Aging Gracefullyプロジェクト、企業向け勉強会第2弾<後編>
管理職世代≒更年期世代 職場にできることは?
Project report ヘルスケア キャリア ライフスタイル
[ 18.11.05 ]
朝日新聞社と宝島社の女性誌「GLOW」が取り組む「Aging Gracefully」(以下、AG)プロジェクトは、人生100年時代に向けて、40代、50代の女性たちが自分らしく生きられる社会をつくることを目的に活動しています。9月27日には朝日新聞社AGプロジェクトチームが主催する企業向けの勉強会があり、総合人材サービス業や建設業、IT関係など、18社から24人が参加しました。
勉強会の前半は、経済産業省ヘルスケア産業課で「健康経営」に取り組む企業を支援する係長の紺野春菜さんと、大塚製薬ニュートラシューティカルズ事業部・女性の健康推進プロジェクトリーダーの西山和枝さんがそれぞれ講演しました(記事はこちら。前編・中編)。会の後半では、参加者によるグループディスカッションが行われました。
ディスカッションのテーマは、「体の不調、職場でどう伝える?」というもの。女性活躍推進法が施行され、女性の管理職登用には追い風が吹いています。ただ、管理職世代はほぼ、更年期世代とも言えます。心身の不調を抱えながら、職場で重責を担うのは簡単ではありません。
更年期に限らず、月経などの女性特有の健康課題は、親しい人との間でさえ、なかなか話しづらいもの。恥ずかしさや、「多少の不調は我慢するのが美徳」と考えて抱え込んでしまうと、労働生産性が上がらないばかりか、職場の理解も広がらず、働きやすい環境整備も進みません。
そこでディスカッションでは、女性自身が職場に対して自分の健康状態をうまく伝える方法や、同僚や上司の立場から、身近につらそうな女性がいた時の接し方などについて議論が交わされました。
女性が不調を伝えやすくなるには、健康診断の検査項目に女性ホルモン値を入れるなどし、職場に対して客観データを示せるようにするとよいのではといった意見が出ました。また、女性が自分の健康や気持ちの状態を知ってもらう方法として、職場のスケジューラーや自席で使うマグカップなどに、その日の体調を表すサインを示すのはどうかといったアイデアも出ました。「普段は元気な人が、『今日はいまいち』というサインを掲げていれば、同僚や上司が『どうしたの?』と声をかけやすくなるのでは」という指摘もありました。
上司の側からのコミュニケーションの提案としては、「自分の家族の話を持ち出す」というアイデアが出ました。日本企業の管理職の大多数が既婚男性で占められていることから、「『最近、妻が更年期でつらそうなんだけど』『娘の生理痛が重いらしくて』などと、家族内の女性を主語にし、上司自ら話すことで、女性の部下にも話してもらいやすい雰囲気を作れたらいい」と、発表した男性もいました。
また、そもそものコミュニケーションのハードルを下げる工夫についても、様々な意見が出されました。具体的には、「健康について相談できる社外の専門窓口を設けることで、上司には言いにくいことも、率直に打ち明けられるようにする」「普段から、上司と短時間でよいので1対1の打ち合わせを設けるようにしておくと、業務だけでなく、健康や家族のことなどプライベートな話もしやすくなる」「同じ部署に女性の先輩がいない場合、他部署の女性の先輩に相談できる仕組みや制度をつくり、周知する」「産業医に婦人科の専門医を置く」「フレックス勤務やテレワーク、在宅勤務といった柔軟な働き方を、育児や介護といった理由に限らず、更年期の方も使えるようにする」といった意見です。中には、「更年期症状に悩む社員に対し、会社がタクシー券やマッサージ券などを給付し、体をいたわってほしいというメッセージを伝える」という意見もあり、「それいい! ほしい!」「うれしくて泣いちゃう」と会場がざわめく場面もありました。
そもそも、こうした悩みを「人に言いにくい」と感じること自体が、AG世代特有の感覚なのではという意見もありました。「若い世代は『今日はしんどいので休みます』とちゅうちょせずに言える人が多い印象があり、うらやましい」「今のイクメン世代が管理職になれば、仕事一辺倒だったかつての男性管理職よりは、女性の健康課題に対する理解が進むのでは」といった期待の声も出ました。また、男性の更年期に対する理解を広めていくことの重要性を指摘する意見もありました。 さらに、「更年期」という言葉の持つイメージを払拭し、社員の健康管理がセクハラやパワハラへの対策同様、重要な社会課題として認知されるような機運を高めていく重要性も指摘されました。「老眼鏡をリーディンググラスと言うだけで、印象が変わる。ネガティブなイメージをポジティブに変える新しい言葉を考えたい」「ピンクリボンやオレンジリボンのような言葉をつくって、認知度を高めていくとよいのでは」といった意見が出ました。
終了後は皆で記念撮影。その後のネットワーキングタイムでは多くの参加者が話し込む姿が見られました。次回の勉強会は12月に開催予定です。