わたしらしく輝く 色とりどりの社会へ
パートナー いま、隣にいてほしいのは
Special 恋愛 ライフスタイル マインド
[ 21.12.27 ]
昭和に育ち、男女雇用機会均等法の号砲で平成を走り抜けた、40代、50代のAging Gracefully (AG) 世代。一人ひとりの色とりどりの人生が、社会を少しずつ前へ前へと進めていきました。
AG世代をフィーチャーした、朝日新聞の2020年1月の特集記事を紹介します。今回のテーマは「パートナー」。人生は一人旅です。だからこそ年を重ねたとき、心から寄り添える誰かといたいもの。最良のパートナーとは。幸せって? 本音に向き合い、自分の一歩を踏み出せていますか?
ひとりは不安、パートナーさがし
「去年、旅行で行った国がとても素敵で……」
「そういうお仕事をされているんですね」
1月中旬、中高年向け結婚情報サービス大手「茜(あかね)会」で、婚活パーティーが開かれた。40~50代の男女数人ずつが参加。1対1でプロフィルカードを交換し、お茶を飲みながら10分ずつ話をする。会費3500円。この日は連絡先の交換希望が4組でマッチングした。
女性会員の4割が50代。うち55%は離婚経験者という。「それまで仕事や子育てに打ち込んできて、『自分のこれからの人生、どうしよう?』と考える年代なのでしょう」とカウンセラーの立松清江さん(61)。
関東地方に住む女性(55)も、その一人。柔らかな笑顔が目を引く。体を壊すほど働いたこともあり、何人かの男性と交際したが結婚には至らなかった。現在は事務の仕事をして80代の母と暮らす。ただ最近、母の体が衰えはじめた。「いずれ母を見送って、本当にひとりになったら……。怖くて、焦りも感じて。更年期を過ぎたころから寂しさが募ることが多くなりました」
30代の頃、女性には数年間を共に暮らした人がいた。「彼がある日グラタンを作ってくれたり、私も帰りを待ちながらご飯を支度したり。パートナーといると予期せぬ喜びがあって、楽しかった。恋愛でなくてもいい。これからの時間を一緒に過ごせる仲間が欲しいのです」
立松さんによると、籍にこだわらないカップルも多い。「『家族』のあり方に縛られず、もっと自由なパートナーシップを築きやすい年代なのだと思います」
婚活パーティー業「シャン・クレール」はこの10年で全国に会場を拡大した。参加者はひと月5万人。50歳以上の「離婚理解者」向け企画にも力を入れる。運営事業部の稲井淳さんは 「趣味や旅行仲間を探す人もいます」。
マッチングアプリの利用も広がる。最大手「ペアーズ」では、40~50代の利用者が全体の12%。運営するエウレカによると、この年代は容姿や収入といった条件より、価値観や趣味が合う人を求める傾向が強いという。
「remarry」は離婚経験者に限定したアプリ。運転免許証などで本人確認をし、離婚歴や理由、連れ子OKかなどを登録する。運営会社morrowの米田昌弘代表取締役は「参加対象は狭まるが、譲り合える場が提供できればと考えた」と話す。サービス開始前の調査で、「性的指向」も大切な要素であることが分かったという。
選んだ別れ、その先には自立
50歳前後、分かれ道に立つ夫婦も多い。
都内でピアノ教室を開く女性(50)は6年前、20年間の結婚生活に終止符を打った。
「けんかすればよかったんですよね。静かに冷えていった」と話す。夫は海外出張が多く、ひとり息子が小学生になる頃には1カ月に1週間帰ってくるような生活に。家での会話は次第に減った。
息子が高校生になる頃、離婚を意識した。「いずれ老後をこの人と? と考えると違和感があった」。修復できないほど関係が冷え切っていた。息子の大学進学とともに離婚。最後まで夫婦で言い争うことはなかった。
離婚後も家族3人で食事に行く。女性は「今のほうが断然、居心地がいい」という。副業を始め経済的にも安定した。「やっと大人になれたという満足感に近い」。同い年の新しいパートナーと、いずれ家族になりたいと思っている。
大手メーカー勤務の都内の女性(51)は4年前に離婚ではなく「卒婚」した。
5年ほど前、年下の夫から離婚を切り出された。夫は会社を辞め、専門学校に通って整体師の資格を取ったところだった。仕事に夢中だった女性は「他に好きな人ができたなら仕方ないかな」と思った。だが、そうではなく夫は「家を出て自立したい」という。とことん話し合い、女性は応援することにした。夫はその後、郊外に自宅兼職場を構えた。それぞれ生計を立て、数カ月に1回、互いの家を行き来し、もてなし合う。
女性は「今の彼は頼もしくて、今までで一番素敵」と話す。互いの悪口を言わなくなり、大学生と中学生の子どもたちと家族4人で過ごす時間も明るくなった。「もし10年後にどちらかが病気になったらまた一緒に住めばいい」と思っている。
川崎市男女共同参画センターが昨年6月、卒婚講座を開いたところ、参加者であふれた。講師を務めた大野萌子・日本メンタルアップ支援機構代表理事は、卒婚の大きな目的は「相手に依存せず精神的に自立すること」という。「強く依存して(されて)いるから攻撃的になるんです」。まずは自分と向き合い、自分の世界をもつことを勧める。
家族のあり方、それぞれの道
<家庭内離婚した会社役員の女性(39)>
共働きで、保育園児と小学生の育児に一緒に奮闘してきた夫は、夫婦というより苦難をともに乗り越えるバディのような存在になってしまいました。夫婦に求める関係性の違いが決定的になり、「夫婦はやめよう、でも子供は一緒に育てよう」と決めて離婚。生活は変わらず、4人は最高の家族だけど、子供が自立したらそれぞれの人生を歩むつもりです。
<離婚はせず別居した60代女性>
夫が知人女性と浮気し、私の存在価値は否定されました。一緒にはやっていけなくなり、1年ほど家庭内別居をしたあと結婚約30年にして夫が出て行きました。でも離婚はしないことで同意。いろいろ調べ、お互いに経済的メリットがあると判断したから。夫と連絡は取っていません。正月を初めて一人で過ごしたけれど、子どもたちも来て寂しくはありませんでした。
<6人共同生活の堀あきこさん(51)>
京都のシェアハウス凛娯(りんご)館で、私のパートナー、20~50代の女性たちと一緒に暮らしています。東日本大震災を機に、家族をもっと「開く」形にしようと思いました。柔らかい言葉遣いや体調へのさりげない気遣い、物音も少し配慮して。本来の家族の「1.1倍の気遣い」が合言葉。お正月には旧住民が里帰りしたり、暮らしを共にする人の輪がゆるやかに広がっています。
本人の納得感が大切
「家族のためのADRセンター離婚テラス」代表の小泉道子さん(行政書士)
前向きな卒婚は少ないです。50歳前後は子どもの学費もかさみ、財産分与の面倒な手続きや経済事情から、仕方なく離婚ではなく卒婚を選ぶ人も多い。一方、年齢が上がると誰ともつながらないことへの不安は大きくなる。どんな選択であれ、本人が納得できていれば前を向けます。自分で選ぶことが大切です。