取りますね」
ジレ6万3800円(チノ/モールド) パンツ5万600円(ウォルフォード/サザビーリーグ) ネックレス3万4100円〈参考価格〉(ジュスティーヌ クランケ/ザ・ウォール ショールーム) パンプス10万8900円(セルジオ ロッシ/セルジオ ロッシ カスタマーサービス)
最近、黒をさらに楽しめるようになったそう。
「きっかけは仕事だったんですが、髪色を明るくしたんですね。すると、黒を着ても重くならないことに気がついて。黒って、色としての強さがあるから、ともすると格好よくなり過ぎたり、艶っぽくなり過ぎたりするときがあるでしょう? 大人は特に、気をつけなくちゃいけないと感じていました。ところが、この髪色だと、今までよりずっと軽やかな印象に見える。そのままヘアスタイルをキープしています」
コロナ禍で家にいる時間が増え、時間がほんの少しだけゆっくり流れていた時期、高岡さんはクローゼットの整理をした。すると……?
「服に光が当たるようになったんです。クローゼットの整理をしているうちに、着ていない服がたくさんあることに気がついて。だからといって『もったいないから着よう』ではなく、ひとつひとつにときめきを持てるようになったんですよね。バッグも靴も、そう。それまで、奥にしまっていたものを、目につくところに並べ直したら、それぞれに『チャンス』が増えて……。クローゼットを見て、『明日は何を着よう?』と楽しんで考えるようになりました」
ブラウス12万1000円、ベルト3万9600円、スカート6万6000円、ハット2万6400円(すべてヌメロ ヴェントゥーノ/イザ)
時代が前に大きく進み始めた今、「着る気持ち」が前向きに変わったことを、自分のひと言で気づかされたという高岡さん。
「最近ね、ふと気づくと、『ちょっとお出かけ』という表現をしているなあ、と。『ちょっと』ってランチ? お茶? それともディナー? きっと目的や行き先は何でもよくて、言葉そのものが『今を楽しもう』という気持ちの表れなのかもしれないと思うんです。すると、せっかくだから、『ちょっと』着替えようかなあ、と思う。外に出かけること、人に会うことが当たり前だった以前なら、『この服でいいか』『着替えなくてもいいか』と思っていたところを、今はその機会が貴重なものに思えて、せっかくなら、ファッションを楽しみたいと思うようになったんです。どうでもいいという着方をあまりしなくなったんです」
せっかくなら、ファッションを楽しみたい。その気持ちは、見た目を変える、心を変える、毎日を変える……。それこそが、高岡さんの考える、お洒落の意味。
「自分が好きなものを着ること、新しい服や新しい靴を手に入れること……、それだけでやっぱり、気分って上がりますよね。楽しい気分になると、自然と頬が紅潮するし、笑顔も増えるし、ほんの少しだけ自信も持てる。お洒落から巡るスパイラルがある気がして。改めてお洒落って大事、そう確信しました」
変化を恐れず、新しい自分に出会い続ける
舞台に限らず、女優としての輝きは、言わずもがな。一方で、シンガーとしてライブハウスで舞台に立ち、テレビの情報バラエティ番組ではコメンテーターを務める。活躍の場はどんどん広がるばかりだ。
ドレス10万7800円(ヌメロ ヴェントゥーノ/イザ) 右手リング3万4100円(リューク) 左手リング3万1900円(ラッツェル アンド ウォルフ/ザ・ウォール ショールーム)
「私たちの職業は、新しい自分を探したり、新しいことに挑戦したりすることが求められるし、またそうしやすいとも思うんですね。私の場合、この年齢になって、『まさか、そこには行かないだろう』というジャンルの仕事が舞い込んできて……。思ってもみなかったことだったけれど、ただ、もし『転んだ』としても、若い頃のような転び方はもう絶対しないと思うんです。大人なら、きっと、皆、そう思っているんじゃないかな。年齢を重ねても、変化を恐れずに『何か』を探し続けたいと思います」
年齢を重ねるほどに、新しい「高岡早紀」が見えてくる。次第に、軽やかになっているような、次第にしなやかになっているような。それに対して当の高岡さんは、「年齢相応な人でありたい」と言う。
「年齢を重ねることって、いいことしかないと思うんです。いい経験も悪い経験も含めて、得られることばかりだから。若さを保ち続けたいとは思わないけれど、だからと言って、見苦しくはなりたくないですよね。いかにそのときを楽しみながら、50代、60代を迎えられるかが、課題。そういう意味で、年齢相応でありたい、と思うんです」
お洒落も人生も、きっとそう。変化を恐れることなく、新しい自分に出会い続ける人が、年齢を重ねるほどに輝きを放つ。高岡早紀さんが、教えてくれたこと。
写真出典:「GLOW」2022年9月号
撮影=彦坂栄治〈まきうらオフィス〉 スタイリング=酒井美方子 ヘア&メイク=中野明海 取材・文=松本千登世
- 高岡 早紀 Saki Takaoka
- 1972年生まれ、神奈川県出身。女優のみならず、フジテレビ系列の情報バラエティ番組『ポップUP!』でレギュラーコメンテーターを務める。歌手として 11/8(火)にはビルボード横浜でのライヴも控えている。