AGフレンズ 松本千登世さん
大人美容を、楽しく〈1〉
「きれいになりたい」は何のため?
Special ライフスタイル ビューティー 学び ハウツー
[ 23.07.26 ]
Aging Gracefullyプロジェクトが今年度新たにお迎えする「AGフレンズ」。2人目は、美容エディター・ライターの松本千登世さんです。「大人美容を楽しく」するために、私たちにできることは? AG世代に向けたコラムをお届けします。
美容クリニックの先生への取材で、興味深い話を聞きました。最近、クリニックを訪れる男性が急激に増えていること。中でも、40~50代の、むしろ今まで美容とは縁遠いとされていた世代の人が多いこと。「目の下のくまをなんとかしたい」「深く刻まれたほうれい線をなんとかしたい」と、悩みがかなり具体的なこと……。とうとう、ここまで。男性たちの美意識が、年齢問わず、職業問わず、こんなにも高まっているとは!
男性、しかも大人の男性の美意識が高まっているという「うわさ」は、さまざまなところで耳にしていました。共通している理由は、コロナ禍になって、半ば強制的にオンラインでの会議や打ち合わせが増え、画面に映る「自分を見て、ショックを受けたから」。「俺って、こんなに疲れて見えていたんだ」「俺って、こんなに不機嫌に見えていたんだ」……。つまりは、初めて客観的に「見られる自分」を目の当たりにして、はっとさせられたのだと言って。
それまで、鏡を見るのは、せいぜいひげをそったり、寝癖を直したりするときくらい。「身だしなみ」の域を出なかったのが、この疲れた顔が、この不機嫌な顔が、「もしかしたら、まわりをおじけづかせたり、不快にさせたりして、コミュニケーションを妨げているのではないか?」と思い始めたというのです。
男性たちの「気づき」に考えさせられました。私は、もっときれいになりたい、もっと若く見せたい、「もっと」「もっと」と求めすぎる余り、このシミさえなければ、このシワさえなければと、あらを探す方向に目が向いていなかったか。鏡との距離が近くなりすぎて、ひとつでもあらを消したいと、美容の目的がひとりよがりになっていなかったか。他の誰かや過去の自分と比べて、美容のために美容に気を使わなくてはいけないという負のループを自ら作り出してはいなかったか。本来は、「元気そう」「楽しそう」を作るのが美容なのに。そう思ったのです。
今日の肌を見て「結構、いい感じ」と思えるだけで、今日の肌に触れて、「うん、気持ちいい」と思えるだけで、相手の目をまっすぐ見て堂々と話せるし、思い切り笑える。のびやかで清らかな思考ができるし、いつでもどこでもフットワーク軽く動ける。今日を、人生を楽しみたいと思える……。それは、年齢や性別を超えて、真実だと思います。
そのための美容とは、今日の肌を「結構、いい感じ」「うん、気持ちいい」にする、シンプルなスキンケアなのではないでしょうか? このシミが、このシワが、と肌のあら探しをするのでなく、今、目の前の自分を前向きに上向きにするためのスキンケア。そうとらえ直したいのです。
今日の肌を調子よく、機嫌よく保つスキンケアを続けると、気づくはずです。スキンケアが自信を生み、自信が余裕を生み、余裕が「包容力」や「人間力」を育むってことに。もう一度、自らに言い聞かせたいと思います。大人の魅力とは、まさに、包容力や人間力。シミがないことでもシワがないことでもない……。ここに、本来の美容の目的がある。男性たちがくれた「学び」に違いありません。
- 松本 千登世(まつもと ちとせ)さん
- 美容エディター・ライター。航空会社勤務、広告代理店勤務、出版社勤務を経てフリーランスに。雑誌や単行本などで美容や人物インタビューを中心に活動。著書に『「ファンデーション」より「口紅」を先に塗ると誰でも美人になれる 「いい加減」美容のすすめ』(講談社)、『いつも綺麗、じゃなくていい。50歳からの美人の「空気」のまといかた』(PHP研究所)など。女性誌『美的GRAND』(小学館)で「このコスメが、すごい!」、同『eclat』(集英社)で「大人美が目覚めるとき」を連載中。2023年4月に『顔は言葉でできている!』(講談社)を出版。
次回は10月に公開予定です。
文=松本千登世さん
写真=品田裕美撮影
松本千登世さんの記事バックナンバーです。
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