国際女性会議WAW! W20開催リポート
多様性が認められ、誰もが持てる力を発揮できる社会へ〈後編〉
Project report ジェンダー グローバル
[ 19.05.17 ]
3月23、24の両日、東京都千代田区のホテルニューオータニで、政府主催の第5回国際女性会議「World Assembly for Women」(通称・WAW! ワウ!)と、主要20カ国・地域(G20)に政策提言を行う、民間有志による女性会議「W20」が共同開催されました。教育や労働、リーダーシップ、地方創生、紛争予防、ジェンダー投資など、2日間にわたり、女性をめぐる様々なテーマでパネルディスカッションやセッションが行われました。
W20には、女子教育の重要性を訴えてノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんが初来日し、基調講演をしました。マララさんは、教師を務める父親のジアウディンさんと共に女子教育の大切さを訴えていた際、イスラム武装勢力に襲われ、頭に銃弾を浴びました。何とか一命を取り留め、現在はイギリスのオックスフォード大学に通いながら、女子教育の必要性を訴え続けています。
「過激派は、教育を受ける権利を主張した私を攻撃しましたが、失敗しました。今、私の声は更に大きくなっています。今日は、学校に通えていない世界の1億3千万人の女子を代表してここにいます」とマララさんは語り、テクノロジーの進化で、暮らしや教育、仕事のありようが大きく変わる中、10億人の女子が現代の職場に必要な能力を身につけられない恐れがあることを指摘しました。そして、女子教育推進のために設立した「マララ財団」と世界銀行による調査の結果を紹介。世界の全ての女子が中等教育を受けられれば、30兆ドルの経済効果があるという試算を発表しました。
「私は今週、G20各国のリーダーたちに、世界中の女子が質の高い教育を12年間受け、将来職場で求められるスキルを身につけられるように資金を提供するよう、求めていきます。各国の政治家やビジネスリーダー、政策推進者たち全員に、この戦いに加わって欲しい。私たちが今、女子教育に投資をすれば、想像を超えた未来が実現可能だと確信しています」と、講演をしめくくりました。
W20の分科会では「技術革新と変容する社会における人材育成」「地方活性化と雇用創出、そのためのリーダーシップ」「女性の参画と紛争予防・平和構築・復興」などのテーマごとにパネルディスカッションが展開されました。
筆者は、「多様性を育てるメディアとコンテンツ」という分科会のパネルディスカッションのパネリストの一人として参加。メディアが発信する情報やコンテンツが、女性への固定的な見方や性差別を無意識に助長する側面がある中、メディア業界の中にいかに多様な視点や人材を増やして、ジェンダーに対するリテラシーを高めるのかについて、意見を交わしました。
東映アニメーション執行役員の鷲尾天さんは、2004年に放送が始まったアニメ「プリキュア」の初代プロデューサーでした。「りりしく立ち、自ら問題解決に挑む女性の主人公を描きたかった」と作品に込めた思いを紹介。当時、アニメのヒロインは「女の子らしく」ふるまうように描かれることが多かった中、個性的なプリキュアたちが、互いの違いを強さに変え、敵に立ち向かっていく姿は、多くの視聴者の共感を呼びました。「今のように多様性の尊重が重視される時代になるとは思ってもいなかった」と語り、「監督やスタッフと話をする中で、今はまだ分からなくても、大人になったときに、『こういうことだ』と伝わればいいねと話していた」と振り返りました。
haru.さんは、10代の6年間をドイツで過ごして帰国後、東京芸術大学在学中にインディペンデント雑誌「HIGH(er)magazine」を創刊し、現在も編集長を務めています。広告は載せず、主にクラウドファンディングで制作資金を調達し、誌面に載るモデルの服を一からつくることもあるほど、こだわりのある雑誌です。「政治や性、フェミニズムなど、学校ではちゃんと教わらず、知っておきたかったと思うことを正直に発信する、をコンセプトにしています。同世代の子たちや、さらに年下の子たちにぜひ読んで欲しい」と語りました。一人の女子学生として、ジェンダーについて思うことを問われたharu.さんは、「美大の生徒は女性が多いのに、教授は男性ばかり。作品を見てもらおうとしたら、『顔で損してるね。そういう顔じゃなければ、すぐ作品で評価してもらえるのに』と言われたこともあります。本質じゃなく、見た目で判断するのはおかしい。ジェンダーに関係なく、生きやすい社会にしたい」と語りました。
グアテマラの外務大臣、サンドラ・エリカ・ホベル・ポランコさんも、女性閣僚として、外交政策についての評価よりも、着ている服や髪形について報じられることが少なくないと語り、「マスコミには本質に迫る報道を期待したい」と話しました。
P&G韓国代表のバラカ・ニヤジーさんは、様々なCMキャンペーンを通じて、性別役割分業やジェンダー規範について、世の中に問題提起をしてきたことを紹介。女性が活躍できるようになるには、男性や、息子を育てる母親の意識改革も欠かせないと、CMキャンペーン「Share the load」の動画を流しながら解説しました。
クロアチアの副首相兼外務・欧州問題大臣、マリヤ・ペイチノビッチ=ブリッチさんは、同国では男女ともにスポーツがさかんであるにもかかわらず、テレビで放映されるスポーツニュース全体に占める女性スポーツの放映割合が、男性の86%に対してたった4%だったという、2017年の調査結果を紹介。「見えづらいジェンダー格差にスポットを当てていくことが、社会を変えていく上で重要です」と指摘しました。
筆者は、子育てや介護、教育問題を取材してきた経験や、若者や女性のエンパワーメントプロジェクトに取り組んできた経験から、メディア業界の中で多様な視点を持つ人材が活躍できるようになることが、ジェンダーや性差別へのリテラシーを高め、固定観念を打ち破る情報発信の強化につながると指摘。そのためにも、勤務地や勤務時間に制約のある社員も含め、一人ひとりが力を発揮できるような職場づくり、働き方改革が欠かせないと話しました。