坂本真子の『音楽魂』
DA PUMPの人生を変え、支えてきたものは
25周年ライブで25人が見せた景色
Special 音楽 ライフスタイル
[ 22.07.06 ]
DA PUMPの6人。左からKENZOさん、YORIさん、U-YEAHさん、ISSAさん、KIMIさん、TOMOさん
最近、音楽を聴いていますか。
振り返れば、あなたにもきっと、歌やメロディーに励まされ、癒やされた思い出があるはず。40代、50代になっても、これからもずっと音楽と一緒に過ごせますように。
そんな願いを込めて、子どもの頃から合唱曲やロックを歌い、仕事でも関わってきたAging Gracefullyプロジェクトリーダーの坂本が、音楽の話をお届けします。
ダンス&ボーカルグループ「DA PUMP」は、ISSAさん、KENZOさん、KIMIさん、TOMOさん、U-YEAHさん、YORIさんの6人。今年6月11日にデビュー25周年を迎えました。その当日に千葉・幕張メッセで行われた記念のライブで、彼らは何を伝えようとしたのでしょうか。「U.S.A.」だけでは語れない、6人が歩んだ道のりを振り返りつつ考えます。
DA PUMPは今年4~5月にホールツアーで全国9都市を回りました。2020年3月に予定していたアリーナツアーがコロナ禍で中止になって以来、約2年ぶりの有観客でのライブツアーでした。そして、日本武道館を含むアリーナツアーの最終日が、6月11日でした。
ライブは、3月に出した約17年ぶりのオリジナルアルバム「DA POP COLORS」から、「DA FUNK」と「P.A.R.T.Y. 〜ユニバース・フェスティバル〜」で華やかに幕を開けました。
この日、6人がまず見せたのは、DA PUMPの「いま」。
「Love Is The Final Liberty」など懐かしい曲を盛り込みつつ、「Fantasista〜ファンタジスタ〜」「C'mon & Knock Me Down」「Soldiers 〜慈しむ者たち〜」といった最新アルバムに収録されたアップテンポ系の曲をたたみかけます。途中、会場中央に設けられた長い花道を通ってセンターステージへ。メンバーのはち切れそうな笑顔に、会場を埋めた観客も一気に盛り上がります。
軽やかにステップを踏みつつ、全く息を乱すことなく歌い続けるISSAさん。KIMIさんとは息の合ったラップの掛け合いを聴かせます。激しいステップや、個々が技を見せるソロパートもあり、6人が発するエネルギーが、1曲ごとに会場の色を変えていくように感じました。
スローバラード系の曲では、ISSAさんの歌唱力がさらに際立ちます。言葉数の多い「Our Milestone」は観客に語りかけるように歌い、「with Pride」と「紡 -TSUMUGI-」は伸びやかでやわらかい高音を響かせました。また、そんなISSAさんの後ろで、YORIさんとU-YEAHさんが美しいコーラスを聴かせます(「紡 -TSUMUGI-」)。ISSAさんの歌があったからDA PUMPは25年続いてきたのだと、納得させる3曲でした。
19人のダンサーと一緒に
今回のライブの最大の見せ場は、中盤の「ダンスコーナー」でしょう。
「Dream on the street」のミュージックビデオ冒頭と同じく、大勢が歩く足の様子が大画面に映し出されると、暗いステージに一列に並ぶ19人のスペシャルダンサーたちが登場。KIMIさんと4人、YORIさんと2人、TOMOさんと2人、U-YEAHさんと2人、KENZOさんと6人、ISSAさんと3人……というグループごとに次々とパフォーマンスを見せていく流れは、真剣勝負のダンスバトルのようで見応えがありました。
そして、イントロのテナーサックスの音が鳴り響き、「Dream on the street」へ。
「Dream on the street」と背中に描かれたジャンパーを着て、一列に並ぶダンサーたち
「Dream on the street」は2021年3月に発売され、DA PUMP初のオリコン1位になったシングルです。ミュージックビデオには日本を代表するストリートダンスの名手18人が出演しました。この日のライブでは総勢19人のダンサーが一堂に会し、キレッキレのダンスを披露。全員に必ず見せ場がある構成で、特に25人が一斉に踊る場面は、それぞれの技量の高さと、かっこよさに圧倒されました。
また、ほかのグループのパフォーマンスを見守るメンバーやダンサーたちはとても楽しそうで、ストリートダンスへの愛が伝わってきたとともに、これが彼らのルーツなのだと実感しました。この曲の歌詞にあるように、オフィスビルのガラスを鏡に見立てて練習していたであろう、若い頃の彼らの姿が目に浮かびました。
ダンサーたちとの共演について、ライブの最後にYORIさんが語りました。
「今日の『Dream on the street』では、僕たちがDA PUMPに入る前から大事にしてきた仲間たちと、この特別な日にステージに立てたことをうれしく思っています。僕にとってはずっとライバルで、ずっとバチバチしていた仲間と一緒にステージに立って、それをみなさんにお見せできたことを本当にうれしく思っています」
YORIさん(中央)
この日だけのサプライズも
ライブ後半は、「We can't stop the music」から「Oh! My Precious!」まで計5曲。これまでに「U.S.A.」の「いいねダンス」、「Heart on Fire」の「つり革ダンス」など、ファンが一緒に踊りやすい、キャッチーな振り付けを考案してきた彼らですが、今回はペンライトを使う振り付けをYouTubeで事前に公開しました。コロナ対策で声を出せない中、みんなで一斉にペンライトを振ることで一体感が増し、会場の熱量も上がりました。
アンコールでは初期のDA PUMPを追体験。1曲目は2000年に大ヒットした「if...」を、ISSAさんがしっとりと切なく歌い上げました。
そして、今春のツアーでもこの日だけのスペシャルメドレーへ。
m.c.A・Tさんがプロデュースした「Joyful」「ごきげんだぜっ! 〜Nothing But Something〜」「Feelin' Good ~It's PARADISE~」など、初期の名曲が立て続けに披露されました。R&Bユニット「BETCHIN'」のJinさん、Tommyさんがコーラスでゲスト参加し、m.c.A・Tさん本人もサプライズで登場。ISSAさんとm.c.A・Tさんがサビを掛け合いで歌う場面もありました。
25年前にデビューした頃のことを、ISSAさんは以前のインタビューで「あれよあれよという間に道筋ができていって、僕らが一番好きだったm.c.A・Tの曲でデビューしたんです」と話していました。そのm.c.A・Tさんと25周年記念ライブで共演し、隣で歌うISSAさんは本当にうれしそうでした。メンバーたちには素敵なプレゼントになったことでしょう。
m.c.A・Tさん(左)とISSAさん
最後に、ISSAさんが25周年への思いを語りました。
「16、17(歳)で東京に出てきて、右も左もわからないまま始めて、まさか25年やるとは思っていなかったですね。一番これが好きなんだろうなと、純粋に今日も感じることができました。全ての皆様に感謝を込めて、ありがとうございました!」
「U.S.A.」で再ブレークするまで
DA PUMPの25年間は、まさに「山あり谷あり」でした。
1997年6月11日にシングル「Feelin' Good ~It's PARADISE~」でデビュー。沖縄アクターズスクール出身の4人組で、ヒップホップとストリートダンスを取り入れたパフォーマンスで脚光を浴びます。5年連続でNHK紅白歌合戦に出場し、2001年のベストアルバム「Da Best of Da Pump」はミリオンセラーになるなど、人気を博しました。
しかし、その後はメンバーの脱退や、ISSAさんが足に大けがを負うなどの不運が重なって活動を一時休止。KENZOさん、KIMIさん、TOMOさん、U-YEAHさん、YORIさんら7人が2008年12月に加入して総勢9人、翌09年末に8人、14年から7人体制になりますが、ヒット曲に恵まれず、郊外のショッピングモールを回って無料ライブを行う日々が続きました。
そんな中、2018年6月に発表した3年8カ月ぶりのシングルが「U.S.A.」でした。発売当初にイオンモールなどでパフォーマンスをする動画がYouTubeに多く上がっていて、それを見ると、狭いステージを隅々までうまく使う様子がわかります。どんな場所でもすぐに対応して動けるのは、ダンスの技術だけでなく、約10年に及ぶ地道な活動の積み重ねがあったからでしょう。
「U.S.A.」の国民的ヒットは、DA PUMPを取り巻く環境を大きく変えました。NHK紅白歌合戦や日本レコード大賞の舞台に立ち、日本武道館やさいたまスーパーアリーナでライブを開催しています。コロナ禍でも定期的に新曲を発表し、2021年5月から6人体制に。アラフォーの今、日々のトレーニングとリハーサルを重ねて自分の体と向き合いながら歩み続け、大きな舞台に挑んでいます。
「U.S.A.」でペンライトを持ち、サビの「いいねダンス」を踊るメンバーたち
「ダンスが好きだからこそ」
2019年11月にメンバー全員にインタビューした際、それぞれにダンスとの出会いを聞きました。
ISSAさんは中学に入ってから、先輩たちが踊るのを見て「かっこいいな」と思ったことからダンスの道をめざしました。
KIMIさんは、中学3年の夏に友達に誘われて見たDA PUMPの日本武道館ライブがきっかけに。TOMOさんがダンスを始めたのも、17歳のときにテレビでDA PUMPを見てからでした。25年の歴史を感じます。
YORIさんはダンスをやるという「直感」を信じ、大学に進学してから本格的に取り組みました。KENZOさんは中学生の頃にTRFのSAMさんが出演するダンス番組をテレビで見て、U-YEAHさんは10代半ばでストリートダンスを見て、踊り始めました。
5人はそれぞれに技を磨き、米国へダンス留学したり、ダンス教室で教えたり、ショーで踊ったりしている中でDA PUMPに誘われ、加入します。しかし、思うように活動できなかった10年の間、KIMIさんはダンスを始めた頃のことを考えたそうです。「例えばランニングマンのステップをやるのに何カ月かかっていたかを思い出すんです。できないときは本当にできないし、できたときはすごく楽しい。だから、自分が思い描いていることはいつか必ずできるだろうと、ただひたすら思い描いて、毎日を過ごしていました」と話していました。
U-YEAHさんは「どんな楽曲で踊って、どんな場所でパフォーマンスできたら自分が一番充実するかと考えたとき、DA PUMPの音楽に乗って踊っているときが一番楽しいと思った」ことが、活動を続ける原動力に。振付家としても活躍するTOMOさんは「好きだから夢中で踊っていただけです」。また、2017年まで8年連続でダンスの世界大会で優勝するなど実力者として知られるKENZOさんは、「そこには人種や国籍、年齢、宗教も関係なく素晴らしい空間がある。ダンスが好きだからこそ、ファッションや音楽も好きになったし、ダンスのライフスタイル全部が好きなので、僕にとってダンスのバトルや大会は生きる目標であり、挑戦しに行く場所であり、新しい自分に出会う場所です」と語っていました。
ダンスと出会って人生が変わったメンバーたち、それぞれの人生をこれまで日々支えてきたものも、ダンスでした。今回の25周年記念ライブには、ストリートダンスに対する、彼らの強い感謝の気持ちが込められていたと思います。そして、これからの人生もまたダンスと共に――。そんな彼らの決意を感じたライブでした。
ライブの最後に、ファンの寄せ書きを掲げるDA PUMPとダンサー、ミュージシャンたち
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクトリーダー 坂本真子
写真=ライジングプロダクション提供
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◆連載『DA PUMPの「夢の叶え方」』(2020年1月~2月、withnews掲載)
https://withnews.jp/articles/series/66/1◆「LIVE DA PUMP 2022 TOUR DA POP COLORS」
2022年6月11日 幕張メッセ セットリスト1. DA FUNK
2. P.A.R.T.Y.〜ユニバース・フェスティバル〜
3. Love Is The Final Liberty
4. C'mon & Knock Me Down
5. Coffee Scotch Mermaid
6. Fantasista ~ファンタジスタ~
〜 CORAZON
7. Soldiers 〜慈しむ者たち〜
8. Our Milestone
9. with Pride
10. 紡 -TSUMUGI-
〈DANCE CORNER〉
11. Dream on the street
12. We can't stop the music
13. U.S.A.
14. Heart on Fire
15. Lean Back 〜俺たちのキーワード〜
16. Oh! My Precious!
〈アンコール〉
1. if...
2. m.c.A・T メドレー
intro 〜Higher and Higher!〜
Joyful
Bomb A Head!
ごきげんだぜっ! 〜Nothing But Something〜
Nice Vibe!
Feelin' Good 〜It's PARADISE〜
3. Super Power
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