わたしらしく輝く
「推し」への愛、私の生きがい
Special マインド ライフスタイル
[ 22.06.08 ]
昭和に育ち、男女の雇用機会均等の号砲で平成を走ってきた。そして50歳。過去も未来も見渡せる年頃を迎えたあなたや私をAging Gracefully(AG)世代と名付けました。年を重ねてもっと自由に。
AG世代をフィーチャーした、朝日新聞の2020年11月の特集記事を紹介します。
「あの人」がいればどんな時も前を向ける――。そんな「推(お)し」はいますか? 憧れ、応援したい気持ちから始まる「推し活(おしかつ)」。コロナでネガティブになりがちな日々、多くの人の心の栄養分になっているようです。韓流スター、職人さん、2次元作品のキャラクター。「推し」がいれば、想像の翼が広がり、新しい挑戦もできそう。あなたもどうですか?
「不時着」、コロナ禍の心のお守り
ジャーナリスト・治部れんげさん
パソコンで再生バーをスライドさせ、お気に入りのシーンを探す。「焼きハマグリ」の場面、ソウルでの誕生会。好きなシーンを繰り返し堪能する至福の時間。
ジャーナリストの治部れんげさん(46)が韓国ドラマ「愛の不時着」に出会ったのは、2020年3月でした。「最初はそんなベタなタイトルのドラマ、私は見ないなーと思ったんです。でも友人の勧めで試してみたら虜(とりこ)に」
人間味あふれる脇役、涙の後は笑いで和ませる緩急あるストーリー、そして魅力的な主人公たちの恋。「セリ(女性主人公)を助けるジョンヒョク(男性主人公)は、トム・クルーズよりかっこいい。アジアがハリウッドを超えた!と友人と大騒ぎ。セリの存在そのものを全肯定してくれる愛。彼は女性にとっての『こんな男の人いいな』をすべて体現している。まぁ、現実には存在しないのでしょうが」
セリはさまざまな逆境にぶつかります。「女性の40、50代って、仕事でもライフステージでもいろんな悔しさを味わう時期。このドラマには、それをどう乗り越えるかの知恵もちりばめられていて背中を押してくれる」
もっとも見ていたのは、コロナ対策で外出自粛となった3~6月。「SNSには不安やデマ、政権批判があふれていたけど、不時着を見ることで、ネガティブな言葉が氾濫(はんらん)するSNSから距離を置くことができた。周囲で見ていた人たちも、わりと前向きに乗り切っていて、落ち着いた生活を送るためのまさに『精神安定剤』になっていたんだと思います」
「不時着」をきっかけに、治部さんはハングル講座を聞き始め、仕事上の知人たちとも感想をシェアするように。「この人こんな風に考えてるんだという発見もあった。いろんな広がりをもたらしてくれました」
「推し」のある生活。コロナ禍でなくても、それはとても貴重。治部さんはそう考えます。「家庭や仕事で嫌なことがあっても、『推し』があれば楽しくなって『まいっか』と切り替えられる。『お守り』みたいな存在、でしょうか」
地元愛、「大使」に夢中
「いばらき大使」として活動する声優・俳優の安達勇人さんを応援しています。昨年、台風被災者のためのチャリティーライブを主催していた安達さん。地元愛がなかった私は「茨城にこんな熱い思いを持つ人がいるんだ」とびっくり。彼のイベントへ通うようになりました。
老若男女幅広いファンを大切にするところや、地に足のついた活動は、まさに彼が座右の銘とする「一期一会」そのもの。明日できることは後回しだった私が、「今を生きる」を大切にしようと考えるようになりました。
だらだらと過ごしていた休日も、今は毎週末が彼のイベントでびっちり。生活にメリハリが出てきたかもしれません。平日は毎朝、彼のラジオ番組の音源を聞いてエネルギーチャージ。仕事がしんどい時も前向きな気持ちで出勤できます。以前は安定重視の節約志向だったのに、今年は彼関連で10万円以上を出費! でも最近なんだか元気な私です。(茨城県 なおこさん 49)
アイドルにまさかの感動
東方神起のユンホです。ダンスは表情から指先まで完璧で、千夜一夜物語を耳元でささやかれるような魅惑の世界観。アイドルに興味がなかった私がこうも感動するのかと衝撃でした。ファン仲間もでき、コロナ前は毎月カラオケボックスでDVD鑑賞会。ソウル旅行へも。出発前の空港から全員が高齢の親に電話で安否確認して出かけました。(東京都 たきこさん 52)
伝統守りつつ温かな職人
須浪隆貴(すなみ・りゅうき)さん、岡山・倉敷のいかご(いぐさで編むかご)工房の若き5代目。伝統を一人で守っています。作品はおおらか、インスタには師匠でもある祖母との日常も時々アップされ、温かい気持ちでいっぱいに。家族愛と地元愛。とにかく応援したくなる。好きな物だけに囲まれていたいので、慎重にモノやコトを選ぶようになりました。(東京都 ゆうこさん 55)
普段はヘタレ、落差が最高
「鬼滅の刃」の我妻善逸(あがつまぜんいつ)君です。泣き虫弱虫女好きのヘタレキャラだが、やるときはやる。そのギャップが最高。コンビニで関連商品を見ると必ず買い、善逸マークのラーメンは台所に常備。最近は品薄でつらい。50歳から大学に戻り博士論文と格闘中。つらい時は彼の決めゼリフ「雷の呼吸、壱ノ型。霹靂一閃(へきれきいっせん)」を心で叫んで乗り越えます。(東京都 あやめさん 54)
幸せオーラの笑顔に魅了
愛を感じる対象はそれほどいなくて……家族に対してもかも。ひかれるのは英国王室のキャサリン妃。遠い存在に親しみを持つのは、ハッピーオーラをまとった笑顔のせいでしょうか。色使いや小物、髪形を含めたファッションが見事。WEB記事のチェックにはお金がかかりませんが、ご愛用のジュエリーをまねしたい欲望はあります。(千葉県 かおりさん 52)
あのライン、紙粘土で再現
今年夏から俳優の林遣都さんに夢中です。ドラマや映画によって見せる表情が全然違うのにドキッ。娘たちを寝かしつけた後、スマホでいろんな角度の彼の画像を探しているとすぐ夜中の2時、3時に。その輝くような肌や顔のラインを再現したくなり、子ども用紙粘土で彼の顔像まで作っちゃいました。私の機嫌が良くて家族もうれしいみたい。(東京都 えりさん 42)
舞台に輝く理想の男性像
宝塚歌劇団花組の柚香光(ゆずかれい)さんです。現実の世界に存在しないような理想的な男性を演じてくれます。高校時代から宝塚一筋35年。近くに就職先を決めたこともありました。観劇する日を楽しみにしながら、それまでの日々を頑張って過ごしてきたのですが、今年はコロナの影響で休演期間があったので、3回しか見に行くことができてません。(兵庫県 めぐみさん 52)
現実離れした声と立ち姿
歌手のジェジュンは、声と立ち姿の魅力があいまって、現実感がないほど。ひと晩中ファンの作った動画を見ていた時期もありますが、いまは新曲発表や、SNSの更新にほっこりしています。今年はライブなど遠征の機会がなかったので、支出は少ないですが、推しに使うお金は幸福な生活のため、欠くことのできない必要経費です。(鹿児島県 えみさん 43)