わたしらしく輝く 色とりどりの社会へ
美しさって? 「美しい」は楽しい!
Special ファッション メイク ビューティー キャリア
[ 22.01.25 ]
昭和に育ち、男女雇用機会均等法の号砲で平成を走り抜けた、40代、50代のAging Gracefully (AG) 世代。
一人ひとりの色とりどりの人生が、社会を少しずつ前へ前へと進めていきました。
AG世代に向けた、朝日新聞の2020年2月の特集記事を紹介します。
装うあなたは、なりたい私。
鏡の前の毎日の悪あがきは、多分いくつになっても終わらない。
たくさんの流行とチャレンジを通り抜け、いま手の中にある美しさは何ですか。
大人のおしゃれ、「今」への説得力
スタイリスト・原由美子さん
20代でスタイリストを始めた頃は、職業自体が知られていなくて、撮影交渉のためには、働く大人の女としての「押し出し」が必要だと考えました。選んだのが紺の上着にベージュやグレーのパンツの組み合わせ。
基本の服を自分らしく着くずすのが私のおしゃれです。欲しいものが少なかった分、似合うものを悩みながら探し、勇気を出して買いました。
女性誌でのスタイリングは海外の流行を取り入れながら、読者が何を選んだらよいかの提案をいつも意識しました。ファッションの流行は、らせん階段のように回ると言います。繰り返し登場するのは1970年代。
だれもが希望を持っていた時代への憧れです。ヒッピー文化が流れ込んできたパリでモードが花開き、体を服の中で自由に動かせるビッグシルエットが登場した。長い袖はまくっていいという着こなしに、自由への思いを込めました。
反対に、1980年代の極端なボディーコンシャスは「もう戻ってこなくても」と思う。ただバブルであれ、若い時にハイブランドに触れるのは一つの経験。失敗も含めて生かしてほしいです。
カジュアル全盛の今は、着るものに振り回されなくなった。でも、電車の中で誰もがスマホの画面を見つめ、他人が何を着ているかも、自分がどう見られているかも気にならない様子。自分の仕事は何だったんだろうと無力感もあります。
人間は裸では生きていけません。自分と鏡の間で完結せず、「場」に添うように着るのがファッションです。
若い時は似合ったのにと、肌や髪の変化に悔しい思いもするけれど、年齢それぞれに着る楽しみがあります。年齢不詳がほめ言葉になるのは残念です。
大人のおしゃれは経験を重ねた「今の自分」の表現。説得力ではないでしょうか。
- はら・ゆみこ
- 1972年にスタイリストを始め、「クロワッサン」「エル・ジャポン」など多くの雑誌で活躍。著書に「原由美子のきもの上手 染と織」ほか。
「好き」のヒント、いつも雑誌に
2020年は「アンアン」(マガジンハウス)創刊から50周年。いまの50歳は雑誌からファッションを教わった世代ともいえる。1969年生まれでライターの中沢明子さんが振り返る。
中学生の時に背伸びして「アンアン」を読み始めました。母はかわいらしい服を着せたがったけれど、山本寛斎のトレーナーをねだって修学旅行へ。「おしゃれスナップ」のページで好きなスタイルを探し、ファッション業界の特集ではキラキラ輝く女性たちに衝撃を受けました。
ロックのライブに行く服は「キューティ」(宝島社)で研究。「自分の好きなことをして好きなものを着る」姿勢に共感しました。「オリーブ」は伝説となり、オリーブ少女の象徴だったボーダーシャツをいまも愛用する人がいます。
30代、食や住まですべてに美的センスが問われるようになりました。それを手の届く世界で示したのが「LEE」でした。美しさも生活感が伴う方が支持されるように。
いまはどの年代向けの雑誌でもファストファッションを取り入れ、表紙のモデルも重なるなど差異が見えにくい。雑貨ひとつからの提案は、生活の細部まで選ばされる状況を作っています。50代の読む雑誌では「大人」と「女子」が混在しています。年齢にあらがわず年を重ねるか、好きな世界を卒業せずにおくか、どちらかなのでしょう。
ナチュラル志向、下着でも
ワコールが1964年からとった累計4万5千人の女性のデータによると、 加齢によるバストの変化は
(1)脇側がそげる
(2)下部がたわむ
(3)外に流れる
の3段階。ただし歩くのが速かったり、食生活に気をつけたりと日常的に自分をコントロールしている人は、変化が緩やかな傾向です。
「寄せて上げる」の「グッドアップブラ」の発売は1992年でした。ボディコンの流行で、ボディースーツやロング丈ガードルも身近でしたが、その後はナチュラル志向へ。着け心地が重視されるようになります。
いまの40~50代はブルー、オレンジなど鮮やかな色を肌につける。「介護の仕事の日にはキャミソールとブラの一体型」という声など、楽でいたい日と、きちんと整える日と下着を使い分けるのも特徴です。
つや重視、パール感もOK
いまの50代は過去を認めつつ、いま人生の最高値でいようという前向きさを持っている。その一方調査では、肌の状態がこれまでと違うと感じる波は30代と50代にあります。
化粧品は技術力だけでは選んでもらえない。「プリオール」はブランドの入り口にいる50代の心が見えていませんでした。
2020年1月から「ちょっと若い」40代の常盤貴子さんを起用。キーワードは生き生き輝く「つや」です。パールはしわを目立たせるといった固定観念も変化しています。
昭和に育ち、男女の雇用機会均等の号砲で平成を走ってきた。そして50歳。過去も未来も見渡せる年頃を迎えたあなたや私をAging Gracefully(AG)世代と名付けました。年を重ねてもっと自由に。