AGフレンズ 村田貴子さん
『ワクワク人生を楽しむ』お金のはなし〈2〉
預金がリスクに? 投資のポイントは
Special ライフスタイル マネー 学び ハウツー
[ 23.11.22 ]
Aging Gracefullyプロジェクトが今年度新たにお迎えした「AGフレンズ」。ファイナンシャルプランナーの村田貴子さんによるコラム「『ワクワク人生を楽しむ』お金のはなし」2回めは、今からできる投資についてお伝えします。
前回は、資産形成の必要性についてお話しさせていただきました。私たちの寿命がどんどん長くなるのであれば、それに合わせて「資産寿命」も伸ばしていくことが大切です。そして、「資産寿命」を伸ばすためには、私たちが働くだけでなく、「お金にも働いてもらう」、つまり低金利の今、「貯蓄から投資へ」目を向けていく必要があるという内容でした。
今回は、その「投資」の話からスタート。「投資」と聞くと、「何だか怖い」「損したらいやだなぁ~」という方もまだまだいらっしゃると思います。そのために資産を「現預金」として保有している方が多いのですが、それがリスクになるという話もあります。
「目の前の生活でいっぱいいっぱいで、それどころじゃないわ」とか「先の話過ぎて、イメージがつかない」など、いろいろな声が聞こえてきそうです。そもそも、「老後」はいつからのことなのか、というのも、働き方や定年退職制度そのものが大きく変化している今、あいまいな部分ではありますよね。
「現預金」がリスク? と聞くと、驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「インフレ」(物価が上がり続けること)の影響があるためです。ここ1、2年は急激な物価上昇が続いていますよね。食費や電気代など、「こんなに値上がりしたの?」と驚くことも多いのではないかと思います。
ただ、長期的にみても物価は緩やかに上昇しています。インフレになると、同じ金額で買える量が減ります。これは実質的にお金の価値が下がるということです。日本銀行は「物価安定の目標」として消費者物価の前年比上昇率を2%と定め、その実現をめざしていますが、仮に物価が毎年2%ずつ20年上昇した場合、現金のまま置いている100万円の実質的価値は、約67万円まで目減りする計算になります。現預金であれば額面金額自体が減ることはありませんが、このように実質的価値が目減りする可能性があり、何もしないことが、実はお金の価値を下げるリスクにつながってしまうのです。
そこで、「投資」です。
経済の成長を反映する株式や投資信託などに投資すると、インフレ対策にもなります。「投資」に取り組む際には、できるだけリスクを抑えながらお金を増やしていくためのポイントが三つあります。「長期・分散・積み立て」です。
〈1〉「長期」
例えば、投資期間1年で結果を出そうとすると、うまく運用すれば、大きなリターンを出せるかもしれませんが、値下がりした場合、大きな損失につながる確率も高くなります。ただし、保有期間が15年以上になると、ほぼプラスのリターンに収まっていきます。
時間を味方につけて、長く投資することで損する可能性を抑えながら、資産を増やすことができるのです。
「人類最大の発明は複利である」という言葉を残したのは、かの有名なアインシュタインですが、長期投資することで「複利」の効果も高まります。利息の計算方法には「単利」と「複利」があり、「単利」は預入期間中の元本にのみ利息がつき、「複利」は預入期間の途中で、それまでについた利息を元本に加え、その合算額を新たな元本として利息を計算していく方法です。投資もこの複利効果をいかして、資産を増やすスピードを上げることが可能です。
〈2〉「分散」
投資には、「卵は一つのカゴに盛るな」という格言がありますが、これこそが分散の効果を表しています。卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合は全部の卵が割れてしまうかもしれませんが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、一つのカゴを落として卵が割れてだめになったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずに済みます。
これは投資でも同じで、いくら魅力的な投資商品があっても、一つの商品に集中して投資するのではなく、複数の投資商品に分けて投資すればリスクを抑えられます。
〈3〉「積み立て」
一定金額をコツコツ積み立てていくことです。この「積み立て」の話をする際に、必ずといっていいほど出てくるキーワードが「ドル・コスト平均法」です。簡単にいうと、毎月一定金額を積み立てることによって、投資商品が安いときは「量を多く」購入することができ、高いときは「量を少なく」購入することで、結果として「購入単価を抑える」ことができるという仕組みです。
投資をする場合、この「長期・分散・積み立て」のポイントを押さえることで、リスクを抑えながらお金を増やすことにつながりやすくなります。
そして、これを全て兼ね備えているのが「投資信託」です。投資信託では、多くの方からお金を少しずつ集め、そのお金をプロが運用してくれます。国内・海外の債券や株式などに分散しながら運用した利益を、投資した人に分ける仕組みになっています。
投資にはNISA制度(※)がありますが、この制度を使って「投資信託」も購入することができます。
「新NISA」で変わること
来年、2024年から「新NISA」がスタートします。現行のNISAから大きく変わるポイントは次の三つです。
一つ目は「非課税期間が無期限になる」。現行の制度では、一般NISAは5年、つみたてNISAは20年と期間が決まっていましたが、それが撤廃されます。
二つ目は「投資枠が併用可能になる」。現行の制度では、一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選んで投資していましたが、来年からは成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能になります。
三つ目は「非課税で保有できる限度額が1800万円になる」。現行の制度では、一般NISAは600万円、つみたてNISAは800万円まででしたが、新NISAは合わせて1800万円まで投資できるようになります。世界一の長寿国にふさわしい制度になるのでは、と思います。
人生で大切なことは
生活の中に「投資」を組み入れてお金に働いてもらいながら将来に備えるのか、「預貯金」だけでいくのか。これからはますます大きな差になっていくと思います。
50代後半の方から、「今から投資を始めるのは遅いのでは?」と聞かれることがよくありますが、そんなことはありません。資産の一部を「投資」に回し、運用しながら取り崩して使っていくことで、資産寿命を延ばすことにもつながります。家族構成や資産状況、収入、年齢、価値観など、一人一人にあった投資スタイルを見つけていく必要があります。まだ投資を始めていない方は、ぜひこのタイミングで考え、行動に移すことをお勧めします。
ただ、もっと大切なこともあります。
投資は、人生を豊かに過ごすための一つの手段にすぎません。そもそも大切なことは何でしょうか? 何のためにお金が必要なのでしょうか?
私たちが今後どのような生活を送っていきたいのか、どのような希望をかなえたいのか。それが大切ですよね。投資で資産を築いていくことの大切さを先に説明しましたが、その前にすることがあるのです。
まず、これから先の「ライフプラン」を考え、見える化しましょう。そして、家計の収支のバランスを考え、それにあった資産形成をしてください。
次回は、「投資」を考える前に取り組むべき「ライフプラン」についてお話しする予定です。
- 村田 貴子(むらた たかこ)さん
- 証券会社勤務、銀行勤務を経て、現在は「ほけんの窓口グループ株式会社」の教育部担当部長。
多くのお客さまの心配事や悩みを解決するファイナンシャルプランナーとして勤務後、3千人以上の社員教育に携わる。その他、銀行・保険会社向け研修も担当。最近は、高校生向けの金融授業、小学生向けのキッズマネーセミナーも実施。「資産形成」についてのセミナーも力を入れており、ライフプランを踏まえて資産形成を考えることの重要性を伝えている。
次回は2024年2月に公開予定です。
AGフレンズの記事バックナンバーです。
>>AGフレンズ 高尾美穂先生〈1〉 更年期を自分らしく楽しむためにできること
>>AGフレンズ 松本千登世さん 大人美容を、楽しく〈1〉 「きれいになりたい」は何のため?
>>AGフレンズ 村田貴子さん 『ワクワク人生を楽しむ』お金のはなし〈1〉 老後の不安を「見える化」、資産寿命を伸ばそう
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