時には、母活から心と体を解き放って
自分のための時間を持つことが大切。
[ 23.01.23 ]
2児の子育てまっただ中でありながら、俳優としても存在感を放ち続ける菅野美穂さん。現在は子どもを中心にしたライフスタイルを送っているが、2022年は時間の使い方に少し変化が生まれてきたと話す。今の彼女の輝きを支えているものとは。
役や自分と向き合う
撮影は「ご褒美の時間」
年明けすぐから出演作が続く菅野さん。1月3日に放映された「DOCTORS~最強の名医~」のスペシャルドラマには、髙嶋政伸さん演じる森山先生のお見合い相手役としてゲスト出演。さらに、2月には映画「仕掛人・藤枝梅安」が公開に。原作は池波正太郎の人気シリーズで、豊川悦司さん扮する主人公に思いを寄せる女中・おもんを演じている。
「『DOCTORS~最強の名医~』は本作が最後で、10年間の集大成的な作品でした。絆が出来上がっている現場に入るので緊張しましたが、温かく迎えてくださって安心してお芝居ができました。『仕掛人・藤枝梅安』の主人公、梅安は鍼(はり)医者と殺しを請け負う仕掛け人の二つの顔を持つダークヒーロー。主役の豊川悦司さんと相棒の片岡愛之助さんのコンビがしっくりなじんでいて、もう何作も撮っているかのような完成度の高さでした。物語の面白さはもちろん、衣装や殺陣など正統派の時代劇ならではの楽しさなど、見どころの多い作品だと思います」
仕事とじっくり向き合えたのは、子どもの手が少し離れたからかもしれない。ベテラン俳優の先輩たちと同じ現場を経験して、改めて気づくことも多かったと振り返る。
「2022年は新生活に慣れるのが最大のテーマでしたが、後半は撮影に参加できて充実していました。朝は家を出るので精いっぱいなんですが、それでも現場に行くとキャストのみなさんとお話ししたり、一緒にお芝居できたりするのが本当に楽しくて。自分の中では、今までやってきたことをまた一つ積み重ねて、延長できたことがうれしくもありました。若い頃とは違って、演技についても自分で考えて工夫して修正していく年齢になったんだなと感じますし、それだけ頑張っていればいいというわけでもなくなってきました。大人としてのマナーや会話、立ち居振る舞いなど、現場でのあり方が重要だなと実感しました。だけど、こんなふうに役や自分のことだけを考えていればいいなんて、私にとっては『ご褒美の時間』なんです」
自分の体と心をきちんとケアすることが
元気で豊かな毎日につながっていく
これまでは一日中子どもから目が離せず、どうしても自分のケアは後回しになっていたという菅野さん。漢方薬を飲んでも、なかなか疲れが取れないことがあるのだとか。近頃はそうした変化を受け止めながら自分をいたわり、気分を上げるように心がけているという。
「理由が一つだけとは限らないんですよね。自己判断してなんとなくやり過ごさずに、きちんと自分の体の状態を調べることが大切だなと痛感しました。20代の頃と同じくらい元気になろうとは思わないし、なれないけど、気分よく生きることができたらいいなと思っています。気持ちに弾みをつけたいときに頼りになるのが、お気に入りの洋服やジュエリーです。普段からアイテムリストを作っておいて、忙しい朝でも着こなしに迷わず『よし!』と気分よく出かけられる準備をしておくことが大切だと感じています。年齢とともに体形も好みも変わっていきますけど、そのときどきの自分に合うものを見つけていきたいですね。自分の気持ちを上げられるのは自分だけですから」
一日のうちにたくさん詰まった役割とスケジュールをこなすためには、体はもちろん、心も元気であることが不可欠。煮詰まってきたときには、大好きな旅行でエネルギーをチャージ。
「秋は紅葉を見に日光に、冬はスキーをしに行きます。一昨年から夏にサーフィンを始めて、季節ごとにスポーツやお出かけを家族で楽しんでいます。実際に行くかどうかは別として、写真を見ながら次の旅先をあれこれ考えると気分が上がって、いい気分転換になります。世界中の人々は、みんなバカンスが大好きでしょう。だから、非日常は日常を頑張るために必要なことなんです。心のどこかに『自分だけ休むのは申し訳ない』っていう思いがあって、知らず知らずのうちに無理を重ねてしまうのでしょうね。休むペースを自分で実験していかないといけないのかなと。昔は一日がもっと緩やかだったけれど、今は便利になった分、あれもこれもと詰め込みすぎてしまうのかも。ときには肩の力を抜いてゆっくり過ごしたり、自分を解放したりする時間が大切だなと思います」
年齢と経験を重ねて素敵だと思うのは
価値観がしっかりしていて節度のある人
そんな彼女に輝きを感じる女性像を聞いてみると、「価値観がしっかりしていて、行動力がありながら節度のある人」との答え。身近なところでは、子どもを通して出会った年下のママたちの素晴らしさに心を動かされることが多いという。
「子どものお迎えやお弁当作り、お世話だけでも大変なのに、幼稚園の仕事を進んでされている方々を見ると本当に頭が下がります。現状をよりよくするためにはどうしたらいいかと、先を見据えて行動できるなんて! 情熱と行動力を持って一生懸命取り組みながら、周りの人々への気配りも忘れない視野の広さにも感動します。なかには表計算や画像編集などのスキルを駆使して資料を作られる方もいらして、積み重ねてきたものの違いを実感しますね。10歳くらい年下の方が多いのですが、子どもを通して出会わなければ一生関わることがなかったかもしれないので、ご縁ができてよかったです。俳優という仕事とはまた違う世界を知って、たくさんの学びや気づきをいただいています」
撮影=生田昌士〈hannah〉 取材・文=安田晴美
- 菅野 美穂 Miho Kanno
- 1977年8月22日生まれ。埼玉県出身。93年に俳優デビュー。高い演技力で評価を獲得し、話題作に次々出演。近作に、主演映画「明日の食卓」(2021年)、主演ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(21年、日本テレビ系)、ドラマスペシャル「DOCTORS~最強の名医~ファイナル」(23年、テレビ朝日系)など。二部作の映画「仕掛人・藤枝梅安」は、第一作が23年2月3日から、第二作は4月7日から全国で連続公開。
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