Aging Gracefullyプロジェクト勉強会
@名古屋〈前編〉
会社が女性社員の健康維持に力を入れる理由とは?
Project report キャリア ヘルスケア ジェンダー
[ 20.06.22 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」による「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代の女性たちのエンパワーメントを目的に、様々な活動を展開しています。その一つが企業向けの勉強会です。女性を取り巻く社会課題について話し合い、解決策を発信していく場をつくることを目的に、年間5回ほど開催しています。
2019年秋からは東京だけでなく、地方都市でも展開。2020年1月31には朝日新聞名古屋本社で実施しました。テーマは「健康経営における、女性の健康について」。
機械メーカーやエネルギー関連企業、百貨店、大学など24社・団体から、人事やダイバーシティー、CSR、広報の担当者ら33人が参加しました。
「健康経営」とは、社員の健康保持や増進を支援することが、企業の収益性やブランドイメージを高め、採用への好影響、労災リスクや離職率を下げることなどにつながるという一種の経営戦略です。勉強会では、この取り組みを推進している経済産業省中部経済産業局ヘルスケア産業室の脇本佳代室長補佐が基調講演しました。
脇本さんは、日本人の平均寿命と健康寿命に10年前後の差があることを指摘し、「人生100年時代に向け、誰もが健康で長生きし、生涯現役でいるためには健康経営が必要。企業が健康経営を進める際は、管理部門など現場の働きかけも大事ですが、トップが強い意志を持って推進するメッセージを打ち出すことが欠かせません」と語りました。
健康経営の取り組みは、国際社会で広がる「ESG投資」の方向性とも合致しています。これは、投資家が企業の環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に向けた取り組みを投資の判断材料にするものです。脇本さんは、健康経営が「Social」の取り組みに当たるとし、「今は健康経営に取り組む企業の方が少ないかも知れませんが、近い将来、健康経営に取り組んでいない企業は敬遠される時代になるかも知れません」と述べました。また、健康経営に取り組む企業は、タイムラグはあるものの、業績にプラスの効果が出ることが分かってきており、経産省が進める「健康経営優良法人」の認定数も年々、増加しています。
これらの企業が今後、力を入れたい分野として関心が高いのが、「女性特有の健康問題への対策」だそうです。月経痛など、月経に伴う体調不良による労働損失は年間4911億円にのぼるという試算もあり、こうした女性の健康課題に対応し、働きやすい環境を整えていくことが生産性の向上に結びつくと考えられています。
経産省は2018年、働く女性の悩みを全国的に調査しました。男女計約5400人の回答からは、働く女性の半数が女性特有の健康課題を理由に職場で困った経験をしており、その多くは月経痛や月経前症候群(PMS)によるものでした。一方、女性の健康課題が労働損失や労働生産性に影響していることについては、全体の7割が「知らなかった」と回答するなど、男性や管理職だけでなく、女性自身の知識不足も課題となっています。
調査ではこのほか、女性従業員が会社に求めるサポートとして、「業務分担や適切な人員配置などのサポート」「治療などのための休暇制度や柔軟な勤務体制へのサポート」のほか、「上司や部署内でのコミュニケーション」などがあげられました。管理職からは「男性には分からない女性特有の症状に対して、的確なアドバイスができない悩みがある」といった回答も寄せられ、「会社に専門の相談窓口を設置して欲しい」という声が多くあがりました。
脇本さんは最後に、女性の健康推進について企業が手がけるべき施策として
①リテラシーの向上
②相談窓口の設置
③働きやすい環境
をあげました。
「ちょっとした不調を相談できる場も必要。そして、テレワークやシフト改善など、男性も含めた働き方改革を通じて、誰もが自分の体調に合わせた柔軟な働き方ができるような職場づくりを目指していくことが求められています」
脇本さんの講演に続き、大塚製薬の西山和枝さんが「管理職世代の健康課題とは」と題して、更年期の様々な症状について講義を行いました。
その模様は後編をご覧ください。