Aging Gracefully 勉強会〈後編〉
西山和枝さん「つらいときは言葉に出して」
女性管理職が悩みを分かち合い、輝くために
Special Project report ヘルスケア ハウツー 更年期 ライフスタイル キャリア 学び
[ 23.03.15 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」による「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、40代、50代のAG世代の女性たちを応援するために、企業向けの勉強会や一般の方向けのセミナーなど、さまざまな活動を展開しています。
2月3日に「女性管理職、どうすれば? ~悩みを分かち合い、もっと輝くために~」と題した企業向け勉強会を開きました。リアルとオンラインのハイブリッド方式で、約140人が参加。第2部は、日本女子大学名誉教授(労働経済学)の大沢真知子さん、大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部「女性の健康推進プロジェクトリーダー」の西山和枝さんによるパネルディスカッションが行われました。
ディスカッションでは最初に西山さんが、働く女性の健康問題や調査結果などを説明しました。
女性の更年期は、閉経の前後5年ずつ計10年間とされています。男性は年を重ねるにつれて少しずつ男性ホルモンの量が減っていくのに対し、女性は40代以降、ジェットコースターが下降するように女性ホルモンが急減します。
「女性ホルモンの変動に体がついていけず、さまざまな症状が起きる。これがいわゆる更年期症状です」と西山さん。
更年期症状は、急な発汗やのぼせといった「ホットフラッシュ」のほか、めまいや不眠、頭痛などさまざまです。日常生活に支障をきたす更年期障害に悩む女性も少なくありません。しかし、更年期の症状があるという45歳から59歳の女性を対象にした、大塚製薬の「ヘルスリテラシー調査」によると、「女性ホルモンに関して知識がありますか」との問いに対し、「知識がない」と答えた人が63%にのぼりました。
「女性ホルモンの働きや影響について知らなければ、自分の身体がライフステージでどう変わるか、想像が及ばないでしょう。その結果、更年期の症状があっても一時的な不調だと思い込んでしまったり、『ホットフラッシュがなければ更年期症状ではない』と勘違いしたりしてしまうんです」
女性ホルモンには、しなやかな体を保ち、骨を守るといった役割もあります。西山さんは正しい知識を身につけて対処する「ヘルスリテラシー」の向上の重要性を訴えました。
では、働く女性が自らの不調に気づいたとき、どうすればいいのでしょうか。
20歳から59歳の女性を対象にした大塚製薬の「働く女性の健康意識調査」では、月経前症候群(PMS)や更年期症状に関して、職場で相談できず自分で何とかしなければいけないと感じているという、女性たちの意識が浮き彫りになりました。西山さんは「会社で責任が上がれば上がるほど相談しにくいというのが現状のようです」。
こうした状況を改善するために、企業が女性の健康課題を把握して対策を講じる必要性を西山さんは訴えます。また、働く女性のセルフケアの重要性も指摘しました。
「お食事や運動に気を配るだけでなく、かかりつけの婦人科医を持って、定期的に婦人科検診に行っていただきたいです。仕事も家庭も忙しい管理職であればなおさらです」
「個人差を知り、自分のケアを」
西山さんの説明を聞いた大沢さんは、「健康って、忙しいと本当に忘れてしまって無理が続いてしまいますよね。コロナ禍で人に会わない状態が続くと余計にそう。改めて自分の健康管理が大事だと思いました。私も検診、受けます」。
更年期の時期や症状には個人差があり、その違いを本人も周りも理解することが大切です。
大沢さんは「更年期の症状、生理やPMSが心理に与える影響というのも個人差が大きいので、この個人差を知ったうえで、自分のケアを考えていくといいと思います」。
西山さんは「女性の間でも、若い人が『ちょっと月経で』と言うと、『何を弱いことを』ととらえる世代の方がいます。そこは個人で違うということを大切にしていかなければ」と指摘しました。
また、「Equity(公平性)」というキーワードも取り上げられました。Equality(平等)が男女に同じ高さの踏み台を与えるという考え方であるのに対し、Equityは男女や年齢などの違いを理解し、踏み台の高さを調整して同じ高さにするという考え方です。
「まだまだ浸透していない概念ですが、目先の『なぜ女性だけ?』というところにフォーカスするのではなく、その先の将来を見据え、誰もが働きやすい環境を作っていくことが重要だという理解が広まれば、変わっていくと思います」と西山さん。
アーカイブ動画から
「何かを学ぶこと、人生で重要」
女性管理職の立場にいるみなさんが、心地よく、自信を持って毎日を過ごすためにはどんなことが必要なのでしょうか。
西山さんは「リーダーはとても孤独」としつつ、「自分がつらかったりできなかったりしたときには言葉に出すように心掛けています。全部自分でやると思うと大変なので。自分の弱さも出していくと周りが助けてくれます」とご自身の経験を踏まえて語りました。
大沢さんは「期待に応えられなくても仕方がない、と割り切ってはいかが?」とアドバイス。「物事は思った通りに進まないこともありますが、そのときが実はチャンスなのです。思いがけない発見や学びが得られるからです。その経験が人の上に立つときにとても重要になるのです」と強調しました。
勉強会の終盤、会場やZoomでの参加者からの質問に答えました。「更年期の問題を男性に理解してもらうにはどうしたらいいですか」との問いに、西山さんは大塚製薬「女性の健康推進プロジェクト」サイトを紹介。「『女性ホルモンを知る』という項目で専門医の説明を載せているほか、YouTubeの公式ページでもトピックを配信しています」と説明しました。
最後にお二人からまとめの言葉をいただきました。
大沢さんは「Aging Gracefullyというのは、前向きに生きながら、ありのままの自分を受け入れ、楽しく生きることに尽きるのだと思います。それを考えながら、更年期を楽しく乗り越えて、豊かな人間関係を築き、充実した人生を送っていただけたらいいなと思います」。
西山さんは「男性に比べて女性のほうが『私なんて』『私はとても』と自己評価が低い方が多い。でも実際に仕事をするとものすごくできる。ですから自己肯定感を高く持って、失敗してもいいやくらいの気持ちでいろんなことに挑戦して楽しんでほしいです」と語りました。
前編では、第1部の大沢真知子さん基調講演の模様を紹介しています。
>> (前編はこちら)
◆勉強会の動画をアーカイブ配信しています。
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクト 坂井浩和
写真=朝日新聞社 瀧澤文那
画像制作=朝日新聞社 金子裕也
- Aging Gracefully 勉強会「女性管理職、どうすれば? ~悩みを分かち合い、もっと輝くために~」
2月3日(金)18:30~20:00 朝日新聞東京本社&Zoomウェビナー - ◇第1部 基調講演「自分軸を持って生きる」
大沢真知子さん(日本女子大学名誉教授〈労働経済学〉) - ◇第2部 パネルディスカッション
大沢真知子さん
西山和枝さん(大塚製薬株式会社 女性の健康推進プロジェクトリーダー)
司会:坂本真子(朝日新聞社Aging Gracefullyプロジェクトリーダー)
- 西山 和枝(にしやま かずえ)さん
大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部 女性の健康推進プロジェクトリーダー。
入社後、医薬品の営業職(MR)、精神科領域のマネジャーを経て現職。ゆらぎ期の女性をサポートする大豆発酵食品「エクエル」ブランドを担当。製品のPRのほか、女性活躍推進の流れの中で見落とされてきた女性の健康分野において、女性自身はもとより、男性管理職や経営者まで幅広い対象に向けて、ヘルスリテラシー向上のための健康啓発活動を行っている。日本女性医学学会認定の女性ヘルスケア専門薬剤師。
◆大塚製薬「女性の健康推進プロジェクト」サイト https://www.otsuka.co.jp/woman_healthcare_project/
◆大塚製薬「女性の健康推進プロジェクト」YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCWATXldJMUJm0gvtZjh18oA/videos
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