AGサポーターコラム
いまどきのママライフ満喫、からの絶不調
更年期の旅を歩んで〈 4 〉
Special ライフスタイル ジェンダー 更年期
[ 23.01.25 ]
40代と50代、Aging Gracefully(=AG)世代の女性に、コラムを書いたり、プロジェクトの活動を手伝ったりしてもらう「AGサポーター」。朝日新聞社員のAGサポーターたちからは、日々感じていることや取材を通して思うこと、AG世代にオススメしたい話題などをお届けします。
2人目の出産後は、体力的に相当きつかったはずなのに、今は楽しかった思い出しかありません。若作り願望にかられながら、子連れであちこち出かけたり、時にはママ会と称してパーティーをしたり、レストランの料理写真をSNSで盛り気味にアップしたりと、いまどきのママライフを満喫しました。
SNSの威力は本当にすごかった。12年前、ガラケーのメールすらおぼつかない中で1人目を育てた人間にとって、ママ友ワールドの楽しさは雲泥の違い。「子育てはこれで人生最後」と思うと、ネットワーク作りにもがぜん気合いが入りました。妊娠判明時に医師に言われた一言、「人生変わっちゃうかもね」は、大げさだと思っていたけれど、スマホのおかげで交友関係とライフスタイルは一変しました。
出産後に授乳をしていると、しばらくは生理が来ません。生理が止まる期間は人によりますが、私の場合は約1年。ママ友たちと仲良くなると、「いつごろ生理戻った?」と、こっそり打ち明け合うこともありました。“卒乳”を迎えると、晴れてお酒の全面解禁。仲良しのママ友たちが、そのまま夜の飲み仲間になってくれました。出産前からずっとがまんしていた生ビールは、まさに禁断の味。久しぶりすぎてすぐに酔う下戸と化しましたが、年季が明けたママたちと、時には子どもを家族に預けて飲み会を企画、乾杯シーンをスマホで撮ってはSNSにアップしていました。
飲み会では本音トークが炸裂します。周りで「2人目どうする?」「うちは、今すぐはちょっと無理だわ」「でもきょうだいつくるなら、あまり年を離さない方がいいよね」などと言っているそばで、「自分にはもう次はない」ときっぱり自覚していました。生理が再開しても、数年後に来るのはきっと更年期。でも、その頃の私は、「もしかして高齢出産したから、その分、更年期も後ろにズレてくれるのでは……?」などと、とんでもなく非科学的な勘違いにとらわれていました。
あわよくば、遅れて来てよ、更年期!(心の俳句)。
いつも疲れて不機嫌に
女性の更年期は、誰にでも到来します。日本人女性の閉経年齢は50歳前後とされていますが、人により時期はさまざま。いわゆる「更年期症状」も人により程度に差があり、全く症状が出ない人から日常生活に支障をきたす人までいるそうです。更年期の到来を自覚するきっかけも、人によってさまざまでしょうが、はっきり実感するのは生理の変化からでしょうか。これも、現れ方が人によって違うことは知っていました。
この程度の知識はありました。でも、40代の自分には、ずっとどこか他人事でした。
職場で年上の女性たちから聞いていた話では、「定期的に来ていた生理が、だんだん期間が延びたり縮んだり。だいぶ間が空いたなと思っているうちに、気づいたら終わっていた」という人。「不定期で来るし、来るとダラダラ続く。量も多くてナプキンがもたない」と婦人科に駆け込んだ人。「50歳の誕生日を迎えたとたんピタッと来なくなった。顔がほてって汗びっしょり、暑くて暑くてたまらない。これってホットフラッシュ?」と、私に確認してきた先輩もいました。
私の場合、最初のはっきりした自覚症状は、ホットフラッシュではなく、関節痛でした。50歳になった頃、ある朝起きると、なんだか手足のあちこちにしびれるような鈍い痛みがあり、腕が固まって伸ばせない。発熱前の関節痛に似ていたので、最初は「冷えか、風邪の前触れ?」ぐらいに思っていました。ところが、毎朝のように関節が痛い。
そのうちに、PMSの期間でもないのに、頭痛、倦怠感、抑うつ感、眠気、イライラに悩まされるようになりました。もう、常にかったるくて常に不機嫌。ぶっちゃけ不機嫌がデフォルト。疲れやすいから子どもに笑顔になれないし、思うように遊んでやれない。2人の娘たちや夫の些細な言動が気になり、すぐにイラッとしてキレてしまう。「最近ちょっとおかしいぞ?」と夫に指摘されて、さらにむかついてキレるという無限ループ。
やがて、月経周期が縮まり、1カ月に2回来てしまうことも。前触れもなく来てしまうので、あわててコンビニでナプキンを買い求めたことも。「PMS→生理→凪→PMS→生理」のサイクルがなくなり、ずーっとPMSに襲われているようで、たまらなくしんどい。気づくと「あー疲れた、あー疲れた」と口癖のように言っていました。SNSでカレーの写真をアップする時は、毎回「おつカレー!」とつぶやいていました。
エストロゲンに左右され
「ああ、私にもついに来るものが来たな」と思いました。行きつけの婦人科クリニックで検査すると、女性ホルモンの一つ、エストロゲンの値が下がっていることが判明。医師と相談の上、まだ生理があるうちからHRT(ホルモン補充療法)を試すことにしました。エストロゲン補充のための小さな錠剤を1日2回服用。1週間で劇的に効き、関節痛は治まり、体が軽くなりました。おぉ、なんだこれは? ホルモンの力おそるべし……。
「先生、この薬てきめんに効きますね~。こんなちょびっとの成分で、人生が左右されるなんて」
「ふふふ、そうよ、手放せなくなるでしょう? お肌すべすべになる人もいるのよ」
この頃は、「何だ、ホルモン剤があれば更年期なんて楽勝だぜ!」と、正直なめきっていました。
ところが、それはまだ谷に下りる途中でした。更年期の本格的な到来は2020年、あいつと共にやってきました。そう、あいつです。世界中の人類を苦しめたコロナ。
新型コロナのパンデミックをきっかけに、思いがけないストレスが次々と重なり、谷の奥底に沈むように体調不良に陥ってしまいました。
文=朝日新聞社 山口真矢子
(写真はイメージです)
- 山口 真矢子
- 朝日新聞社で雑誌編集、新聞編集、学校向け教育事業などを担当。現在は新聞の広告編成を担当。2児の母。
「更年期のストレス発散に、ラテン打楽器のコンガを始めました」
山口真矢子さんの「AGサポーターコラム」バックナンバーです。
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