第3回AGカフェは読書会
『82年生まれ、キム・ジヨン』を題材に、女性の生きづらさを考える
Project report ジェンダー グローバル マインド 学び
[ 19.10.15 ]
40代、50代のAging Gracefully世代の学びとネットワーキングを目的に、毎月開催しているAGカフェ。
3回目は7月24日夜、東京・渋谷の朝日新聞社メディアラボ渋谷分室で実施しました。
今回は読書会です。取り上げたのは、 受験や就職、結婚や出産など、人生の岐路で女性が直面する様々な壁を描き、韓国でミリオンセラーとなった小説『82年生まれ、キム・ジヨン』。この本の日本語版編集者、筑摩書房の井口かおりさんを講師に招き、 女性の生きづらさと、それらをどう改善していけるのかについて、参加者どうしで話し合いました。20代から50代までの主婦や会社員の女性ら、12人が参加しました。
この本が韓国で発売されたのは2016年。その後、日本を含む18カ国・地域で翻訳出版されています。日本語版は昨年12月に発売されてから2日目で重版、4日目には3刷が決まるという異例の売れ行きで、現在は14万部。韓国では映画化も決定しています。
本の主人公は、1982年に生まれた女子の名前で最も多かったという「キム・ジヨン」。大学卒業後、広告代理店での仕事に邁進してきたものの、出産を機に退職。子育て中心の日々に閉塞感を感じていたある日、自分の母や友人の人格がまるでのりうつったような状態になります。物語は、ジヨンが精神科のカウンセリングで自身の生い立ちを語り、成長の過程で経験してきた様々な差別と、それに伴う感情がカルテにつづられていく形で展開していきます。
編集者の井口さんは、この本が韓国で出版された当時、女性を取り巻く状況に様々な動きがあったことが、広がりにつながったのではないか、と解説しました。
2016年にはソウルの繁華街で、若い女性が公衆トイレで見ず知らずの男性に殺害される事件が起きました。その後、容疑者が「普段から女性に無視されていた」と動機を語ったため、女性嫌いによる犯行として注目されたといいます。出版後も、男性の国会議員が300冊も買い取って他の議員に送ったり、K-POPアイドルたちがSNSで感想を述べたりするなど、様々な立場、世代の人たちが取り上げたことで、大きなムーブメントになっていったということです。
井口さんは、「SNSで日本での読者の反応を見ると、分かりすぎて、つらくて読み進められない、泣いてしまったという声が多かったのが印象的でした」と紹介しました。
また井口さんは、ジヨンのカルテを最終的にまとめたのは男性の医師かもしれないが、実際に聞き取りをしたのは女性のカウンセラーだったのではないか、という日本語版翻訳者・斎藤真理子さんの見立ても紹介しました。詳しくは筑摩書房の同書のスペシャルサイトをご覧ください。
後半は、参加者一人一人が自身の体験を交えて、この本が描くテーマについての問題意識を共有していきました。初対面であるにもかかわらず、男女差別などをめぐるもやもやした思いが一挙にあふれだし、改めて、この本の持つパワーを感じました。
- 「家でも学校でもずっと男女平等と言われて育ってきたのに、就職活動では女性は自宅通勤者のみ、会社ではお茶くみを率先してやらなくてはならないなど、様々な理不尽さに出合ってきたことが洪水のように思い出された」
- 「運動会の応援団長も、騎馬戦のキャプテンも、男子にしかできない決まりがあった。出席番号も男子が前。なぜなのかと違和感を持っていた出来事がこの本を読んで一気によみがえってきた」
- 「団塊ジュニア世代は今のように、一人一人が個性を尊重されずに育ってきた。性差別による様々な理不尽さを我慢し続けてきたせいで、もはや違和感すらなくなっていたことに、改めて気づかされた」
また、こうした生きづらさを解消していくために、女性たちがもっと思いを発信し、連帯していくことが大事だという指摘もありました。井口さんも最後に 「この本には、世代や立場を超えた、女性どうしの助け合いがたくさん描かれています。このようなシスターフッド(姉妹愛)がもっと、日本にも広がっていけばいいなと思います」と語っていました。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!