Aging Gracefullyオンラインフォーラム2021<前編>
管理職世代の女性の健康をどう守る?
美容エディター・ライターの松本千登世さんをゲストに多様な議論
Special 更年期 キャリア ヘルスケア 学び
[ 21.03.29 ]
左から高橋美佐子さん、松本千登世さん、西山和枝さん、井下香苗さん
宝島社の月刊誌『GLOW』と朝日新聞社を中心に2018年に発足した「Aging Gracefullyプロジェクト」。40~50代のミドルエイジ世代の女性たちは、家庭や地域、職場で大事な役割を担いながらも、体調の変化、仕事や家族との向き合い方など、多くの課題に直面しています。
昨年には日本の女性の半数が50歳以上となり、さらに2025年には3人に1人が65歳以上になると予測されています。ミドルエイジのAging Gracefully(以下、AG)世代の今後の人生がより充実したものになるように、プロジェクトは多くのパートナー企業や団体と共に、様々な情報を発信し、イベントを展開しています。
3月7日には、「AG世代の女性の健康と美を考える」と題したオンラインフォーラムを開催。400人が視聴しました。
| オープニング|
Aging Gracefullyプロジェクトがめざすもの
はじめに朝日新聞社AGプロジェクトリーダーの前田育穂さんが、3月8日は女性の人権やジェンダー平等について考える国連の「国際女性デー」であることを紹介。日本では3月1日から8日までを厚生労働省などが「女性の健康週間」と定めていることから、今回のフォーラムのテーマを「AG世代の健康と美」にしたことを説明しました。男女格差や、将来への不安など、AG世代の女性を取り巻く社会課題をふまえ、「年齢を重ねることを楽しめる世の中にしていきたい」というプロジェクトの目的についても話しました。
| セッション1|
あなたの職場は大丈夫? 女性活躍推進時代の健康リテラシーとは
最初のセッションは、ゲストに美容エディター・ライターの松本千登世さん、大塚製薬で「女性の健康推進プロジェクトリーダー」を務める西山和枝さん、『GLOW』編集長の井下香苗さんが、女性活躍推進時代における健康リテラシーの大切さについて議論しました。司会は朝日新聞社文化くらし報道部記者の高橋美佐子さんが務めました。
左から高橋さん、松本さん、井下さん
まず高橋記者が、「女性活躍推進」がうたわれるなか、管理職世代の女性の健康課題について、職場で理解を深めていくことが課題となっている現状を紹介。航空会社のキャビンアテンダントや広告会社での勤務経験がある松本さんは、「30年近く、女性の多い職場で過ごしてきましたが、当時は男性と同じように働くことが世の中のムードとしてもあったためか、女性特有の健康や身体の悩みを口に出せない雰囲気がありました」と語りました。いまは世の中も変わり、体調や更年期について職場で話せるようになってきたといいます。
GLOW編集部は、AG世代の女性編集者が多い職場だそうです。そこで管理職を務める井下さんは、「各自がお互いの健康状態などについて気を配りながら働いています。リモート勤務が増えていますが、何げない雑談の中で体調の話を聞いたりして、困ったことがあればいつでも相談しやすい雰囲気作りを心がけています」と紹介しました。
西山さんは、働く女性の健康課題をテーマに、数多くの企業で講演されています。そんな中で、「男性はもちろんのこと、女性自身も、自分の体に関する知識が乏しい」と感じるそうです。欧州とアジアの国々を対象に実施した調査によると、「諸外国に比べ、日本人は健康リテラシーがきわめて低いという現実があります。実際、我々が実施した調査でも、35~39歳の女性で月経の仕組みを説明できる人は40%以下、女性ホルモンに関する知識がある人は20%以下でした」と指摘しました。
大塚製薬 西山和枝さん
健康リテラシーとは、健康に関する情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識や意欲、能力を意味します。「知って、気づいて、相談して、対処する。このサイクルをうまく回すことが非常に重要です。健康リテラシーが高い人は、更年期症状があっても仕事のパフォーマンスが落ちにくいというデータも出ています」と西山さん。
とくにAG世代が知っておきたいのは、更年期の知識です。症状は肩こりや疲れやすさ、頭痛など多岐にわたり、それが更年期によるものだと気付かない人も多いのだとか。
大塚製薬提供
管理職になる時期は、ちょうど更年期と重なります。民間団体が2014年に実施した調査では、更年期障害で「昇進を辞退したことがある」、あるいは「辞退しようと考えたことがある」という女性が、なんと6割を超えていたそうです。
大塚製薬提供
こうした状況を聞いた司会の高橋さんは「せっかく経験を積んできたのに、管理職に就くタイミングで体調不良になってしまうのは大変もったいないですね」とコメントしました。
一方、AG世代の女性には、フリーランスや非正規で働く人も少なくありません。その場合、定期的に健康診断を受ける機会が少ないという課題があります。高橋さんは、正社員とそれ以外の雇用形態で働く人の間で、がん検診の受診率に大きな開きがあるという東京都の調査結果を紹介。実際、フリーランスとして活動する松本さんは「元気だから、忙しいから、怖いからなど、様々な理由をつけて受診できていないフリーランスの方は、私も含めて少なくない」と認めました。ただ、職業柄、美容や健康への感度が高い仕事仲間が多く、「お互いの健康を気遣い、誘い合って健診を受けに行くようにしていきたいですね」と語りました。
セッション1の動画は下記からご視聴いただけます。
(後編へ続く)
文=草刈康代 写真=藤田明穂