坂本真子の『音楽魂』
高岡早紀さんインタビュー〈前編〉
ライブは一期一会「最高のものを」
女優であることの強み 歌で表現
Special 音楽 ライフスタイル
[ 24.02.07 ]
テレビや映画、舞台で幅広く活躍する俳優の高岡早紀さんが、新アルバム「Decade -Sings Cinematic-」を1月31日に発表しました。歌手デビュー35周年、及び、歌手活動再開10周年を記念した作品で、この10年間にライブで歌ってきた曲など全15曲を収録しています。インタビュー前編では、このアルバムや音楽への思いを語ります。
高岡さんは1987年、14歳のときにモデルとして芸能活動を始め、翌88年に「真夜中のサブリナ」で歌手として、89年に俳優としてデビューしました。94年公開の主演映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」で日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞するなど高い評価を受け、俳優としてキャリアを重ねてきました。
一方、歌手としての活動は90年代の途中から休止していましたが、2013年春、主演映画「モンスター」のエンディング曲「君待てども ~I'm waiting for you~」で再開しました。それ以降は毎年のようにライブハウスで歌っています。
「ライブは生ものなので、その瞬間は本当に一期一会じゃないですか。自分自身ができる最高のものをプレゼントしたいと思っていますけど、そのパフォーマンスに自分が達することができるかどうかは出てみないとわからないので、1曲目はすごく緊張しますね」
以前はライブでほとんど歌ったことがなかったという高岡さん。10年前に歌い始めた頃は、「お客様とのコミュニケーションの取り方や距離感が全くわかりませんでした」と振り返ります。
「でも、徐々に自分のライブの色を認識できるようになってきました。私自身が楽しんで歌うとお客様も楽しんでいただけるので、今はお客様とのコミュニケーションも楽しんでいます」
「私にしかできないことは」
新アルバム「Decade -Sings Cinematic-」には、今回初めてCD化した9曲など、全15曲が収録されています。1950年代、60年代の洋楽ジャズや、「シャム猫を抱いて」「ミッドナイト・ラブ・コール」といった70年代の和製ボサノバ、そして、矢野顕子さんの「ひとつだけ」、八神純子さんの「みずいろの雨」、永六輔さん作詞、中村八大さん作曲の「黄昏のビギン」など懐かしい昭和歌謡やシティーポップ……。
「シネマティック」をテーマに、映画の一場面一場面を切り取ったようなイメージで、それぞれの曲で描かれる物語を演じ分けるように、高岡さんが歌っていきます。
「君待てども ~I'm waiting for you~」はもともと1949年に世に出た曲で、2013年に高岡さんの主演映画「モンスター」のエンディング曲に採用されました。高岡さんはこの曲で歌手活動を再開し、ジャズピアニストの山下洋輔さんとの共演も話題になりました。山下さんとは、高岡さんの父親がかつて横浜でジャズのライブハウスを営んでいた頃から親交が続いています。
新たに録音した「トーキョームーン」は歌手デビュー35周年記念の新曲。作詞した森雪之丞さんは、高岡さんが10代の頃に歌った多くの作品の詞も書いていて、1989年のアルバム「Sabrina」に収録された「太陽はひとりぼっち」も森さんが手がけました。
「雪之丞さんはお芝居の音楽も書かれているので、ときどきお会いしてはいたんですけど、今回改めてお願いしたら、快くお引き受けいただきました。『太陽はひとりぼっち』の歌詞に描かれている少女が大人になったような歌詞を書いてほしいです、とお願いして、今回の詞になったんです。ちょっとだけギャルソンが出てくるのは、1960年代の映画『太陽はひとりぼっち』の世界観の名残です。とても思い出深い作品になりました」
「私が歌う曲は、私が好きなものもありますし、私に合うだろうと周りが選んでくれたものもあります。私自身は音楽にすごく詳しいわけではないので、選曲は音楽に詳しい人たちにお任せしています。私はどちらかというと女優的なスタンスで、用意されたものに対してどれだけのパフォーマンスをしていくか、女優で培ってきたものを出している感じですね」
2021年に出版したエッセー「魔性ですか?」(KADOKAWA)の中で、「歌うことは女優としての表現方法の一つ」と高岡さんは書いています。
「ずっと歌手をやっていらして歌が上手な方はたくさんいらっしゃいます。では、私にしかできないことは何かな、と思ったときに、長く女優をやっていて、その中で歌手活動をしているので、女優であることの強みは表現していきたいな、と思っています」
「自分自身を知ることが大事」
高岡さんは以前のYouTube動画で、のどをケアするためのさまざまなグッズを持ち歩いている様子を紹介していました。繊細で透明感のある歌声を維持するためにしていることはあるのでしょうか。
「舞台をやっているときに声が出なくなってしまったらおしまいなので、そのときはすごく気をつけています。初めてミュージカルをやった若い頃、すごく忙しくて寝ていなかったこともあって、一度声をなくしてしまったんですね。その経験があるので、どうしたら声が出なくなるかは自分でわかりますし、それからはめったに声をダメにしていません。基本、のどは強いんです」
毎年のように舞台に立っていることも、のどの維持に役立っていると言います。
「舞台は鍛えられますね。自分ののどをわかっていないと舞台はできないので。のどが強いだけでなく、自分自身を知っていることがとても大事だと思います」
歌手としては、今年もライブ活動に力を入れる予定です。最近は音楽イベントやフェスに呼ばれることも増えています。
「自分のライブ以外のイベントやフェスは、呼んでいただかないと参加できないじゃないですか。呼んでいただくと音楽活動が増えて、世界が広がります。たとえば、お芝居でなぜこの役が来たのかな、と考えてみると、その役を私にやってほしいから、ですよね。やってほしいと思っていただけたのなら、やってみようと思うんです。やってみて楽しめなかったら、次はやめればいいだけなので、まずはやってみよう。そういう気持ちが年々大きくなって、世界もどんどん広がっていますね」
最近、音楽を聴いていますか。
振り返れば、あなたにもきっと、歌やメロディーに励まされ、癒やされた思い出があるはず。40代、50代になっても、これからもずっと音楽と一緒に過ごせますように。
そんな願いを込めて、子どもの頃から合唱曲やロックを歌い、仕事でも関わってきたAging Gracefullyプロジェクト編集長の坂本が、音楽の話をお届けします。
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◆「Decade -Sings Cinematic-」 [Deluxe Edition](初回限定盤)
1月31日発売。CD+DVD、7千円(税込み)。
◆「Decade -Sings Cinematic-」(通常盤)
1月31日発売。CD、3300円(税込み)。
音楽ストリーミングサービス、及び、ダウンロードサービスで配信中。
https://jvcmusic.lnk.to/Decade_SC
(ジャケット写真はいずれもビクターエンタテインメント提供)
◆高岡早紀さん 公式サイト
◆高岡早紀さん 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/saki_takaoka/?hl=ja
◆高岡早紀さん 公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/realsakitakaoka
◆高岡早紀さん 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@saki_takaoka
◆高岡早紀さん オフィシャルブログ
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