大切なのは「自分がどうしたいか」
気持ちのいいペースを心がけていれば
日々は彩りに満ちてくる
[ 23.07.24 ]
小劇場の舞台から役者としてのキャリアをスタートし、昨年、芸能生活25周年を迎えた吉田羊さん。この夏は初のフォトエッセー集「ヒツジヒツジ」を出版するなど、表現の幅をさらに広げています。年を重ねてなお輝き続ける彼女。その秘訣(ひけつ)は日々の「心がけ」にあるようです。
年を重ねるほどに楽しめる
大人のたしなみを暮らしに
昨年から制作を始め、7月7日に発売された初のフォトエッセー集「ヒツジヒツジ」。俳優・吉田羊を解剖するかのように、吉田さんの「おしゃれ=着物」、「日々を楽しむ=遊び心」、「心を整える=暮らし」について、写真とエッセーでつづられています。見どころはすべてのコーディネートを吉田さん本人が担当したということ。約9カ月にわたり、日本の四季の中、さまざまな日常の場面で撮影された着物姿は見応えがあります。
「着物を着るようになったのは、20代の頃。着物に親しむ友人が、『着物はもともと日本人にとって普段着』と改めて教えてくれたことがきっかけでした。いわゆる専用の道具はなくても、家にあるもので代用できることも知り、あ、着物って意外と身近で楽しいものかもしれない、と思えたんです。特にアンティーク着物の自由度の高さがおもしろくて。さまざまな色柄があるし、洋物の小物を合わせるのも楽しい。毎日の洋服選びの延長線上に着物があってもいいんじゃないかと思えるようになりました」
そして、着物は年齢を重ねるほどに楽しくなる大人のたしなみと、吉田さんは語ります。
「四季のことや風土が育んだ素材のこと。そこからたどる歴史のこと。年を重ねて知識を積み重ね、自分軸を持つほどに自分のスタイルでコーディネートできるおもしろさがあります。また、その日会う人、行く場所に合わせて、礼を尽くすことも着物から学んだように思います。着付けだけでなく、決まりごともあり、洋服と比べると準備に時間がかかるのは確か。だからこそ着物は、相手を大切に思う気持ちを伝えるツールにもなるんですね。この本を見ながらそんな大人のたしなみを再発見していただけたらうれしいですね」
「無理なく」「続ける」
心と体の習慣が、幸せな未来を作る
20代の頃から着物に親しみ、その積み重ねが日本文化への造詣(ぞうけい)を深めることとなったように、年を重ねることで得るものがあると吉田さん。更年期特有の体の変化による寂しさはあるものの、とらえ方を変えることで、毎日は大人の彩りに満ちてくるようです。
「私自身、年を重ねてから、俳優として認知していただいたこともありますし、その実体験として年を経たからこその良さがあると思っています。身体機能の低下のほうをつい考えがちですが、経験値が増えていることに目を向ければいい面が見えてきます。若い頃に比べ体がきかない分、無駄な動きをしなくなるし(笑)」
そんなふうに年齢とともに起こる変化を第2章のスタートととらえ、この先も体と心をさびさせないためにも、大切にしているのは「続ける力」をより高めること。2011年からは靴下をはいて足を温める「冷えとり」を、19年からは食生活の見直しとランニングを始め、今も続けています。
「体温を上げて代謝や免疫を上げること、体力をつけることはもちろんですが、『途中でやめない訓練』と考えていて。だから、優先すべきは『継続』。疲れを感じたら休む、無理はしない。そうして冷えとりを続けて、体温を36.5度にキープできるようになり、特に夏は疲れにくくなりました。ランニングを続けることで、頭が空っぽになって、マイナス思考もなくなったんです。続けると結果がついてきて、自信につながり、それが心の安定にもなるんです」
とはいえ、「続ける秘訣はストイックさなのでは?」と問うと、意外にも「自分に甘いから」と吉田さんは分析します。40代、50代はつい頑張りすぎて「……ねばならない」という思考になりがちですが、「もっと自分を褒めて、伸ばして」とアドバイスしてくれました。
「私は基本的に自分に甘いんです(笑)。例えば、『毎日絶対この時間に走る! 何キロ走る』と決めることはしていなくて。『続ける』ことを目標にしているので、気持ちが乗らなければ走らなくてよしとしています。『……ねばならない』ではなくて、自分がどうしたいかを大切に。自分が楽しいと思える、続けたいと思えるペースでいいと思います。ダメね私、と思ったら、笑ってそんな自分を受け入れる。頑張りたいときに頑張って、できた自分を褒めて伸ばす。自分が気持ちのいいペースで、心と体のための習慣を続けていくことで、結果は必ずついてくると思います」
ライター=竹田理紀 撮影=YUJI TAKEUCHI(BALLPARK)
- 吉田 羊 Yoh Yoshida
- 福岡県久留米市出身。小劇場を中心に活動後、2007年以降はテレビ、映画などに活躍の幅を広げる。映画「ビリギャル」で第39回日本アカデミー賞の助演女優賞、舞台「ジュリアス・シーザー」で第56回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。今月7日、フォトエッセー本「ヒツジヒツジ」(宝島社)を発売。
- 記事のご感想や、Aging Gracefully プロジェクトへのお問い合わせなどは、下記アドレス宛てにメールでお寄せください。
Aging Gracefullyプロジェクト事務局:agproject@asahi.com