子どものいない女性の生き方、まんがで紹介
大人ライフプロデューサー・くどうみやこさん
Special 子育て ライフスタイル マインド ジェンダー キャリア
[ 21.07.05 ]
女性のライフコースが多様化し、子どものいない人生を歩む人も増えています。昨年8月にABCラジオで放送された「Aging Gracefullyラジオ」に出演した、大人ライフプロデューサーのくどうみやこさんも、そんな一人。
42歳で子宮の病気を患い、夫婦で生きていく決断をしたといいます。その後、同じ立場の500人以上に取材を重ね、彼女たちがこれまで、誰にも打ち明けてこなかった思いや事情を紹介する2冊の本を出版。さらにこの春、『まんが 子どものいない私たちの生き方 おひとりさまでも、結婚してても。』(小学館)を上梓しました。
漫画に登場するのは、6人の女性たち。不妊治療を続けたが、子どもを授からなかった人。晩婚で、気づけば「授かりづらい」年齢になっていた人。後輩のワーキングマザーの活躍にモヤモヤする独身の人。子どもが欲しいと積極的には思っていない人。夫の不妊症で授からなかった人。そして、子どものいない60代の「先輩」。それぞれのキャラクターは、くどうさんが重ねてきた取材が元になっている。
不妊治療のために仕事をやめたが授からず、自分の存在意義に悩むミホさん(以下のコマはいずれも、『まんが 子どものいない私たちの生き方 おひとりさまでも、結婚してても。』より)
40歳で結婚したマユミさん。年齢的にまだ子どもが持てる、年下の夫にじんわり罪悪感を抱いている。
漫画にしたことで、「当事者だけでなく、より幅広い人に、子どもがいない人のシチュエーションや心情が伝わりやすくなり、興味を持っていただけるのではと思いました」と、くどうさん。
実際、過去の作品と比べ、子どもがいる人や男性からも、「何げなく言ったひとことが、相手を傷つけていたかも知れない」「身近にいるけれど、話題にしづらいので、当事者の思いを知ることができて良かった」といった感想が寄せられているという。「学ばせてもらいました、という声が多かったのが印象的でした。不妊治療が広がってきたからか、最初に本を出した4年ほど前と比べ、子どもがいない人のことをきちんと知りたいと考える人が、増えているように思います」
後輩ワーキングマザーの活躍と昇進にモヤモヤする、独身のリョウコさん
結婚しているが、子どもは欲しくないと思っているミサキさん。義理の両親の「孫」プレッシャーにややうんざりしている
政府は、来年から不妊治療を公的医療保険の適用とする方針だ。「産みたいと思っている人への支援が拡充されるのは喜ばしいことですが、それでも、100%授かるわけではありません。また、治療をしてまで子どもを持ちたくないと思う人が、『産むことが是』という社会的な風潮の中で、『なぜ治療しないの?』というプレッシャーにさらされる可能性もあります」と、くどうさんは指摘する。
治療をいつまで続けるのかも大きな課題だ。くどうさんは、「40代半ばくらいまでの女性が一番モヤモヤされているように見えます」と話す。長く続けても授からないと、心身の面でも、金銭の面でも負担が大きい。もうやめようと思っても、同年代の人が出産したというニュースを聞くと、心がざわつく。
「治療をあきらめざるを得ない人や、あきらめた人のその後の人生を心理的にどう支えていくかが大事になっていくと思います。さらに長期的な視点では、現在の『標準家族モデル』を見直し、シングル、カップル、子どもの有無にかかわらず、どんな生き方の人も社会の中で『尊重されている』『居場所がある』と感じられるような税制度や社会保障制度にしていくことが必要ではないでしょうか」
不妊治療の結果、夫に原因があると分かったカオリさん
病気を患い、妊娠・出産が叶わなかった60代の女性。同じ経験をした女性たちの集いを主宰している
折しも、コロナ禍で結婚や出産を控える傾向が見られ、少子化が一段と加速するのではないかという予測も出ている。子どもを持たない人は、今後も増えていく可能性が高い。
くどうさんが主宰する、子どものいない女性たちの会「マダネ プロジェクト」は、定期的にオンラインで集いを開いているが、そこにも様々な声が寄せられているという。「夫が在宅勤務するようになったが、ずっと一緒だと話題が尽き、やはり子どもがいたらと思ってしまう」「職場で、子どものいる人は仕事量を調整してもらっているが、そのフォローは子どものいない人に回ってきて複雑な気持ちになる」
くどうさんは、「子どもがいない人の中にも様々な考え方の人がいて、他の人の話を聞くうちに、自分の生き方を前向きにとらえられるようになる人が本当に多いんです。子どもを授からず、何年も落ち込んでいたけれど、誰かの役に立ちたいと思えるようになったとか、時間があるので働き始めた、とか。そういう場をもっと作っていきたいですし、このまんががその一助になればうれしいです」と語る。
- くどうみやこさん
大人ライフプロデューサー/トレンドウォッチャー。東京都生まれ。大人世代のライフスタイルからマーケティングまで、時流やトレンドをとらえた独自の視点で情報を発信。自身の体験から、子どものいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰。著書に『誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方』『誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方』(ともに主婦の友社)など。
ホームページはhttps://www.kudo-miyako.com