坂本真子の『音楽魂』
荻野目洋子さんが新曲に込めた思い
歌手デビュー38周年、ライブに乱入したのは
Special 音楽 ライフスタイル
[ 22.04.13 ]
最近、音楽を聴いていますか。
振り返れば、あなたにもきっと、歌やメロディーに励まされ、癒やされた思い出があるはず。40代、50代になっても、これからもずっと音楽と一緒に過ごせますように。
そんな願いを込めて、子どもの頃から合唱曲やロックを歌い、仕事でも関わってきたAging Gracefullyプロジェクトリーダーの坂本が、音楽の話をお届けします。
3月の「Aging Gracefullyオンラインフォーラム2022」に出演した歌手の荻野目洋子さん(53)が、4月1日にビルボードライブ大阪、同3日にビルボードライブ横浜でライブを行いました。4月3日は、荻野目さんが歌手デビュー38周年を迎えた記念の日。「港のヨーコ・ヨコハマ・オーサカ!!」と名付けられたライブでは、数々のヒット曲に加えて、普段あまり演奏されない曲や、新曲も披露されました。
幕開けは、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の懐かしいイントロがピアノとギターで繰り返される中、黒いサングラスをかけ、銀色に輝くジャケットとパンツに身を包んだ荻野目さんが登場。「ショートカットの女がいた」「それならヨーコっていう女が」「38年前にヨーコはデビューした」などと音楽に乗せて語り、「アンタ、あの娘(こ)のなんなのさ!」と決めて、「港のヨーコ・ヨコハマ・オーサカ!!」。
歌の途中で 舞台に現れたのは、タレントのLiLiCoさん(51)。ラジオの生放送にゲスト出演した荻野目さんに「乱入していい」と言われて「横浜まで来ちゃった」と、今回の出演に至る経緯などを曲に乗せて語りました。
スペシャルゲストのLiLiCoさん(左)とデュエットする荻野目洋子さん
二人は以前から親交が深く、2019年4月に行われた荻野目さんの35周年記念ライブでは、アンコールにLiLiCoさんが出演。このときは、LiLiCoさんが大好きだという荻野目さんの曲「DEAR~コバルトの彼方へ~」をデュエットしました。
今回はオープニングでの共演に。二人ともサングラスをかけ、 「アンタ、あの娘のなんなのさ!」のタイミングも、「港のヨーコ・ヨコハマ・オーサカ!!」のハモりもぴったり。息の合った歌声を響かせました。
出会いが財産に
そしてLiLiCoさんは舞台を降りて観客席へ。2曲目以降は、荻野目さんと、キーボード&ピアノの海老原真二さん、ギターの飯室博さんの3人で演奏を進めます。
「アルバム曲メドレー」のコーナーでは、「なかなか歌っていなかった曲をピックアップしてきました」と紹介し、アルバムに収録されてシングルになっていない 「ペルシャンローズ」「Beat goes on」など3曲をメドレーで聴かせます。
「私は10代後半で、大人になりきっていない年代だったので」と1980年代を振り返り、「国内もそうですけど、海外でも 素晴らしい人たちと出会えたことが財産かな、と思っています。それが今もこうやって歌えるという証しになって、ライブを続けられる、そんな気がします」と、しみじみと語りました。
続いて、「あまり日の目を浴びていない曲があるなぁ、と気づきまして」と前置きして、シングルのB面3曲のメドレーに。デビュー曲のB面 「流星少女」と、「ダンシング・ヒーロー」のB面 「ぜんまいじかけの水曜日」の2曲をしっとりと聴かせました。
アコースティックギターを弾きながら歌う荻野目洋子さん
アップテンポの 「ジャングル・ダンス」(「スターダスト・ドリーム」のカップリング曲)では、荻野目さんが「声は出さずに、こぶしを振り上げたいと思います」と呼びかけると、観客が一斉にこぶしを掲げました。
自作の曲に込めた思い
今回は荻野目さんにとって約2年ぶりのライブ。「(コロナ禍で)ライブが約2年間、全て中止になってしまったので、心が折れそうになったというか、どうしてこんなに何もできない状況なんだろうとモヤモヤしました」と振り返りました。
「 改めて、自分自身が歌い手としてどういうことを伝えたいのか、いろいろ考えるきっかけにもなりました」と言う荻野目さん。自作の曲を紹介しました。
ここで披露した新曲は、国際労働機関(ILO)の児童労働反対キャンペーンに参加し、荻野目さんが作詞・作曲を手がけた 「宝石~愛のうた~」。学校に通えず、劣悪な環境で働く世界各国の子どもたちの状況を憂え、「 誰でも人間は、生まれたときから心の中に宝石を持っていて、その原石は誰も傷つけることができないんじゃないかな、という思いを込めて書きました」。
2020年にNHK「みんなのうた」で放送された 「虫のつぶやき」は、ウクレレを弾きながら歌い、「 子どもの頃から虫にロマンを感じているんです。リスペクトを込めて、環境を大事にしていきたいです」と語りました。
ウクレレを弾きながら歌う荻野目洋子さん
後半はデビュー曲の 「未来航海-Sailing-」や、大ヒットした 「ダンシング・ヒーロー」 「コーヒー・ルンバ」など懐かしいヒット曲が続き、 「ストレンジャーTonight」でいったん終了。アンコールで 「六本木純情派」など2曲を披露しました。
生き方と重なった歌声
今回のライブは全19曲。1980年代に、アイドルの荻野目さんのヒット曲をリアルタイムで聴いていた世代としては、どの曲も体が動き、一緒に歌いたくなります(新型コロナの感染対策のため、こらえましたが)。
一方、新曲の 「宝石~愛のうた~」は、「愛をつなげていこう」と繰り返すサビのメロディーが印象的で、荻野目さんの優しい歌声と、アコースティックギターやピアノの音色も相まって、とても温かく、愛にあふれた曲に感じました。
3月のAging Gracefullyオンラインフォーラムでは、持続可能な暮らしなどをテーマに語り合いました。その中で 荻野目さんが話した、「日々できることからやっていくのが一番かなと思っています」という言葉に、私はとても共感しました。
無理をせず、自然に、できることからやってみる――。そんな荻野目さんの生き方は、ライブで聴かせる、伸びやかで軽やかな歌声とも重なります。
ステージで歌うことが楽しくてたまらない、という荻野目さんの思いも伝わってきて、音楽はいいな、ライブはいいな、と改めて感じたひとときでした。
ビルボードライブ横浜で歌う荻野目洋子さん
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクトリーダー 坂本真子
写真=野々垣里菜氏
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