国際女性会議WAW! W20開催リポート
多様性が認められ、誰もが持てる力を発揮できる社会へ〈前編〉
Project report ジェンダー グローバル
[ 19.05.17 ]
3月23、24の両日、東京都千代田区のホテルニューオータニで、政府主催の第5回国際女性会議「World Assembly for Women」(通称・WAW! ワウ!)と、主要20カ国・地域(G20)に政策提言を行う、民間有志による女性会議「W20」が共同開催されました。教育や労働、リーダーシップ、地方創生、紛争予防、ジェンダー投資など、2日間にわたり、女性をめぐる様々なテーマでパネルディスカッションやセッションが行われました。
W20は2015年から開催されています。毎年、その年のG20サミットで議長を務める国がW20の議長国を兼ねており、今年は6月に大阪でG20が開かれることから、初めて日本で開催されました。23日は、W20 Japan2019の運営委員会共同代表を務める上智大学の目黒依子名誉教授と、元BTジャパン会長で、元経団連審議員会副議長の吉田晴乃さんが、安倍晋三首相に、G20の首脳宣言に採り入れて欲しい内容をまとめた提言書を渡しました。
提言書は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、女性と男性が協力してジェンダー格差の解消に取り組む必要性をうたったほか、人工知能(AI)を含む新技術が社会の様々な領域に急速に広まっていることをふまえ、「一人の女性も取り残さないように、全ての新技術の包摂的で責任のある活用に特に注意を払う」ことなどを要望しました。
具体的には、次の7項目をG20に対して要請しました。
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① 2014年にオーストラリアで開かれ、W20発足のきっかけとなったG20で、「2025年までに、就労率の男女差を25%縮小する」と掲げた目標の達成度を、2020年のG20で中間報告するよう、各国の労働・雇用担当大臣に求めること
② 賃金、年金など、収入におけるジェンダー格差の解消、良質で安価な子どもと高齢者のためのケア・インフラへの公的投資、家庭内でのケア責任の分かち合い、女性リーダーを増やすなど、労働市場での法的・社会的な構造上のバリアを取り除き、ジェンダー平等を達成するための解決策を提示すること
③ デジタル技術が急速に進展する中、倫理面に配慮した技術のデザインと、女性の平等な参画を推進するための施策を取ること。人工知能(AI)が判断をくだすもととなるデータにバイアスがかかっていると、ジェンダー差別が増幅される恐れがある。全ての年代の女性が、科学、技術、工学、アート、数学(STEAM)の領域に平等に参画できるよう後押しすること。地域格差が出ないよう、都市部だけでなく農村部の女性にも、安価で信頼性のあるネットとモバイルのサービスを提供すること
④ 土地や金融サービスなど、様々な財産や資源の所有と管理における女性の平等な権利を保証すること。女性が経営する企業のビジネスを強化する政策の枠組みや行動計画をつくること。公共事業などにおいて、女性が主導し、担うビジネスが受注する割合を、各国の現状をふまえつつ、最低10%は増やす条件を整えること。投資家が、投資に関する意思決定に、ジェンダー要素を積極的に採り入れたくなるような条件を組み込むこと
⑤ ジェンダーによるステレオタイプ、無意識のバイアスをなくすために、ジェンダー平等に関する学校や職場での教育や生涯教育を推進すること
⑥ ソーシャル・メディアを含む、公的、および私的領域における女性と少女に対するすべての形の暴力を根絶すること。そのための効果的な法的枠組みをつくり、司法アクセスを保証し、法の執行を強化すること。国際労働機関(ILO)が提案している、職場での暴力とハラスメントの根絶に関する条約と勧告の採択を支持し、女性に対する暴力に関連した様々な国際条約の批准を求めること
⑦ 国際機関や国内の連携団体などと協力しながら、ジェンダー平等に関するG20の共同宣言の実施状況を監視する仕組みをつくり、定期的に進捗を報告すること。2030年までに官民セクターのリーダーを男女同数にするという目標に向けて、G20の枠組みの中で、進捗状況を監視すること。各国において、様々な法律、基準、政策が、男性、女性それぞれにどのような影響をもたらしたかを評価するため、各国内でその調査を実施する組織の権限と能力を強化すること
正式な報告書はこちらからご覧いただけます。
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日本のW20事務局メンバーを務めた上智大学の三浦まり教授によると、W20にはアジアや中東、欧米諸国と、文化や宗教、経済状況が異なる様々な国が参加しており、女性の社会的地位も異なります。このため、全ての参加国が納得する形で提言書をまとめるのは並大抵のことではなく、最終的にとりまとめられたのは、23日当日の午前1時ごろだったそうです。W20事務局は今後、これらの提言書の内容を更に具体的な行動計画に落とし込み、6月のG20に向けて日本各地で周知するための催しなどを実施する予定です。
W20には、女子教育の重要性を訴えてノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんが初来日し、基調講演をしました。その模様は、後編をご覧ください。